第3話 家老、あきらめちゃうかも
「無理でおじゃるうううううう!」
天高く吠える一人のマロがいた。
名を、武田摩守麿~タケダマシュマロ~。
家老の跡継ぎとされた少年である。老年になってからの一人息子であるため、家老は甘やかした。結果がマロ化である。
「麿さま、どうかお気を確かに。お家断絶の危機ですぞ。」
「きいいいいいいいい!」
武田家はマロのみでは危険とみなし、執事である、上杉下過~ウエスギシタスギ~をおともにつけた。
「したすぎいい!おぬし一人でいって勘十郎めをぶった斬ってくるでおじゃる!」
「麿さま、それでは敵討ちになりませぬ。麿さまじきじきになさいませんと。」
「こんなことなら、もっとパフェをたくさん食べておけばよかったでおじゃる。勘十郎め、、、許さぬでおじゃる。」
二人の影からぬるりと家老が飛び出す。どうやら二人には見えないらしい。ひとしきり二人の周りを回って一言
「無理じゃな」
武田家滅亡を予感した家老であった。
マロは戦どころか刀も握ったことがない。しかし趣味で始めた蹴鞠に飽きてからセパタクローに転向し、全国大会の上位に毎年入る実力者ではある。
彼のぽよんぽよんの身体からは想像もつかないキックは大会参加者から武田の風林火山として恐れられている。だがこの物語とは何の関係もない。
「お、茶屋でごじゃる。じい、寄っていくでおじゃる。」
「かしこまりました。」
敵討ちは遅々として進まない。路銀もどんどん無くなっていく。
家老の胃はキリキリと痛んだ。果たして敵討ちが成功したあとも武田家は無事で済むのだろうか。誰かなんとかしてくれ。
ちなみに、茶の道もマロにとってはお手の物。裏千家家元も唸らせるほどの堂々とした所作なのである。だがやはりこの物語とは何の関係もない。
マロは実は家老が思うよりずっと実力のある男なのである。ただ、時代にあわぬマロ化と剣術の未経験さから、この物語で彼が光ることは無い予定である。
ない。きっとない。でないと主役を喰ってしまう。という伏線をここで張っておく。
忘れていてもきっと誰も気にしない。
「おじゃ、ここのお団子、美味しいでおじゃる。食べ録で評価しておくでおじゃる。☆5でおじゃるな。ぽちぽち」
「麿さま、あまり余分なネットを使いますると、すぐ電池がきれまするぞ。」
「よいでおじゃ。今日の宿でまた充電すればいいのでおじゃ。」
ちなみにマロは食べ録でも有名な…これ以上は言う必要あるまい。
「はぁ~、儂の育て方が間違ったかな~。こんなはずじゃなかったんだけどなあ。スマホばっかりいじる子になってもうた。」
親の心子知らず。されど子の能力を親知らずである。
「おじゃ、次の目標は江戸でおじゃる。美人女将と美人三姉妹が有名なほてるがあるようでおじゃるから、そこに行って評価するでおじゃる。」
「かしこまりました。よろしいかと思います。」
「おっと!期せずして勘十郎のいる旅籠に行くことになったぞ!よいぞ息子!さすが我が息子じゃ。」
果たして勘十郎の命はどうなってしまうのか!
ラブコメを差しはさむ余地はあるのか!
次の出番は誰か!
つづく!
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