第16話 元勇者 海底遺跡へ
「大丈夫だ!!」
ポルポさんの声を聞いて俺は、その石に向かいそっと手をかざす。
そして手に自分の魔力を込める。すると──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
俺の体が白く光り始める。慌てて背後に視線を配ると、他の冒険者の体も同じように光っていた。
一瞬で視界が真っ白になる。時間にして数秒。すぐに意識を取り戻す。
それから周囲に視線を配ると、その光景に驚く。
何と水中にいる。まて、酸素ボンベなんてないし水中で呼吸できる術式を俺は使えない。
(あ……)
水の中なのに呼吸ができる。これも遺跡の力なのだろうか、宙に浮いている感覚。何か宇宙にいるみたい。それにしゃべってみたが音も出るみたいだ。
他の冒険者達もいる。
慣れない水中での移動、周囲も戸惑っているようだ。
先に進むしかない。すでに遺跡の中にいるようで、前方以外は壁に覆われている。だったら前に進むだけだ。冒険者達に視線を配り、俺は前を差し、その方向に進み始めた。
「みんな、ゆっくりでいいから進もう」
そして俺は進むペースを遅くし、その方向に進む。
誰かが取り残されるようなことがあってはならない、この水中で呼吸が出来るのだってどこかで終わってしまう可能性もある。
周囲に気を配りながら道を進んでいく。
水中を進んで5分程、俺はとある違和感に気付いた。
(何だ??)
前方から水の流れが強くなっているのを感じた。何かあるのだろうか。
とりあえず敵に警戒をしながらさらに前へ進む。
そして──。
シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ──
とてつもなく大きな叫び声が前方から聞こえ出す。他の冒険者もその声に動揺している。
敵が近くにいるのを理解。弱い敵だといいな……。
そしてさらに進むとその声の主がいた。
「お前が声の主だったか、かなり久しぶりだな──」
ビックシャーク。全長10メートルくらいある巨大なサメ。確か以前この世界で戦ったことがあったな。
周りにいる冒険者達はその強そうな姿に驚き、互いに視線を合わせる。
「バカ野郎!! このくらいでビビるな」
冒険者の一人が叫ぶ。まあ、こいつはそこまで強くなかったはず──。
とりあえずあいつのステータスを見てみよう。そう考え俺は解析魔法を使う。どれどれ……。
<闇属性、スコープ>
体力 80
物理攻撃 115
物理防御 87
魔法攻撃 68
魔法防御 63
瞬発力 75
種族値488
うん、攻撃力がかなり高い……。他はそこそこ。恐らく魔法攻撃は使ってこないで物理攻撃で戦ってくるタイプだ。
魔獣の場合冒険者と同じ種族値でも使える術式の威力が違う。通常はこのように集団で戦っている。
相手の高い攻撃に警戒しつつ、素早さの違いを生かし攻めていくのがいいだろう。防御より魔法防御の方が低いから遠距離攻撃を使うのもありだ。魔法攻撃が高いルシフェルが大活躍しそう。
俺がそう考えていると、周りにいる冒険者達が武器を手に取り戦闘が始まろうとしていた。一部からはとても勇ましい声も聞こえ出す。
「サメが何だ!! すぐに始末してやるぜ!!」
「何か強そう……」
一方でローザは怯えている。強い魔獣と相対した経験が無いのだろうか──。
シャァァァァァァァァァァァァァァァァァ──!!
するとシャークが紫色に光り始める。
(肉体に魔力をためているんだ。そうか──)
「まずい!! 突っ込んでくるぞ!!」
俺は後ろの冒険者に向かって叫ぶ。そして──。
「やべぇぇぇ、突っ込んできた!!」
俺も慣れない水中の中何とか体を動かし、攻撃をかわす。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
しかし他の冒険者の一部はよけきれず、攻撃をまともに食らってしまう。
(あの高い攻撃力、速く倒さないとまずいな)
そして誰かが俺の肩をたたく。そこにはルシフェルの姿。
「お返しよ!! まずは私か先陣を切るわ!!」
ここで飛び込んだのはルシフェル。確かにルシフェルなら相手の比較的低い魔法防御に対して彼女の高い魔法攻撃で突ける。
そしてルシフェルの攻撃。剣を振り下ろすと魔力を伴った青白い球が放たれシャークに直撃。
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
ルシフェルの強力な攻撃がシャークにヒットしシャークは断末魔の叫びを上げる。あの大ダメージ、相当効いているはず。後一撃といったところか……。だったら──。
「俺が勝負を決めさせてもらうぜ!!」
俺は脚に魔力を込め一気にシャークに向かって加速。相手もそれに気づいてこっちに向かってくるが気にしない、102と75、素早さが違うのだよ貴様とは。
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
魔力を込めた俺の剣で相手を一刀両断。相手の肉体は真っ二つになった後その肉体は地面に落下、そして──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
まるで蒸発するかのように肉体が消えて無くなっていく。やはり魔獣だったか……。
その光景にローザが驚いている。そして隣にいるルシフェルに話しかける。
「あのサメ、何で消えちゃったんですか?」
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