君は多くを尻すぎた
園長
1ーシーリングファン
「俺さ、実は自分がシーリングファンだったってことに気づいちゃったんだよね」
そんな究極的に訳のわからんことをのたまった人間が、自分の数少ない友達だとは信じたくなかった。
それでも一応、反応しておく。
「あのさ、それってつまりどういうことか日本語で説明してくれる?」
「俺は尻の画像とか動画を集めまくったりする尻のファン、つまりシーリ(尻)ングファンなんだよ」
目の前の友人は「どうだ、すごい発見だろ」みたいな顔でこっちを見てくる。
僕はこれでもかってぐらい貼り付けた笑顔で「うん、意味不明」と否定してやった。
それは発見でもなんでもねぇ。ただのダジャレだ。
高校の昼休み、教室の席に座って購買の干からびたパンをむさむさと食べていた。
もうすぐ遅れた夏休みも始まろうとしている時期。
換気のために開け放した窓から熱気をはらんだ風が入ってきて額からじわりと汗が出るのを感じる。
僕は汗をかいた紙パックのコーヒー牛乳をすする。
周りのクラスメイトは「夏休みどこ行く?」とか「部活ばっかだよ」とか「今年は夏休みが少ねぇ!」とか、そういう話が聞こえてくる。
奴は僕の前の席に座って大真面目な顔してスマートフォンに向かって「Hey Siri! やっぱオメーも尻ファンとかケツファンよりシーリングファンのがかっこいいって思うよな!」『すみません、私には理解できませんでした』「なんでだよ!」なんてことを一人でやっている。
何度目だろうか、やはりこいつと友人関係でいるのは考えた方がいいのかもしれんと思った。
こいつは中学生の頃から極度のお尻好きだった。
尻を崇拝していると言ってもいい。狂信者レベルで。
「尻は素晴らしい、なんといっても2つに割れているのがすばらしい。そして大抵の人間は尻を持つ、人種も男女も学歴の差も無く平等だ。女には女のぷりんとした、男には男のガチッとした尻の良さがある。尻は口ほどに物を言うってことわざがあるだろ? 綺麗な顔してたり口が上手い奴でも、尻が汚ねぇとダメだ。人間たるもの常に尻を綺麗にしておかねばならない。わかるか?」
この通り、尻の話になると途端に饒舌になる。
「いや、ごめん、わかんねぇよ」
クラスメイトもこいつのこれのことはよく知っていて、尻の話が聞こえてきてももう誰も何も言わなくなっていた。
「つまり、健全なる尻に健全なる魂、いや、たま尻は宿るってワケ」
「尻に尻が宿ってんじゃねーか、ワケわかんねーよ」
頭痛がしてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます