第83話 元勇者 大人気のセフィラに驚く
「セフィラ、申し訳ないんだけれど、あのイベントに参加してほしいんだ」
俺が指さした先をセフィラは見る。
「水着コンテスト、ですか?」
そう、建国祭中の催しの1つだ。
「大当たり。セフィラ、参加してみようよ。絶対優勝できるよ!」
「そ、そ、そ、そんな──。わたくしがそんなコンテストに、私よりローザ様やルシフェルさんの方が向いているのに。そんなに綺麗な女の人が見たいのですか?」
「そんなんじゃないよ。セフィラには、自信をつけてほしいんだよ。いつも腰が低くて、謙遜しているから、いつもそう考えていたんだ」
俺の言葉を信じ切れず、セフィラが迷っているのがわかる。大丈夫。どうすれば彼女が動いてくれるか、俺はわかってる。
「じゃあこうしよう。このコンテスト、優勝したら賞金として金貨が配られることになっているんだ。だから優勝したら、その金貨でローザに何かプレゼントを買ってあげよう。きっとローザも喜ぶと思うぞ!」
そう、セフィラの行動原理はローザだ。彼女のためになるって教えれば、首を縦に振ってくれる可能性は十分にある。現にセフィラはどうすべきか迷っている。
そしてそわそわしながら決断をした。
「──わかりました。参加します。ただ、約束は守ってくださいよ」
「わかった。ありがとな」
そして俺たちは受付へ。
受付のウサミミをした亜人のお姉さんに話しかける。
「いらっしゃいませ、ご見学ですか?」
「こちらの方を参加させたいのですが、今からでもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ。すぐに手続きいたしますね」
そしてお姉さんは机の下から書類を取り出し、手続きを始めた。
セフィラが自己紹介をして、名を名乗ると、手続きの時間を利用して俺に話しかけてきた。
「しかし水着コンテスト、私が? 何の冗談ですか? どう考えたって優勝できるはずがないじゃないですか」
「冗談でも何でもないよ。セフィラならきっと賞を取れるよ。綺麗だし、スタイルいいし」
その言葉にセフィラは顔を赤くさせ、反応する。
「そ、そんな誉め言葉、やめて下さい」
手続きが終わる。大会はもう少ししたら始まるようで、それまでは海に入ったりしてゆっくりしていた。
そして開催の時間。
簡単なルール説明を終えて自己紹介の場へ。
セフィラがその会場を見ってびっくりする。
海の砂浜に大きな舞台があり、その上で周囲に向かってアピールをするというのが理解できる。
「や、やっぱり恥ずかしいです。あんな大勢の前で水着姿なんて──」
「ま、一度でいいからやってみなよ。何かあったら俺がついている」
真ん中にセフィラはいた。黒を基調としたビキニだ。彼女の純白の肌、黒いセミロングの髪と相まってとても上品に感じる。
そしてセフィラの番になる。
「私がセフィラです、よ、よろしくお願いいたしましゅっ!」
セリフ噛んじゃった。よほど緊張しているんだな。恥ずかしがっているのもわかる。
セフィラの紹介が終わったとたん周囲の観客達から大きな歓声がうねりを上げた。
その声にセフィラはかぁ~~っと赤くなる。
人気は上々のようだ。
自己紹介が終わり、次は1人づつのアピールタイムとなる。
セフィラは最後みたいだ。
「では、私は控室に行ってきましゅ──」
また、噛んでしまった。恥ずかしそうに、顔をうつむくセフィラ。
「まあ、うまくリラックスして、いいアピールになるといいね。頑張って。応援してるよ」
俺はセフィラの背中を押す。
そしてセフィラは控室へ。
それから、アピールタイムとなった。
1人づつ、舞台の上でのアピールが進む。そして最後になりセフィラが出てくる。
両手をあわあわと振り恥ずかしがりながらアピールに入る。
「は、は、初めまして、セフィラです。」
「おお、あの女の子かわいいな!」
「あの堅そうなところがいいねぇ」
周囲からは好評なようだ。
歓喜の声がそこら中から出てくる。
圧倒的なボディ、綺麗な容姿、上品な顔立ち、人気が出ないわけがない。おまけにあのたどたどしさも一般人という感じがして、逆に人気を出している要因になっている。
俺が生まれた世界にだったらグラビアアイドルだってなれる。そこでみんなのおかz……じゃなかった。元気を与える存在にだってなっていただろう。
「わ、わたきゅし……。こういうイベントの経験が全くなくて、め、目立つこともあまり好きではないんです。でも、そんな自分を変えたくてこのイベントに参加しました」
「大丈夫だよ。そんな姿も素敵だよ」
「そうよ。顔が真っ赤な所もとってもかわいいよ!」
「こ、こんな私ですけれど、優勝目指して頑張りたいと思います! よ、よろしくお願いします!」
そして小走りでこの場を去っていく。
これで、アピールタイムは終了。審査に基準は観客1人1人の投票によって決められる。
当然セフィラに1票入れた。
その後、結果発表。セフィラは会場の前で俺と一緒に結果を聞く。
「セフィラ、優勝あり得ると思うぞ。セフィラがアピールしているときの会場のヒートアップっぷり。本当にすごかったんだぞ」
「そ、そうですか……。そうだと、いいですね──」
俺の言葉を信じていないのは表情でわかる。まあ、見てなって──。
結果発表。受付のお姉さんが、壇上で叫ぶ。
「優勝は、最後にアピールを行ったセフィラさんでーす」
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