第三部第2話「白日と青月」

 ウルシラ地方へ針路を採っている”終末の巨人”に対抗する手段を求めて、”白金の戦乙女”クリスと”星月巡り”一行はアヴァルフ妖精連邦を訪れた。


 アヴァルフ妖精連邦を構成するうち、メリアのコミュニティが支配する三国(アンダシュール、ベスラシア、ロザス)は聖戦士のひとり”弓使い”ダリオンと彼が使っていた神器”翠星の弓キルキナエ”を統治のシンボルとして維持されている。


 ”星月巡り”のひとり、パルフェタ=ムールの本名はブルームーン=ロザス。ロザス王国の廃嫡された元王女であり、”弓使い"ダリオンの末裔であった。


 妖精連邦の中心地、アヴァルフでは祝祭が行われていた。連邦の象徴的イベントである、妖精の女王の警護を務める”女王の近衛”の交代の時期であり、新たな近衛が就任するタイミングのようだ。


“終末の巨人”の噂はある程度広まってこそいたが、この国家に多いエルフや長命種のメリアはのんびりしており、さほどの危機感を持っていない。「遠くの方に恐ろしい化け物が出たらしい」「妖精の女王の加護があればなんとかなる」くらいの認識でいるらしい。


 人通りの多い広場では、神ではなく聖戦士としてのダリオンのサーガが謳われていた。


 短命種メリアの姿を借りて地上に降臨したダリオンは、妖精の女王の祝福を受け、妖精魔法と正確無比な弓の腕をもって魔神王と戦い、最後には奈落の壁の向こう側へと消えていった。

 その後、ダリオンの種子を継ぐ者達は妖精の女王の相談役となり、”翠星の弓”キルキナエをシンボルとして国家を形成するようになった。絶対数の少ないメリアという種族の、大陸唯一の大規模な種族コミュニティとなったのだ。


 良く見れば、サーガを謳っているのは、アルショニア女王国における偽の魔女討伐事件で接触してきた、吟遊詩人のレヴィンであった。


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「やあ皆さん、久しぶりだね!僕の詩を聴いてくれてありがとう」

「これから妖精の女王を護衛する近衛の交代があるみたいだね。相談役のメリア三国の代表としてロザスのレイソル国王代理も来ているはずだ」

「ロザス王国って、もう20年以上国王が不在でレイソルが"国王代理"なんだよね。さすがメリア長命種、のんびりしているよなぁ」

「まあ、彼はメリアの王のシンボルたるキルキナエを使えないという噂もあるから…」

「どうせ使えないのなら、巨人を止めるために貸してもらえないものなのかな?」

 ―レヴィン=プラデッシュ

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 そして一行は思い出す。タージ脱出時に見た夢で、キルヒアと呼ばれた者の傍らに控えていた道化服の男と、レヴィンは瓜二つだ。

 夢の中ではあるが、彼が「君たちは神器を、相応しい者から奪ってでも回収しなければならない。たとえそれが、どんな怒りと悲しみを生もうとも」と宣っていたのが、心の底にこびりつく。


 だがそんなことを面と向かって問いただすわけにもいかない。国外退去扱いのはずのパルフェタを連れてあまり注目されるわけにもいかず、一行は宿へと向かった。目端の利くスカウトのルーヴは既に尾行されているのを感じながら。


 案の定、深夜に人目を避けるようなタイミングで、来客の訪問を受けることになった。そのエルフの密偵は、かつて妖精の女王の近衛を務めた剣士でもあった。


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「私は”三星剣”のアスカと申します。ウル=ヴァ=ドゥール王国国王、セドリック様の配下です」

「簡潔に申し上げます。あなた方に害意はありませんが、確認したいことがございます。日中お見掛け致しましたが、そちらにおわす方はロザス王国のブルームーン王女殿下では……」

「え、パルフェタさんがですか?全然違いますよ!断言しますが人違いです!」

「…ルーヴ、この人には隠しても無駄だと思うわ。以前は妖精の女王の近衛を何度も務めた腕利きさんだから。”三星剣”のアスカさんでしたか、こうしてお話しするのは初めてですね」

「我が主君が面会を求めておられます。秘密裏に、会談の機会を頂けないでしょうか」

 ―セッション中、アスカ、ルーヴ、パルフェタの会話より

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“星月巡り”一行はアスカの申し出に同意し、”笑顔王”セドリック=モンタンの謁見を受ける。


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「物見からヴァイスシティ壊滅の報告を聞いているよ。そして、その巨人がいまこのウルシラ地方に向かっていることも。単純なルートで言えば、もっとも危ないのはセブレイ森林共和国、ついでスフバール聖鉄鎖公国。このアヴァルフ妖精連邦は後回しという意味で多少マシな立地だが…」

