第44話 _空

昔、好きな娘の家が神社の近くにあった


新年


夏祭り


秋祭り


欠かさず通った


「ねぇ いかないの」


「今 幾夜」


いくつもの夜 彼女の家に通った


お参りするのを口実に




ある大晦日


母さんが言ってくれなくなった


「なにくそ おとこなら はをくいしばれ」


母はそう言って出ていった


くそらに向かって叫ぶ


輝くそらに向かって手を差し伸ばす


煌くそらに願いを込める


またた苦空に 一筋の彗星が涙のように流れる


「九空に向かって叫ぶ」


9つの方向に振回転で超早口で叫ぶ


「クソラ」


「くそ歌」


「クッ 粗詩」


君の宿題の原稿用紙は 空らんだらけ

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