第2話 兎未、変身する
小石を投げようとした兎未を横切る、白いもふもふ。
一瞬、兎未は見間違えたのかと思った。
だけど・・・
(しゅとーれんだ!間違いない。見間違えるわけがない・・・だけど、どうして!?家にいるはずなのに!)
兎未がパニックになっている間に、白いもふもふこと、しゅとーれんは真っ直ぐにあの化け物に向かう。
「っ!?ま、待って!!しゅとーれんっ危ないっ!!」
しゅとーれんの存在に気がついた狼らしき化け物は、ぐわっと鋭い牙の生えた口を開けて、しゅとーれんを襲いかかろうとした。
兎未は手を伸ばすが、とてもじゃないけど届かなくて・・・
(しゅとーれんがっ!しゅとーれんが食べられちゃうっ!!)
兎未がそう思った瞬間だ。
しゅとーれんが、ぴょんと飛んだ。
そして・・・
ゲシィッ!!
狼らしき化け物の額に、しゅとーれんのキックが決まった。
ギャグみたいに、化け物の額から赤黒い血が飛び出る。
呆気に取られた兎未だったが、はっと気がつく。
(そ、それより、しゅとーれんを!あ、あの女の子も何とかしないと!!)
見てみれば、地面に座り込んでいた女の子も唖然としていた。
兎未は走り、その女の子に近づくと何とか引き上げて立ち上がらせる。
「今の内に早く逃げて!」
兎未はそう言って、女の子の背を押して逃げさせる。
「しゅ、しゅとーれんっ!私たちも逃げるよっ」
兎未はそう言ってしゅとーれんを捕まえようとしたその時だ。
『うみちゃん、チカラを貸して』
突如、兎未の頭の中に響く声。
「え?な、何この声は?」
『ワタシだよ。しゅとーれんだよ、うみちゃん。お願い、あの化け物を倒すにはうみちゃんのチカラが借りたいの』
しゅとーれんが兎未の側に来て、足首にスリスリする。
「い、いや。待って待って!あの化け物の事も気になるけど、何でしゅとーれん喋れるの!?」
『それはね、ワタシが特別なウサギさんだからだよ。ワタシの役目は、人間たちがニコニコ幸せに毎日が過ごせる様にすることなの。だから、人間の不安なココロから産まれたあの化け物を倒さなきゃいけないの。普通は、あの化け物は夜にしか出てこないんだけど、今日は夜じゃないのに現れたの』
しゅとーれんの説明に、唸る兎未。
「わかるような、わからないような?あの化け物の事はちょっとわかったけど・・・でも、何で私のチカラが必要なの?」
『それはね、ワタシのチカラが本領発揮するのは真夜中だけなの。だから、夕方の今はチカラが本領発揮できないの。でも、それでは、あの化け物は倒せないの。倒すためには、うみちゃんとの絆をあの化け物を倒すチカラに変える必要があるの。お願い、うみちゃん、チカラを貸して』
一瞬、どう答えたらいいのか迷った兎未だったが、可愛いしゅとーれんのお願いを断るなんて事は出来なかった。
「ウサギは夜行性の動物だものね。確かに、夜じゃない今はチカラを本領発揮出来ないよね・・・わかった。しゅとーれん、私と一緒にあの化け物を倒そう!!」
『ありがとう、うみちゃん。それじゃあ、ワタシの手をギュッと握ってね』
しゅとーれんはスタッと立ち上がり、しゃがんだ兎未に向けて前足を差し出す。そして、兎未は差し出されたしゅとーれんの前足をギュッと握る。
ふわりと雪の様なふわふわと白い光の粒が舞う。
やがて、兎未としゅとーれんは光に包まれる。
ぽんっと軽やかな音をたてれば、ふわっと広がるふりふりのスカート。
風になびくリボンが揺れる。
腰にまるっと可愛らしいポシェットを着けて。
ぴょんと姿を現すのは・・・
しゅとーれん(ふりふりドレス着用バージョン)だ!!
「え、私・・・しゅ、しゅとーれんになってる!?」
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