第15話 世界に関する基本的な知識

 メタリカーナ一家に与したことにより、この世界に関する基本的な知識を得た。


 最初に驚いたのが、魔物と人間の勢力比だ。領土比にして、魔物:人間= 9:1 くらいだと言う。あくまで、この世界のすべてではなく、ジョヴァンナが知見する範囲でだが。

 それでも、地図を見せてもらった感じ、ユーラシア大陸の3分の1くらいの広さはありそうな地域だった。

 もしかすれば、世界の反対側には、人間勢力の広大な領土があるかもしれない。ジョヴァンナは、その可能性は低いだろうと言っていたが。


 果たして、この人間領に地球人が大挙していたら、食糧不足で殺し合いが起きるのではないだろうか。

 この現象が誰にどの様に起きているのかやはり気になる。


 地図上では、バングヘルムから見て、遥か北西の島の一部と南西の沿岸の一部がほんのわずかの人間の領域になっている。バングヘルムは内海の北にあるので、内海を越えた大陸のさらに向こう側の沿岸なのだが。

 因みに、俺が最初にいたのは、内海の出島のような感じの妙な島だった。


 バングヘルムは、主にゴブリンとトロルで構成された町だが、他にも、悪魔、巨人、竜族、神族、等々までが、其々それぞれ、或いは雑多な種族で構成する都市を打ち立てている。または、部族による集落を作っている者達もある。


 文明レベルは、蒸気機関や発電機はないが、魔法が存在する以上、当然に高く、例えば、パルプ紙相当の物はある。そもそも、神が支配する都市があるというのだ…。


 こちらで、蒸気機関は再現できたが、発電機は電磁誘導が生じず再現できなかった。

 また、硝石、硫黄、木炭に該当しそうなもので黒色火薬を再現することも、化学反応により有毒ガスを作ることも失敗した。それが物理法則によるものかは不明だ。



 そして、まだ驚くべきことはあった。


 この大陸の下には、巨大な地下回廊ダンジョンが張り巡らされている。


 それは、迷宮ではなく、巨大都市同士を繋ぐ ”道” だそうだ。

 幅も高さも10m以上はある地下道が大陸全土の下を走っていて、今なお使われている。ただ、主道以外に支道も多く、動物なみの知性しかない魔物がよく出没したり、あるいは悪意のある魔物が棲家にしている。

 ときに、異次元と繋がる扉がある。


 そして、そこにはまた、街がある。砦がある。墓があるという。


 ただ、地上で過酷な人跡未踏の魔境を進もうとするよりも、早く、運が良ければ安全に、目的地に到達できるかもしれない。


 若しくは、どうしてもそこを通らねば往けない場所もあるという。

 

 何しろ、地図の外の地域まで続いて伸びているというのだから。

 この世界を冒険するならば、いずれ訪れることもあるだろう。



 因みに、この世界の名は『アンクトン』というそうだ。

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