バカしかいない異世界で最強軍師になってみた

鉄道の人

〔アナザーストーリー〕とある少女の苦肉の策

side:天の声


とある閉鎖された、外界から隔離されている空間。


そこに1人少女がいた。


彼女は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながら作戦を練っていた。


執行の時は近い。

このままではいずれ処分されるだろう。


「皆を見捨てて、ここから逃げるわけにはなりませんし……」


彼女に守るべきものが無かったら、即ここから逃げ出していただろう。

しかし、現実はそう甘くない。


「あの人と、それに皆んなをどうにかして助けなければ……」


やんぬるかな、彼女は現実と言う名の巨壁にぶち当たる。


都合の良い様に2つのことを出来るような事は神でもないと無理だろう。



そして、彼女は迷いに迷って一つの策を考えが浮かぶ。


それは『特権』を持っている彼女だからこそ出来る作戦である。


しかし、その代償はとても大きく見えた。


「だけど……これしか!」


弱いながらも、決意を抱いた。

もう心は動かされない。


本当にそれでいいのか?とか


もう後戻り出来ないぜ?なんて


なんて揺らぎそうな思いはエネルギーにして。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして、次の日の夜、決行の時が来た。

彼女には少し不安があったが、満を持して彼女は牢の鍵を解く。


「まずは……透明化!」


ファーストフェイズ。


彼女はこの世から姿を隠す。(死んだ訳じゃないよ)


そして牢屋にいる皆にとある『祈り』を掛ける。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これでこの辺りは全員かな?」


そう言った時、近くに何者かの足音が聞こえる。


透明化しているが身の危険を痛感し、彼壁に張り付き、息を潜める。


「ここに暫くしたら『優秀作』がくるんだな?」

一人目、野太い男の声だ。


「ああ、久しぶりにかなりの自信作だよ。これなら『完全体』にも対抗できるかもな」

そして二人目。残念ながら『アイツ』だ。


(気づかないで……)


しかし、最悪の展開になってしまった。

「ところで……何かここらを彷徨く鼠がいるみたいだが?」


(!!)


身の危険を感じた彼女は自分の牢屋へと音も立てずにに転移した。


「危なかった……!」


『アイツ』には小細工が通じない。


その事を彼女は身を持って知っていた。


「恐らくバレたかな……あと何人か残っているのに!」


兎に角時間稼ぎをしなければならない。


彼女は様々な手を使って『アイツ』が来るのを防いだ。


「これで1日くらいは大丈夫かな……」


安全が確保した為、セカンドフェイズに移行する。


彼女は唯一の心残りである大切な人に今世の別れを告げに逢いに行った。


万が一のため、あちら側の動向を把握し、危険があれば、即ファイナルフェイズに移行する予定だったが、その必要は無かった。



帰り間際に彼の手を握りながら、

「いつかまた、こんな日が来たらいいね……」

と、『祈り』を込めた。


これでセカンドフェイズは問題なく終了した。


「ごめんね……さよなら……」と泣きながら彼女は繰り返し叫んでいた。


黄昏時の光が、痛いくらいに彼女に刺さる。


そして……ファイナルフェイズ。


「あの魔法の成功率は50%ほど……恨まないでね」


彼女は魔法を発動した。


一斉に、彼らは救われる手はずだ。


本当なら、上手くいっただろうか一人一人確認したかったが、彼女には既に、仲間の安否など確認できる暇は無かった。


ここまで来たのだから成功しているはず。ただ願うばかりだった。


そして、大きく息を吸い、覚悟を決めた。


「最後の仕上げ……。 『分離』」


直後、頭が割れるような痛みが彼女を襲う。


当たり前だ。精神と肉体を切り離し、精神も一部切り離すのだから。


「ぐっ……」

もう、後戻りはしなかった。


そして、彼女は2つに分離が成功した。


否、正確に言うと75%の精神体と、25%の精神と肉体に別れた。


そして『精神』は『肉体』を転移された。


「元気でいてくださいね……もう一つの私」

「じゃあね……もう一つの私」


よほど奇跡が起きない限り、彼女達はもう会えないだろう。


そして、精神も外へ転移して、旅立った。


彼女達は、あの忌ま忌ましい地獄から抜け出したのだ。








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