第28話 危険なゲーム(1)童顔の悲劇?

 涼真はムッツリと口をへの字にしていた。

「社会人なわけないでしょう?いいから、どこの学校か言いなさい。高校に入ったからって、夜遊びはだめだよ」

 警察官が諭して来る。

 ジーンズとTシャツでブラッとコンビニへ出かけたら、パトロール中の生活安全課少年係の刑事に未成年者に間違われて、交番へ連れて行かれたのだ。何度説明しようが、信じてくれない。

 生憎、両親は旅行中でおらず、迎えに来てくれる「保護者」とやらがいない。

 仕方なく会社の誰かの名を出そうとしたが、迷った。夜遅くに女性に頼んで来てもらうのは危ない。なので、悠花はだめだ。雅美は男だが、見た目は誰よりも美人な女性なので、すっかり涼真の頭の中では女性となっているため、これもだめだ。上司に手間をかけるのは申し訳ないので、室長もだめだ。残るは湊だが、湊は警察と仲がいいとはいえないので、どうだろう?

 そう考えて、迷いまくった結果湊にしたが、既に、かなりの時間が経っていた。

(免許証はいつも持っておかないとなあ。財布を持って出れば良かった。スマホ決済なんて、もう2度とするもんか)

 心の中でぶつぶつ言いながら、刑事のお説教を仕方なく聞いていると、ようやく湊が来た。

「あ、湊」

 交番に入って来た湊に気付いて涼真が声を上げると、刑事が目を向ける。

「何やってんだ、涼真」

「コンビニに行こうとしたんだよ。スマホで払おうと思って、免許証も持ってなかったから」

 刑事が湊の免許証を確認し、涼真が湊に頼んで持って来てもらった入社式の写真を見る。そして、忙しく写真と涼真とを見比べた。

「え、マジか!?」

 交番の警察官も集まって、全員で見比べ、驚愕の声を上げた。

「はい。彼は同僚の保脇涼真。成人ですよ」

「申し訳ありませんでした!!」

 警察官らは、一斉に頭を下げた。


 涼真は童顔だ。スーツを着ていても、高校の制服かと思われる時がある。ましてやジーンズにTシャツなんて着ていれば、中学生としか思われない。

 慣れていても、悲しかった。

「悪いな、突然」

 書類に記入し、交番を出た涼真と湊は、並んで歩いていた。

「いや、別に」

 そう言う湊の唇の端が、震えている。

「それで、今日の事は、ちょっと内緒にしてくれないかな」

「わかった。

 でも、いいんじゃないか。中年にしか見えない高校生とかよりも。それに、若い子に警戒されないし」

「慰め方が微妙だな。でも、ありがとう。

 ここでいいよ」

「だめだろ、家まで送る。家に着く前にまた補導されたら――クッ」

「ありがとうな!くそ!」

 涼真はヤケクソになりながら礼を言った。

「いや、すまん。あれだ。きっとそれが役に立つ事もある」

「本当か?」

「ああ」

「本心から言ってるのか、湊?」

「……もちろんだ」

「おい、目を見ろ」

「星がきれいだぞ、涼真」

 しかし彼らはまだ知らなかった。翌日入った仕事で、このやり取りの通りになるとは。





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