第117話・学部外活動の団体
プリームスはバリエンテ達3人の実力をある程度見ることが出来た。
それはバリエンテの目的に必要となる基準に達しており、一先ずプリームスは安心する。
「後は私が指示した通りに、時間の許す限り演習場で学部外活動をするのだ。中級や上級学部の団体が迷惑する程に演習場を使ってやれ」
と悪戯顔でプリームスは3人へ告げた。
何とも言えない顔で頷くバリエンテ。
「うむ、それは分かったが本当に団体結成の許可が下りるのか? それに団体の目的と団体名も決めねばならんし。確定もしていないのに、それを決めるのもな・・・」
プリームスはまた知らない事が目の前に現れて興味が惹かれた。
「ほほう? 目的とな? 団体名も決めるのか・・・面白いな」
そして単純に他の団体の事にも興味が湧く。
「では、他の団体はどうなっておる? 参考までに聞いておきたい」
バリエンテは思い出すように視線を宙に向ける。
「え〜とだな、大小様々な団体がある。まず研究系と戦闘実践系に大きく分類される。研究系の目的は大きな発現や現象を伴わない活動だ。例えば錬金術や魔導書の研究などだな・・・1番大きい団体では錬金連合と魔導書研究会になる」
「成る程・・・それらが屋内演習場を使う訳か?」
と直ぐにプリームスが疑問を投げ掛けた。
頷くバリエンテ。
「そうだ」
そして困った表情を浮かべて続ける。
「で、1番の問題が戦闘実践系の団体だな。ここの大手が俺達を目の敵にしているんだよ。と言うか・・・屋外演習場を使う戦闘実践系の団体には、俺たちは良く思われていない」
自嘲するような笑みを浮かべてノイーギアが告げた。
「まぁ絡んできた中級学部の生徒を、演習場で軒並み伸しちゃいましたからね。中級だけでなく上級、特級が私達を警戒しているようですよ」
バリエンテ達の説明によると、中級学部の戦闘実演系団体が一番人数が多いらしい。
その団体は魔法戦術連盟と言い、中級学部100名、上級学部50名を有する最大団体との事だ。
また活動目的は魔術と武器を併用した、より実戦的な立ち回りの研究になる。
そんな団体と揉め事となれば生徒だけでは無く、教師や講師に警戒されると言うものである。
更にもう一つの大手があり、魔法のみを主軸に実戦的な戦闘研究を行う魔導会だ。
こちらも下級学部100名、上級学部50名の在籍人数を持つ。
因みに魔法戦術連盟は武器を併用する為、その扱いを活動内で学ぶ。
一番の人気は剣と槍だそうで、それらの扱いを心得た者は卒業後に王国騎士への推薦枠が得られるとう。
安定した職種ゆえに人気が集中するようであった。
急にイディオトロピアが陽射しが嫌なのか、プリームスを連れて城壁見張り用の矢倉へ移動しだす。
ここは屋根が有るので日光を遮れるのだ。
「プリームスさんは随分白いから、陽射しが余り身体に良くないでしょ? ここで話しましょう」
少し感心したプリームス。
「よく気付いたな、私の身体に陽射しが良くない事を・・・」
笑顔を浮かべてそれに答えるイディオトロピア。
「私の母がプリームスさんと同じような生まれつきの肌と髪の毛をしていたの。いつも陽射しを避けていたから吸血鬼みたいだって、よく揶揄われてたわ」
「ほほう? 吸血鬼とな?」
そうプリームスは首を傾げる。
以前居た世界では吸血鬼は非常に少ない種族・・・と言うか希少存在であった。
その為にこの世界でも居るのか?、それとも伝承として残っているのか疑問に思ったからだ。
するとノイーギアも矢倉に入って来て、
「吸血鬼と言えば昔からの噂ですが、古代迷宮の最奥に伝説の吸血鬼が眠っているとか。とても美しい女性体だと真しやかに吟遊詩人が歌っていますよね」
と何故か楽しそうに言う。
『歌と言う事は伝承か・・・しかし古代迷宮とは・・・あそこは元々エスティーギア王妃の拠点だった筈。何か解せんな』
プリームスはそう思い、今度エスティーギア王妃に会った時にでも問い詰めてやろうと決める。
兎に角プリームスは、学部外活動の目的と団体名なども把握出来た。
後は、バリエンテが自分達の団体名と活動目的を決めるだけである。
そこでプリームスは悪戯顔で矢倉に向かって来るバリエンテに言う。
「団体名はバリエンテ演習場切り込み会はどうか? 目的は他の団体を蹴散らす事だ!」
これにはバリエンテはズッコケるしかなかった。
そして嫌そうな表情でバリエンテはプリームスを見やると、
「勘弁してくれ・・・これ以上の揉め事は御免こうむりたい」
などと弱腰な事を言う。
「何を弱気な! これから本当に他の団体へ嫌がらせをしていくと言うのに」
そうプリームスが告げると、バリエンテだけでなく、イディオトロピアとノイーギアも嫌そうな顔をする。
『ここは無理にでも納得してもらう』
プリームスは居住まいを正すと3人に言い放った。
「君たちの実力を演習場で見せびらかせてやれ。更に可能な限り他の団体に絡んで、練習と称して立ち合いを吹っかけるんだ。ノリが悪そうなら煽っても構わん」
ノイーギアが戸惑った様にプリームスへ尋ねて来た。
「そんな事をしても大丈夫なのですか? 立ち合って伸す自信はありますけど・・・。きっと苦情が講師や理事長へ殺到するかと」
「そこは気にするな。そもそもそう仕向けるのが目的でもある」
そう自信満々に答えるプリームスにバリエンテ3人は、それ以上異を唱える事が出来なかった。
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