06.ミケさんとの再開
「タケシさん、お久しぶりです」
ギルドの食堂のテーブルに、ミケさんがちょこんと座っていた。ミケさんは、獣人なんだが、まんま直立した大きめの猫なので、喋ってるとめっちゃファンタジーに感じる。
「お久しぶりです。ミケさんどうしたんですか!?」
「カルディアさんにお願いしていたものを取りに来たんですよ。しばらく見ないうちに、逞しくなられましたね」
「いえいえ、仲間のおかげでなんとかやってけてる感じですよ」
マークとエリサとアディさんにもミケさんを紹介していると、カルディアがやってきた。
「おう、ミケ。待たせてすまん。できてるぞ。ほれ」
「こんなに沢山、ありがとうございます」
といって、カルディアは、リュックの中から魔石のついた棒の束を取り出してミケさんに渡す。なんだろ?杖かな?じーっと見てる俺に気が付いたのか
「これは、カルディアさんに制作をお願いしてた光属性の杖なんですよ。なかなか光属性の杖を作れる職人さんがいないもので、貴重なものなんですよ」
そういって、白い金属をカルディアに渡すミケさん。あれって、白金貨!?うっそ。初めて見た。
「毎度あり。また欲しかったら、いつでもいってくれ」
「はい、ありがとうございます。では、失礼いたします」
そういって、ミケさんがお辞儀して帰ろうとしている。
「あ、そうそう、タケシさん。うちの蔵で変なものを見つけたんですよ。これなんですが、あなたに渡そうとおもってたんです。かすかに、あなたと同じ匂いがするので、もしかしたら何かの役にたつかもと」
変なものを渡すってどうなの?とか思いながら、受け取ると1冊の大学ノートだった。
中身を開けてパラパラみると、日本語が書かれていた。懐かしいな、一瞬何語かわからなくなってたので、俺だいぶこの世界に毒されてきたな。
中身は、さらっとみたが、誰かの日記だ。
「それでは、失礼します」
「あ、ミケさん、これ貰っていんですか・・・あれ?」
いつの間にか、ミケさんはいなくなっていた。
なんだ、転移か?
「タケシなんだそれ?何語だ?読めないな」
カルディアが、すごい興味津々で覗き込んで来てる。どいて邪魔。
「これは俺と同じ世界の人間が書いた日記みたいだ。ずいぶん古いな」
カルディアが勝手にすごいテンション上がって「おい、何が書いてあるんだ」「読んでくれ」「教えてくれ」とか、すごい詰め寄ってくるやめろ、あたってる。
これは、あとでじっくり読もう。今じゃない気がする。なんか、物語が大きく変わってしまいそうな気がするし。
カルディアには、読むのは時間がかかるとか適当に誤魔化して、とりあえずリュックにしまった。
その後、アディさんの筆記試験の結果を確認したが、見事合格していた。
これで、我が純白のコップのメンバーは、全員筆記試験通過となった。
次は、実技試験だ。明日用のCランクの討伐依頼を適当に目星をつけてることにした。この近くの依頼に絞ると、オーク変異種の討伐と、オーガ討伐、地下墓地のゴースト退治ぐらいだった。
オーク変異種とオーガかな。よし、みんなもそれで良さそうなので、明日これを受けて、ちゃちゃっと終わらせよう。
ということで、ギルドを出て、アディさんも含めて、またアディオさんの修行している辛味噌ラーメン屋に向かう。アディさんは、食べたら魔界に帰るそうだ。
ラーメン屋についたが、アディオさんがいない。
おや?どちらへ?店主のおじさん曰く「野暮なことは聞くなよ、今休憩中だ」とのこと。
せっかくアディさん来てるのに。アディさんも「あの子ももう子供じゃ無いんで大丈夫ですよ」とかいいながら、そわそわしてる。アディさん、兄弟のことは、結構気にしいだからな。
とりあえず、ラーメンを食べる。うまし。
みんな食べ終わって外にでると、ばったりアディオさんにあった。
なんと噂の薬屋の娘さんと一緒だ。
「ね、ねぇちゃん」
「あら、アディオ久しぶり。元気そうで何より。そちらのお嬢さんは?」
「と、友達のレミーだ。レミー、あれがねぇちゃんだ」
アディさんは、その場から消えて、すぐにアディオさんの後ろに現れて、頭をスパーンとひっぱたいた。
「ちゃんと、紹介しなさい。初めましてレミーさん。私は姉のアディよ。よろしくね。ところで、お二人はどんな関係かしら?」
「えっ」アディオ
「えっ」レミー
「えっ」俺
え、アディさん知らなかったの!?それとも知っててやってるの!?
