カクヨムユーザージャパリパーク旅行記 ペロ2視点

ペロ2

第1話 旅立ちの集い ペロ2side

 ある日、一通の手紙が届いた。ジャパリパークからだ。送り主の名は継月。


 いや誰だよ、中国人? 韓国人? そして気づいた、これは芸名だ。

 おそらく売れない芸能人が魔が差して、こんな胡散臭い詐欺メールを送っているんだ。全く芸のないやつ。芸能界も落ちたものだ。



「もしかして当たった?」



 そういえば少し前に、ジャパリパークを好きなフレンズと一緒に回れるとかいう企画に応募した気がする。前の晩に飲みすぎて判断力が鈍り、何も疑わずに個人情報をかき込んで出したような出していないような。


 しかし俺の目の前には当選おめでとうございます的なメッセージと、専用のチケットがある。


 当たった。俺は当選した!



「うっっはああああああああああああああああ」



 いややべえよ、キタキツネってかき込んだけどあの子と一緒にパーク回れんの? それやばくね? やべえよキタキツネだよ?


 流石に踊った。三日三晩踊った。




 ______




 そして出発当日の朝。前日の夕方に集められてロッジに泊めさせられ、今遊園地に集まっている。他の当選者は既に集まっており、パートナーになったフレンズと一緒に話したり遊んだりしていた。

 俺は昨日にキタキツネと会えるのかと思いロッジのスタッフを問い詰めたが、昨日は一度もフレンズを見ることすら叶わなかった。


 そして今。キタキツネが目の前に。



「よ、よろしくぅ」

「う、うわあああああああああ、おわああああああああ!!」



 周りの人に見られた気がする。



「か、かわいいねキタキツネちゃん生きる芸術品だよ。やっぱり本物は違う。有形文化遺産が俺の前に立ってるよ。やばくね? 隠れてないで出ておいで。お兄さん怖くないから。保護しなきゃ。ね、保護しようそうしよう。……やっぱりかわいいね、何もかもが黄金比だよキタキツネちゃん。神様が本気で作ったんだろうね。まさに神の寵愛を一身に受けて輝いてるよ。ああ神様仏様ありがとうございます。私は今神の化身と相対させていただいております」


「ふふっ」



 笑ったッ……! 天使ッ……!


 ふわふわの耳をこっちに向けて微笑むキタキツネ。それに比べて俺の姿のなんと醜いことか。



「大丈夫? 元気ないの?」

「ごめんね、ちょっとはしゃぎすぎた」

「ボク何すればいいの? 飼育員さんからも何も言われてない」

「俺もわからないんだ。きっとあそこにいる継月っていう芸人が説明してくれるはずだよ」

「げーにん……じゃあ面白いこと言ってくれるのかな」

「だろうな。ほら、見てみろよきっと面白いことするぞ」



 継月という人をしばらく観察したが、別に奇抜な服装をしているわけでもなく、ミライさんとかなり真面目な顔をしてなにか話している。


 あれ? 芸人じゃない?



「ねえ、ボクげえむしたい」



 ゲームか。たしかにこのままじゃ退屈そうだ。


 だが一応ここは遊園地。ジェットコースターは怖がられそうだし、お化け屋敷もダメそうだ。いやワンチャン吊り橋効果で距離を縮めるか?


 うーん。



「あれ何?」

「あれは……コーヒーカップだな。あれに乗ってみるか」



 久しぶりのコーヒーカップ。親と一緒にハンドルを回しまくって吐瀉物を撒き散らしたのは良い思い出だ。


 俺はキタキツネと雑談しながらゆっくりとハンドルを回した。これ、女の子と一緒だと死ぬほど気を使う。

 しかしキタキツネと話す時間は、最高のひとときだった。


 そうして雑談のネタにも尽きた時、ミライさんの声がスピーカーから響いた。



「あーあー。マイクチェック、ワンツー。

 参加者の皆さーん!そろそろ出発のお時間ですので、ステージ前への集合をお願いしまーす!」


「それじゃ行こうか」

「うん」



キタキツネのふかふかの手袋を握った。今回くらいはホモサピエンスのオス代表として、リードしなければ。

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