偽装恋人 〜富豪の娘と庶民の息子の間にある溝は埋めがたいようです〜

あいうら獏人

プロローグ

 櫻小路澪さんは、高嶺の花だ。

 顔が可愛く、清楚な雰囲気で、頭もいい。

 いわゆるクラスカーストのトップに君臨する女王様である。

 その性格は女王様のそれとは言いがたいけど。

 女王様ではなくて、お嬢様だという噂もある。

 さらに、人当たりがよく、僕のような人付き合いが苦手な人間でも分け隔てなく接してくれるとなれば、人気が高いのも当然のこと。

 ここ八重樫学園高等部の男子学生のうち、半分が彼女を好きだという噂も、あながち嘘だとは言い切れない。


 僕のような人間にも優しいと言ったが、僕はあまり彼女と話したことはない。

 恐れ多いのだ。

 彼女のような完璧人間に、数学しか取り柄がないような僕が近づくなんて。

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