世界一運の悪い女

藤雪花

1、

この世の中の人類を運のいいヤツと悪いヤツに分けるならば、わたしは間違いなく悪いヤツに分類される。


わたしは、けっして不細工に生まれついたわけではないと思う。

眼はぱちりと大きいし、くっきりと二重でもある。

鼻だってどこかを向いているわけではない。

頭だって、決して悪いわけではない。


体育だって、特別運動神経がいいわけではないけれど、ガッツを見せて取り組めば先生はいい点数をつけてくれた。

だから、わたし、山吹さくら個人で言えば、顔はそこそこ良くて、頭もいい。

才色兼備といえばいいすぎだと思うのだけれど、まあそれなりに、わたしが再び来世に生きるとして、持って生まれたいと望むものは、今生でもだいたい神さまは持たせてくれていると思うのだ。



だけど、その運の良い方にふれている針が、勢いよく、反動さえもついて、逆方向へ触れてしまう、決定的なことがわたしにはある。


わたし、山吹さくらにとって、運の悪さを決定的に運命づけたことは、山吹かおりが姉だったこと。


山吹かおり。


一年違いで同じ日に生まれた姉。


わたし達は、両親のそれぞれ片方の性質を色濃く受け継いだ、両極端の傑作だった。


姉は、白雪姫もかくやあらんというような色白の肌、濡れたような黒髪。

5月になれば日傘が、姉を紫外線から守る。そうでないとすぐに赤く焼けてしまう。


もちろんその日傘は、晴雨兼用ではない。

日傘用だけの使用用途しかない、生成の麻の日傘である。




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