第9話 実力差
「こんどはゆかり本気出してみて」
部長の神城くんも、その綾崎さんの様子を見て、微笑みながら次の提案をした。
先ほどは正面から、同じ条件で打ち合った。
そしたら、両方がやられて相討ちになった。
しかし、実力差がとてつもなくある場合はそうではないらしい。
「オッケー」
綾崎さんは楽しそうにコントローラーを握って、画面を見ている。
本気スイッチが入ったみたいだった。
いままでの綾崎さんとはちょっと違う。
「本気??」
僕は驚いて聞き返す。
本気になると何が違うのだろうか。
結構な差があっても正面から打ち合えば相討ちになると聞いたばかりで、あの差が簡単にひっくり返せるとは思えない。
「じゃあ、もういっかいいきましょう」
綾崎さんがいう。
彼女の準備はしっかり終わったらしい。
「いっせいのせ」
彼女が掛け声をかける。
そして戦いが始まった。
それは先ほどの戦いとはまるで別の光景。
僕の弾は当たらず、避けたところから確実に僕のところに弾を出して、僕だけがダメージをうけて、やられてスタート地点まで飛んでいってしまった。
「え!え!えぇぇぇ」
僕は驚いた。
さっきとはまるで違う結果に終わった。
さっきは、3発も彼女に当てることができたのに、いまは一発も当てることなく、自分だけがダメージをうけてやられてしまった。
「と、まあこうなるわけ」
綾崎さんが微笑みながら言った。
これがトップクラスの実力。
とんでもないものを見てしまった。
「全然攻撃があたらなかった・・・」
僕は呆然としながら呟いた。
まったく攻撃が当たらず、ぼくは彼女のように避けることもできなかった。
「そう、実力差がとてつもなくあればこういうことが起きるんだけど」
神城くんはそう言った。
とてつもなくというのがポイントっぽかった。
「基本的には、ならないと思ってくれていい」
神城くんはしっかりそう言った。
こういうことがおきるのは、僕が初めてプレイした上、彼女がトップクラスという条件で初めて起きることらしかった。そのぐらいまでの差がない場合は正面から打ち合ってはいけないらしい。
「私が操作のトレーニングするから、2週間後にはこういうことは起きない」
うしろにいた、新庄さんがぼそっとそういった。
彼女がそういうトレーニングを得意としているらしい。
「戦略 戦術 操作のうち操作はすぐに解消される」
神城くんは説明した。
彼女のトレーニングを信頼しているらしく、2週間後にはこういう操作のスキルの差による違いでは差はでなくなるらしかった。
ほんとだろうか・・・
とてもそうは思えなかった。
とんでもなく操作技術に差があるように思えたけれども、みんなはそこは気にしていなかった。
「正面から撃ち合っちゃいけなかったらどうするんですか?」
僕は聞き返した。
そう、正面から打ち合ってはいけなければどうしたらいいのか。
操作スキルを上げただけでは差がつかないとすれば、このゲームは何をすれば勝てるというのか
「いい質問だね」
部長の神城くんは微笑んだ
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