優しい背中
「ねぇ。重くないの?」
「あー、重い重い! やっとレギュラー取れたのに試合前に捻挫したバカは重たくて仕方ねーよ」
「うるさいっ。ハゲ!」
私は今、上記の理由で幼馴染みの彼に背負われている。
初めてレギュラーを取れた大会前の部活中だった。
「ハゲてねーよ!」
言い返す彼に私は彼のお父さんを思い出しながら言う。
「遺伝って怖いんだよ」
うるせーと呟きながら足を止めた彼はずり落ちて来た私を担ぎ直す。
さらにその両手には2人分の荷物。
「ねぇ。本当に降りるよ。歩けない程じゃないし。あんたは試合前なんだから」
無意識に「あんたは」何て嫌味な言い方をしてしまった自分に気づいて自己嫌悪。
目頭が熱くなる。
「嘘。重くなんかねーよ。毎日毎日必死で練習してやっとレギュラー取れて。それでも、必死で練習してたの見てたから」
私はもう堪えきれなくなって、瞳を閉じたまま樹の肩に寄り掛かった。
「だから、大丈夫だよ」
私は樹の肩で少しだけ泣いた。
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