第4話お嬢様のメイドになりました。(メイド視点)
私、バーバラは本日ハミルトン家の御令嬢のミリア様のお付となるように指示を受けた。
その話を頂いた時にはショックのあまり立ったまま気を失ってしまった…。
同じく見習いの頃から一緒の同僚が現実に引き戻してくれた…。
「バーバラ…頑張って…」
それだけ言うと視線を逸らす…
「どうして私が…」
やっとそれだけ言うと
「ミゲルさんの指示らしいわよ…あの人お嬢様の為ならなんでもするもの…バーバラ気をつけてね」
「いい!絶対にお嬢様と目線を合わせては駄目よ!目が合っただけで辞めさせられた人が何人いることやら…それと言い訳!これも絶対駄目!それと…」
次々と出てくる注意事項をバーバラは呆然と聞いていた。
まだ表にも立たせて貰えない使用人なのに…なんでいきなりお嬢様のお付に…?
いくら考えても答えなど出るはずもなく、時間だけが過ぎて行き…とうとうお嬢様に挨拶をしに行く時となってしまった…。
この御屋敷に来てやっと一年がたったがまだ一度もお嬢様を見た事が無かった…お嬢様が廊下を歩いていようものならみんな頭を下げて隅に立ち、お嬢様がいなくなるまで動かないことが暗黙のルールだったのだ。
バーバラは、死刑台にでも送られる気分で廊下を歩いていると…すれ違う使用人が哀れみの目を向けてくる…。
バーバラは扉にたつと、震える手で扉をノックした…
すると中から慌てて走る音が聞こえると…
「どうぞ…」
始めた聞くお嬢様の高い声が聞こえてきた…
精神的にも肉体的にも重い扉を開けると、目の前にソファーに座っている人がチラッと見えた。
バーバラは直ぐに視線を落とすと…自分がお付になった事を伝えて頭を下げる。
了承が貰えるまで頭を下げ続けなければいけない!
みんなから聞いた注意事項を守り頭を下げ続けていると…
「えっと…バーバラさん?もう顔を上げた方が…」
戸惑った声が返ってきた!
(しまった!下げすぎたのか!?)
慌てて頭を上げ非礼を詫び、なんでも申し付けて欲しいと声をかける。
すると…
「ありがとう」
お嬢様からお礼の言葉を返される…
(えっ?)
心の声が思わず漏れてしまった…
「えっ?」
お嬢様に向かって、ありえない返事をしてしまう…しかも事もあろうに視線を合わせてしまった…。
(終わった…)
私のメイド人生が終わった…あわよくば同じ使用人と恋でもして子供をつくり、慎ましくても普通の人生を送れればと思っていたが…一瞬の事でその夢は崩れ落ちた…。
みるみる血の気が引いていくと…遅れてパニックになる…ここで冷静に対応出来ればかっこいいんだけどな…
メイド歴一年の私にはそんな高度な事は無理だった…
思ってることを全て口に出し…しまいには泣きそうになると…
お嬢様が驚いた顔をして近づいてきた…
叩かれる…
と一瞬思うが、お嬢様は心配そうな表情を浮かべて私に触れようとした…
お嬢様に決して触れてはならない!
注意事項を思い出し止めようとすると…
頬を膨らまし、何故触れては行けないのかと怒っていた…しかも私の事を名前で呼んだ…。
そして…
「あっ…」
しまったと口を抑える。
その表情は可愛らしく…思わず気が緩んでまたもや聞き返す返事をしてしまった…。
口を抑えると、お嬢様も同じ仕草をしている…
お嬢様は使用人の名前を呼ばない…
そう聞いていたはずなのに…私の事をバーバラちゃんと…
驚いてしまっていると…お嬢様から信じられない言葉がかえってくる…私の名前が可愛いとそう呼ばなくてもいいと言うと怒ってくれた…。
(どこが怖いの?)
バーバラはお嬢様をもう一度じっくりと見る、決してしては行けない事だが…何故かお嬢様に恐怖心はもう無かった…。
お嬢様はお嬢様らしからぬ格好で腕を組み、名前を呼びたいと仰っていた…。
あまりの衝撃につい声をかけてしまう…
「お、お嬢様は…聞いていた印象と違いますね…」
すると、急に慌ててだし…使用人の私に一生懸命言い訳をする様に話し出した…
言い訳も注意事項だったっけ…
「ふふ…」
あまりの印象の違いに思わず笑い声が漏れてしまう。
するとお嬢様は不安げ私を見つめた…
(なんて可愛らしお嬢様なんだろ…みんな私を騙すためにあんな嘘を教えたのかしら…)
私はお嬢様に今の素直な印象を伝えると…恥ずかしそうにしながらも嬉しそうに笑ってくれる、そして…
「あっ!でもみんなには内緒にしておいて…やっぱり怖いイメージでいないとね!」
と可愛らしくお願いしてきた…
「承知致しました」
私は深々と頭を下げるとお嬢様を見つめる。
するとお嬢様はホッとしたような表情を浮かべた…。
(お嬢様はこのままの方がずっと素敵なのに…)
しかしそれは口に出さず…今はこの方のお付に慣れたことを素直に喜ぶ事にした。
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