第7話 脱ぐと凄いんですよ?

 駅に自転車を置き電車に乗り込む。揺られること一時間弱で隣県の県営プールに到着した。

 ここの入場料は数百円なので懐に優しい。テレビでもよく見かける都内某プールは入場料とプールの料金で四千円越えとか聞いた事ある。あれはブルジョワジーの芋洗いだな。



 ふた手に更衣室前で分かれさっさとお着替え。俺はぱっと脱いでさっと履くだけなので数分で用意完了。

 陽なたで待つのはダルいが、人出も多いから迷子になられても困る、なによりもあいつらがナンパされると面倒だ。ふたりとも性格はどうであれ見てくれだけは美少女のたぐいで間違いないんだよな。


 

「あち~。早く出過ぎたかな」

「お兄ちゃん、おまたせ」

 先に恋春が更衣室から出てきた。昨日買ったオレンジのビキニに黒に緑色の柄の入ったパレオをつけている。我が妹ながらかわいいと思うぞ。

「おっ、なに? お兄ちゃんは私の水着姿に見惚れちゃったのかい?」

 ウリウリと俺の横腹をつついてくる恋春。


「ま、確かに昨日試着室で見たより太陽のもとで見ると一層可愛いとは思うぞ――

 恋春はつついていた手が止まりうつむいて……

 ――ただ、毎日パンイチでうろつくお前を見てるんだ。見惚れるわけ無いだろ」

 ……平手で俺の尻をたたきやがった。痛てえ。


「ねえ」

 おっ、香織が来たようだ。振り返ると、香織の両の手でガッと顔を掴まれるた。

「清水悠さん。ちょっと、今のは聞き捨てられないわね。妹ちゃんの裸体を毎日見ているってどういうこと? ことと次第によっちゃ血を見るわよ?」

 誰も裸体を見ているなどと言ってないんだけど? 恋春は風呂上がりに暑いからってパンイチでタオル引っ掛けて扇風機の前で涼むんだよ。風呂上がりはそんなもんだろ? 俺なんてパンツさえ履いてないことあるぞ?

「……ノーパン悠くん……ぐへへ」

 俺の顔から手を放して離れていったけど、なんか不穏なセリフが聞こえたような? 気の所為?


 少し離れたところで香織の水着姿を改めて見る。

 俺は驚きの余りフリーズした。

 白ベースに赤い花をあしらったビキニに白色に葉のような透かしの入ったロングのパレオ。

 出るところは出て(特に上の二つの丘! )引っ込むところはしっかり締まっている。この前の花火のときは浴衣だったからか抱きつかれても気づかなかった。普段の服装もゆるふわ系で全然わかんなかったよ。


「ど、どう? おかしいかな?」

「……か、かわいいよ。すごくかわいい。その水着も香織に似合ってるし、スタイルも抜群にキレイだよ。何処かのとはえらい違いだ」

 香織のことをとにかく褒めちぎった。なんか恥ずかしかったけど、誤魔化せなかったわ。だって可愛すぎるんだもんな。何故か恋春が睨んでいるけど気にしない。


 視線を恋春から香織に移すと香織の全身が赤いような気がする。顔もなんか赤い。

(はっヤバい。日焼けかっ! 香織は肌が白いから焼けやすいのかも)

「き、気が付かなくてごめん。今直ぐパラソル借りてくるから先に場所取りに行って待ってて」

 俺は慌ててレンタルコーナにパラソルを借りに向かう。


「なんかお兄ちゃんがごめんなさい」

 呆れ顔の恋春が香織に謝っている。すまない妹よ、気の利かない兄のせいでお前にも恥をかかせてしまった。

「悠くんはいつもあんなものよ。分かっているふうで分かってないのよ」

 なんか言っていたけど聞こえなかったことにしておこう。グスン。



 人通りが少ない隅の方にパラソルを立ててレジャーシートを敷いて場所を確保した。

 パラソルの下に入ったからか香織の肌の赤みも消えていてホッとした。

「悠くん、ありがとう」

「どういたしまして。もっと早く気づいてたら良かったけどゴメンな」

「そんなことないよ。でも悠くんが急いでくれたからいい場所取れたね」

「お兄ちゃんもたまには良いことするよね」

 偶にはとかうるさい。否定はできないけどな。


「それにしても、悠くんも結構良いカラダしているんだね。運動部じゃなかったよね」

「所属の部活はwebデザイン研究部で殆ど椅子に座ったまま動かなくても良い活動だしね。でも、畑仕事毎日手伝ってるから、そこそこ身体は締まっているのかな?」

 香織は「触っていい?」と聞いて俺の腕や背中などをサワサワしてくる。くすぐったい。

「ぁんっ、(日焼けして)(背中が)し、(腕の筋肉が)ぁ~ワタシ(男の人の筋肉を触るのこんなの)初めて……ぽっ」

 香織さんや、言い方。見てよ、周りに居た男の人達は前かがみになってプールに飛び込んじゃったじゃない。ほら、監視員さんに笛吹かれて怒られているし、一緒に居た彼女さんたちの彼氏を見る目がコワイですよ。気をつけましょうね。

「ハ~イ。ナンノコトカワカラナイケド、ワカリマシタ」

 いや、貴女。なんでカタコトなのですか、分かっててわざとやったでしょ?


「ねえ、お兄ちゃん。香織さんて聞いていたよりも更に上行く感じだね。見た目とのギャップ有りすぎて脳がパニック起こしそうだよ」

 まあ、そうなるわな。どう見ても香織は大人しそうなメガネっ娘にしか見えないもんな。

「でも、一緒にいるとすごく楽しそうだから全然OKだね。お兄ちゃんも見た目と中身がちょっと変だから似たもの同士でお似合いじゃない?」

 は? 何を言うのかね君は。答えにきゅうするようなことは言わないように。あと、中身がちょっと変って何? 俺の何処が変だというのかね?


「さあ、悠くん。恋春ちゃん。今日は遊びまくるぞ。いざ参らん」

 香織はメガネを外してバッグにしまうと立ち上がり、拳を上げる。

「先ずはウォータースライダーだよ! ……ねえ、眼鏡外すとよく見えないから連れて行って」

 俺の手を取り、繋いでくる香織。ちょっとドキッとしたぞ。


 それにしても、いきなりウォータースライダーかよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る