「エルフの人たちは内にこもりがちだし、メリアの皆さんはのんびりするか、気にしていない。色々と気をもんでいるのは人間の多い我が王国だけというさね」

「ふーむ…聖戦士の伝説は、この地方では比較的濃く残っている。実際にキルキナエはメリアの皆さんのシンボルだしね」

「キルキナエがあれば巨人を止められる可能性がある、か。楽観的だとは思うが、英雄の見込みとはしばしばそう見えるものなのかもしれないな」

「僕に何か役割があれば引き受けてもいいが…ブルームーン王女、君がロザス王国を放逐されたとき、僕はまだ子供だったので事情を良く知らない。キルキナエは本来、君の兄・レイソル=ロザス国王代理が持つべきもののはずだ。だが、何故20年以上彼は”国王代理”のままなのか、そしてキルキナエを使えるという君が何故国を追われたのか、把握しておきたい」

“笑顔王”セドリック=モンタン

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 パルフェタ=ムールは事情を説明する。


 魔神王との最後の戦いで聖戦士としての"弓使い"ダリオンは死亡したが、少数種族たるメリアの王国を成立させることは、彼や周囲の人々の悲願であった。

 短命種メリアのダリオンの種子を継ぐ者たちは回収に成功した神器"翠星の弓"キルキナエをシンボルとして三国を建国し、アヴァルフ妖精連邦への編入を経て悲願を達成したのである。

 "翠星の弓"キルキナエは前任者からの承認を以て次代へ継承し、キルキナエの所有者は妖精連邦の盟主の相談役という地位を得て、国家として安定していった。

 しかし、短命種メリアの寿命はあまりに短い。継承の回数が多すぎると、継承に失敗するリスクが高まると感じた長命種メリアの派閥は、キルキナエを自分たちが管理するべきだと申し入れた。

 短命種メリアの派閥は当初こそ渋っていたものの、300年前の《大破局》による混乱の中で考えを変えてキルキナエを長命種メリアに預けることに同意し、レイソルの先代国王であるクラウディ=ロザス前国王がキルキナエを継承し、混乱期を乗り切った。


 これによってメリア三国の国家運営は安定し、平和で穏やかな時代となった。

 だが、クラウディ国王の直系の子息、レイソル王太子がキルキナエを扱えなかったことが火種になる。

 継承が出来ない理由は諸説あったが、レイソル王太子がメリアにしては酷薄で虚栄心が強く、国王や神器にその人格を認められていないという見方が大勢を占めていた。

 短命種メリアの派閥はキルキナエを再び取り戻すことを画策するが、政治的な働きかけをしている間に該当世代が寿命を迎えてしまい、いつも中途半端に終わってしまっていた。


 クラウディ=ロザス国王は穏やかな名君だったために表向きメリア達は争い合うこともなく、200年以上が経過する。クラウディ国王が寿命を迎えた時にどうするのか、という問題を棚上げしたまま。


 そして、短命種メリアの一部派閥はこの問題を解決するために、聖戦士ダリオンの種子とクラウディ国王の種子をかけ合わせる、いわば品種改良とも言えるような方法を編み出して実行した。キルキナエの継承が可能で短命種と長命種メリアの両方の特性を持ちうる者として、ブルームーン=ロザス王女は生まれることになった。


 彼女は成人すると”翠星の弓”キルキナエを手に取り、神器が自身に応えるのを確認した。彼女自身は弓術に興味がさほどなかったためその力をいたずらに振るうことはなかったが、この事実は国内に大きな議論を呼ぶことになった。


 当然、これによって最も不都合を被るのはレイソル王太子であった。特にキルキナエを使えないという事実は彼のコンプレックスを激しく刺激し、妹ともいえるブルームーンには敵意と拒絶を以て接していた。


 そして、前国王のクラウディが寿命で死亡したタイミングでブルームーン王女に無実の罪を被せて追放、自らはキルキナエを扱えないまま”国王代理”となった。王女はパルフェタと名前を変え、当てのない放浪を繰り返す中で冒険者となり、今に至る。


 説明を受け納得したセドリック王は、新たな女王の近衛を祝う祝賀会に、自分たちと同行の上で会場入りすることを許した。パルフェタは過去の経緯から直接レイソル国王代理と対面することを控えようとしたが、


