次のターゲット達

 ギルドの建物を出ると、拗ねたレンガいました。

 仕方ないので、頭を撫でると、最初は手を払いましたが、今は大人しく撫でられています。膨れていた頬が、見る見るしぼんで面白いです。

「これから、どうしますか?」

「まずは、この街にいるリストの人間の確認かな・・・」

 エメラルダから預かったリスト、この街の人間も数人載っています。全部を相手にする必要はありませんので、ざっと見て、面白そうな人物を確認します。

「この商人と、料理人は早めに確認したほうが良いですね」

「両人と、料理人をですか?」

 サーシャは、不思議そうにしています。前線で戦いをするだけでは駄目です。後方支援も大事な仕事。見た感じ、この街に二人ほど加護のおかしい人間がいます。

「商人から、行って見ましょう」

 ついでに、処理できなかった勇者たちから奪ったアイテムを始末しましょう。現金は有る程度あったほうが良いです。

 エメラルダから、資金援助は受けていますが、出所の不明な資金は、後になって問題になる可能性もある。

「そこまで、心配する必要あります?」

「加護とか、スキルとか、予想できない色々な可能性を考えておかないと、異世界は怖いです」

 お金に関しては、色々と怖い技がある可能性が在ります。

 銭投げといって、投げる金額でダメージが増加する技。

 逆に、所持金が多いほどダメージが多くなる技が在る可能性があります。

 この手の技は、銀行に預けてあると大丈夫というか、抜け道もあるので、用心しておけば大丈夫でしょう。

 出所が不明なお金を所持していると、悪人認定される可能性もあります。

 善悪を判断する水晶とか、異世界というのは理不尽な物があるので、警戒する必要があります。

 私は既に、この世界での人殺し。何処で導判断されるか不明なのです。

「確か、教会でも全ての加護を把握できていないそうです」

「戦女神様は、結構いい加減でしたからね。その部下も、苦労しているのでしょう」

「そうなのですか?」

「神とは、そう言うものですよ。全部を管理できるなら、何もかも無くなって消えてしまいます・・・」

 だから、私はあの世界で戦い続けていました。どちらかが勝利すれば、全て消えます。管理する存在も、それを知っているので、決着をつける事をしていません。

「日々をただ、楽しみながら過ごせれば良いのです」

 先のこと、大きなことを今は考える必要張りません。ただ、この休暇を楽しみましょう。その為に、エメラルダからの依頼を利用させてもらいます。目的の無い旅よりも、色々と楽しめそうです。


「これは、幾らで買い取ってもらえますか?」

 上目使いで、さりげなく、そしてあざとく聞いてみます。

「少し待ってもらえるかな」

 買取目的で訪れた小さなお店。色々と、買取を専門で行っている店で、この街では有名な店です。

 カウンターの男は、普通の反応で、淡々と商品を確認します。カウンターの上には、勇者たちの遺品を出しました。

 聖剣や、上位の魔導書は除外してあります。

 中位の魔剣と鎧、そして上級の回復薬です。

 レンが意外にもこの手の相場に詳しくて、買い取り価格に関しての予想を出してもらいました。一括の買取では、少し無理のある高めの商品になるように調製してあります。

「これだと、この金額だ」

 提示された金額は、ほぼ予想通りでした。交渉する必要は無いでしょう。

「それでお願いします」

「現金で良いのか?」

「現金以外の支払いも出来るのですか?」

「商業ギルドの割符が利用できる。この金額だと、割符と併用してもらえると助かる」

 この金額だと、こうなるのは仕方ありません。

「割符は、この街のギルドだけしか使えませんか?」

「何処のギルドでも利用できます」

「解りました。それでお願いします」

 この世界のシステムだと、ギルドカードに入金という便利な物は無いみたいです。

 店員から、割符を受け取ります。少し汚れているので、不安になります。

「これ、使えない事はありませんよね?」

 念の為、確認します。

「当然です。偽物を渡したら、私どもの名に傷が付きます」

「失礼な事を聞いてすみません。金額が大きいので、心配になりました」

「この手の事は、なれていますので、大丈夫ですよ」

「そうなのですか?」

「えぇ、たちの悪い冒険者だと、力ずくで脅してくる人もいますから」

「おじさんは、大丈夫なの?」

「強い用心棒がいますからね」

 そう言って、商人は笑います。

「なら、大丈夫なのですね」

 私はそう言うと、店から出ます。

「今の商人ですか?」

「どこが、危険なのでしょう?」

 二人とも、あの商人に関して違和感を持っていません。

「あの店内、他に人はいませんよ」

「用心棒がいるのでは?」

「用心棒はいません」

「その割符、偽物とか?」

「こちらは、本物ですね。普通に使えると思います」

「こちらはって、金貨は偽物?」

「さて問題です。偽物の金貨を持っているのは、犯罪ですか?」

「犯罪ですね」

「犯罪です」

 二人は同時に答えます。

「都合よく、兵士が路地裏にいるのは何故でしょう?」

「私達を捕まえる為?」

「捕まえられるならね」

 受け取った金貨は、袋ごと店の入り口の落としてしまいました。うっかり落としてしまったので、気がついていません。店員さんも、死角になっている場所に落としてしまったので、気づけるはずがありません。

「偽の金貨を使っているとして、女神様が気にするほど、悪質なの?」

 レンが、良いところの目をつけます。

 この程度の詐欺なら、女神が厄介とは思わないでしょう。

 一枚だけ手元に残した金貨を確認します。それは、遠い昔の記憶にある、この世界にあるはずの無い、日本で使われていた小判でした。

 

 

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