ちょっと、なんとなく重い雰囲気な気がして来た。もしかして、アディさんてブラコン・・・?
「初めまして、レミーです。アディオさんとは、お、お友達です」
レミーさんが、ちょっとビビりながら答える。
「そう。レミーさん。アディオはこれでもうちの跡取りなの。今は自由にさせているけど、いずれ家を継ぐことになるわ。没落してるとは言え、一族の血を絶やすことはできないの。そのときに、あなた魔界にこれる?魔族として生きることはできる?」
めっちゃ重い・・・。あれ?みんなどこ?
カルディアは、ちょっと唐揚げに用事あるのでとかいいながら、澄ました顔でチロさんの店に向かいやがった。どんな用事だよ。お前、食いすぎだろ。ほぼ毎日食ってるぞ。
マークもエリサも、いつの間にかいない。くそ。面倒ごとは俺に押し付けて、みんなドロンか・・・。ひでぇパーティだ。
「ねぇちゃん、今それは関係ないだろ。行こうレミー」
アディオさんが、レミーさんの手を引っ張って、ラーメン屋の中に入って行ってしたまった。
アディさんと俺が残された。
すごい、気まずい。
「ごめんなさいね、タケシ君。へんなところを見せてしまって」
「いえ、いろいろ大変ですね」
「ほんとは好きにさせてあげたいんだけど。一族の話になると、どうしても譲れないものが出て来てしまって。タイミングを考えるべきだったわ」
「今のお話だと、ラーメン屋を魔界でやるのも、難しくなる感じですか?」
「それは大丈夫。一族復興するための事業にしようと考えているから。絶対いけるとおもうの」
「あ、そうなんですね」
さすがアディさん強かー。
腹ごなしに歩きながら、アディさんのお家の事情を聞くことになった。この流れは不可避。
「実は、アディオには許嫁がいたのよ。うちが没落してすぐに許嫁の家が離れて行って正式に許嫁ではなくなってるんだけど、最近向こうの家がまた許嫁に戻せと急に要求してきたのよ。なんでそんな話をもってきたのか、相手の家の意図がまったくわからなくて・・・今、色々調査してることろなの。もしかしたら、どこかから家の復興計画が漏れたかもしれない」
「自分から離れて行ったのに、また戻ってくるってのは、なんか嫌ですね」
「そうなのよ。でも、相手の家柄はとても良いのよ。このまま何もしないと、正式な許嫁に戻ってしまいそうなの。もし、レミーさんとアディオが本気なら私は応援するつもり」
「そうだったんですね。だから覚悟を聞いてたんですね。ただ、初対面でそれを聞くのは・・・」
「そうね、本当にタイミングを間違えてしまったわ」
すごく重い空気のまま、なんといっていいかわからず、沈黙してしまった。
「ごめんなさいね。こんな話につき合わせちゃって。そろそろ、魔界に戻るわ。逃げたみんなにもよろしくって言っておいて。しばらく向こうにいるから用があったら指輪で呼んでね。ランクは、私に構わずあげちゃってね。あとで、みんなに追いついておくから」
「わかりました」
「話を聞いてくれてありがとうタケシ君。じゃぁまたね」
こうして、アディさんは魔界に帰って行った。
すると、どこからともなく、カルディアとマークとエリサが出て来た。
お前ら・・・。
マークが、澄ました顔で、家族のことだからな聞かないほうがいいかなって、とかいってる。
俺もそう思う。でもな。何かあったらいけないでしょう。もし言い合いになったら、誰か止める役は必要なんだよ。それをお前らは、いつの間にかいなくなりやがって。
薄情なやつらだ。
俺が、プンプンしていると、「まぁまぁ、これでも食え。ほら、アーン」とか言いながらカルディアが、口にソース唐揚げを突っ込んできた。
ずいぶんと強引なアーンだな。むしゃむしゃ、こんなんで、ごまかされねーからな。
とりあえず、もう一回やってくれ。次は、優しくだぞ。いいな、アーンは優しくだ。
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