「過去に何があろうとも、兄妹は仲良くしなきゃダメです!」


 というルーヴの説得に折れる形で共に祝賀会に赴く。


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 "女王の近衛"の就任を祝う祝賀会のセレモニーでは、14年に一度メリア三国の代表が”翠星の弓”キルキナエを利用した演武を行うのが慣例であった。


 "女王の近衛"を担うエルフの7氏族が任期1年で持ち回り、1周が終われば人間が、もう1周が終わればメリアがエルフの氏族を讃えるのである。そして、今年はメリアがエルフ達を祝福する節目であった。


 長い黒髪に女性と見紛う美丈夫、パルフェタの兄・レイソル=ロザス"国王代理"が衆目の前に進み出て、演武を披露する。しかしその手に握られている朽ちた弓は、以前見た聖戦士の武器のようには真の姿を現さない。


 彼の弓術の腕前そのものは見事で、一矢違わぬ的中を披露した。だが、会場内の空気は今一つ盛り上がらない。皆、彼の弓術の腕前に興味はなく、キルキナエを扱えない失望にこそ気が行くのだ。パルフェタは、彼が虚栄心の強い性格であることを知っている。彼が人に見えぬところで表情を歪めているのが感じられた。


「地に付す日々の鍛錬ではなく、天より与えられし資のみを必要とされるは、王の宿命ですか…」

 クリスが、小さくつぶやいた。


 ―セッション内描写より

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 祝賀会も終盤になった頃、ちょっとした事故からパルフェタ=ブルームーンの正体が露見してしまう。セドリック王の仲介でパルフェタとレイソルは二十数年ぶりの再会を果たすも、レイソルは憎悪に表情を歪め、パルフェタを罪人として糾弾した。


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「何ゆえのこのこと舞い戻ってきた。故郷を裏切り、連邦を捨てたこの地にお前の居場所などないのだ!」

「私の言葉は届かないでしょう。ですが、どうかこの者たちの話に耳を傾けるよう、どうか…!」

 ―レイソルとパルフェタの会話より

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 オリヴィエ、クリスが”終末の巨人”に対抗するために”翠星の弓”キルキナエの貸与を願い出る。レイソルは未だ巨人の脅威が共有できない連邦の現状を確かに問題だとしつつも、キルキナエという国家の象徴を軽々に他国に渡すわけにはいかないと拒絶する。ルーヴの、兄妹の不仲を諫める説得も一笑に付した。

 無論、キルキナエを扱うことが出来るパルフェタに貸し与えるなど論外で、レイソルはそれを国家分裂のきっかけとなると考えていた。


 しばらく押し問答が続くが、元”女王の近衛”としての権威を持つ”三星剣”アスカ=スリースターズが仲裁する。レイソルは15年前、メリアがエルフを祝福する役目の年に嘘をついてキルキナエを持参しなかったことが諸国で問題とされていた。そして今なおキルキナエの真の姿を解放出来ていないとして、アヴァルフにおいて真の勇者であることを示す試練を”星月巡り”一行と共に受けるよう要請した。


 課される”大沼の試練”とは、新任の”女王の近衛”がキルキナエを預かり、”試練の森”と呼ばれるアヴァルフ奥地の大森林の奥に弓を安置し、それを後から回収するというものだ。レイソルは抗議するが、この国で”女王の近衛”の意見は非常に強く、キルキナエを持たず女王の相談役にもなれない、”国王代理”でしかないレイソルは口をつぐむ他なかった。



“大沼の試練”によりアヴァルフ奥地の大森林へ赴く”星月巡り”一行。レイソル=ロザスは案の定彼らとの協力を拒み、一人で大沼の奥地へと向かった。彼は優れた野伏レンジャーでもあり、単純な行軍速度では彼に追いつけない。



 レイソルと敵対し、キルキナエを奪う選択肢も彼らにはあった。だが、”星月巡り”一行は話し合いの末、レイソルとの対決は避ける方針を選ぶ。先行するレイソルに出来る限り追いつこうと、大森林の冒険に挑んでいく。



 数々の試練を潜り抜け、やがて”翠星の弓”キルキナエが安置されているとされる沼の畔の祠に辿り着いた。レイソルの姿は見えない。


 祠には朽ちた弓が安置されており、パルフェタはそれを手に取ろうとするが、直前にトラップが仕掛けられており、引っ掛かった彼女は行動の自由が封じられる。


 先に到着しトラップを設置したうえで迷彩にまぎれるレイソルより最後通牒を受けるパルフェタ。彼が構える弓の鏃は妹に向けられている。


 パルフェタがキルキナエを扱えるにも関わらず、弓術にも政治にも興味を示さなかったことは、レイソルにとっては責任の放棄と映っていた。努力を重ねても、シンボルたる武具を扱えないことの一点で周囲が彼を真の指導者と認めない中、治国に興味がない者が統治のシンボルを容易く扱える。そのコンプレックスは彼を歪ませるのに充分な重圧であった。


