乙女ゲームの世界じゃないの?

白雲八鈴

1話 待ちに待った入学式

ここはシーラン王国の王立エピドシス魔術学園なんです。15歳から入学資格が与えられ、試験に通れば晴れて入学!そうです。魔法が使える世界なんです。

 そして、この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。

 突如、学園内に出現した迷宮を攻略対象と共に迷宮の謎を解いて愛を育んで行くという、乙女ゲームと謎解きを取り入れたゲームなんです。


 攻略対象は4人。


 一人目はこの国の第二王子ランフォンス・シーラン。金髪碧眼の王道攻略対象。狐獣人。


 二人目は統括師団長の孫。リッター・グアトール。銀髪赤目。弟ショタ枠。うさぎ獣人。


 三人目は近衛隊長の弟。メルス・スラーヴァル。緑髪金目。お色気担当。蛇人。


 四人目はラース公国からの留学生。ユウマ・ラース。黒髪黒目。クールキャラ。人族。


 あと、もう一人隠れキャラがいるのです。それが私の推しメン!ルーク・カークスです。金髪桃目。無愛想だけど、好感度MAXになればメロメロになるのです。いわゆるギャップ萌え。人族です。


 そして私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。


 一人盛り上がってしまい失礼しました。私はシーラン王国のなんの取り柄のない子爵家の長女メリッサ・キティアと申します。茶色の髪に茶色の瞳リス獣人です。よろしくお願いいたします。って誰にいっているんだろ。


 今日は待ちに待った入学式。門の茂みの裏で張り込み中のメリッサです。

 実は主人公が誰わからないのです。スチルでわかるのは金髪というのみ。名前のデフォルトがあるわけではなく、入力法式。

 なので一番始めに起こる王道イベント。門で王子にスライディングヘッドをかますイベントです。

 今思うと捕まるよね。っていうか茂みに隠れる私も見つかれば捕まるよね。やばい。御家取り潰しになるのは避けなければならない。



 はい。不審者になる前に入学式の会場に来ました、メリッサです。やはり、御家取り潰しはいけないので第二王子の回りをうろちょろするのは諦めました。遠くから他のファンに擬態して眺める方針に変更します。



 会場に入りますと、中々の広さのホールのような講堂の中に座席が並らんでおり、座っている人がちらほらいます。

 どこでも座っていいとはありますが、文字通りどこでもはダメです。貴族と平民ではそもそも椅子の種類から違うのです。その中でも序列順に座らなければならないです。


 私は子爵令嬢なので貴族側の後ろの方に座れば問題がないので、後ろの席に座ります。

 席に着くまでの間、新入生を観察していましたが、やはり、貴族と平民とでは見た目でわかるものですね。この王立エピドシス魔術学園は専用の制服の着用義務があるのだけど、制服の改造ダメとは言っておらず、それ本当に制服かというほど原型がないものを着ている人もいるのです。

 私?私は王都のいつもお願いしているところで可愛くしてもらいましたよ。まあ、獣人なのでしっぽを出すスペースを、作らなければならなかったついでですけど


 新入生が揃ったようなので入学式が始まり、学園長が挨拶の言葉を壇上で話していますが、ツルツル頭に服の上からもわかるほど、ムキムキの筋肉・・・服ってそんなにパツパツに着るもの?プロレスラーがTシャツ着ている並みにぴったりフィットと言い換えればいいのかな。

 それが気になって話が全く入って来ない。そもそも隣にある騎士養成学園と間違えてない?



 新入生代表はもちろんランフォンス・シーラン殿下です。流石に王族ですね。威厳というか風格というか、さすが王道の攻略対象です。その辺のモブとは全然ちがいます。生殿下はキラキラ具合が半端なく、もう神々しいと言っていいと思います。ドキドキします。取り合えず拝んでおこう。


 しかし、攻略対象のラインナップがおかしいとは思いませんか?

 あの当時もネット上で話題に上がりました。蛇族ってどうなの?普通、竜族じゃない?とか統括師団長の孫がウサギってことは軍の一番トップがウサギなの?とか王族なら獅子とかの方が威厳がありそうだとか、散々な酷評だったけど、ネットに上げた人も結局文句いいながらしてるじゃん。と当時思った。


 そういう自分も『なにこれありえなーい』とかいいつつ楽しんだ派なのだが、キャラ設定を凌駕するほどスチルが美しかったのです。あのルー様の『君の為に俺は負けることはできない』のスチルは私の中で永久保存されています。できれば、生でみたい。


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