 しかし一方で、パルフェタはロザスの国王に相応しいのは幼いころから為政者になるべく努力を重ねてきた兄のレイソルだとして、聖戦士の神器が権力の継承の前提となっている歪みこそがこの争いの原因だと訴えた。自分は王位を望まず、"翠星の弓"キルキナエは世界の危機から人々を守るために必要なのだと主張する。


 その時、沼を割って巨大な怪物、”大沼のヌシ”が姿を現す。迫りくる脅威を前に、パルフェタはレイソルの静止を振り切り、祠に安置されていた弓を手に取った。


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「人を守る優しき心は我が決意の手に。汝は”翠星の弓キルキナエ”。世界に光明を齎すものなり!」

 ―パルフェタ=ムール

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 朽ちた弓は輝きを取り戻し、美しい神器へとその姿を変えた。かつて、"守護の斧"スワンチカや"曙光の槌"クラウストルムがそうであったように。


 パルフェタはレイソルに背を晒し、”大沼のヌシ”と対峙する。


 レイソル=ロザスは番えた矢を放ち、


 その鏃は、ヌシを貫いた。


 ====ボス戦闘====


 スワンプウォーム


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 大沼のヌシを退け、試練の森から無事帰還した一行。その名誉は、レイソルとブルームーン、2人のものとされた。そして、パルフェタは真の姿を取り戻したキルキナエを連邦諸侯に見せた上で、その場でレイソルに臣下の礼をとった。


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「私は翠星を受け継ぐ陰月の姫キルキナエを持つブルームーン。我らが主、メリアを導く”白日の王”レイソル=ロザスに従う影として、妖精連邦の多くの勇士を代表して世界の危機たる巨人に対峙し、必ずや”翠星の弓”キルキナエと共に平和と安寧を持ち帰って参ります」

 ―パルフェタ=ブルームーン=ロザス

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“白日の王”レイソル=ロザスはこれを認め、メリア三国の王となることを宣言した上でキルキナエを妹に貸し与え、ウルシラ地方を蹂躙する巨人との戦いに臨ませるとした。


“終末の巨人”はウルシラ地方への歩みを止めず、このままであればスフバール聖鉄鎖公国へと到達する。"星月巡り"一行は二つの神器を携え、巨人との対決を目指すことになる。



次回へ続く。



【今回の登場人物】

 セッション参加キャラクター

 パルフェタ=ムール(フェアリーテイマー9)

 オリヴィエ(フェンサー9)

 ルーヴ=デルタ=ヴォランティス(プリースト9)



 レヴィン=プラデッシュ  

 種族:人間 性別:男性 年齢:不詳

 第二部第3話「魔女追慕」以来の登場。奔放かつ爛漫な吟遊詩人であり、今回においては"女王の近衛"交代期のアヴァルフ妖精連邦首都・アヴァルフに現れ、”星月巡り”一行に助言を行った。

 タージ脱出直後に共通の夢として見た、神々と思しき面々の議論において、賢神キルヒアに付き従っていた道化服の男の姿と同一のため、彼もまた何らかの神の化身の可能性があるが、現状ではとぼけて答えようとしていない。



“白金の戦乙女”クリスティーナ=コーサル 

 種族:人間 性別:女性 年齢:16歳

 愛称クリス。第三部第1話「楽園の東より」から引き続き登場。聖戦士の神器”曙光の槌クラウストルム”の継承者。世界を蹂躙する”終末の巨人”を止めるため、また自分を救ってくれた”星月巡り”への恩返しのために彼らに同行し、聖戦士の神器探索の手助けを行っている。

 かつて世界を救った英雄の末裔として、神器の継承者として、正しき戦いのため身をささげる覚悟であったが、レイソルとパルフェタの根の深い争いを目の当たりとし、聖戦士たちが遺した神器の存在意義に疑問を感じ始めている。



“笑顔王”セドリック=モンタン (※公式NPC) 

 種族:人間 性別:男性 年齢:36歳


 アヴァルフ妖精連邦を構成するうち、唯一の人間が中心の国家であるウル=ヴァ=ドゥール王国の現国王。外界に興味が薄くなりがちなエルフ、享楽的なメリア短命種、鷹揚なメリア長命種が多いアヴァルフの中で、唯一”終末の巨人”の危険度を正しく理解する現実的な政治家。

 巨人を止めるために神器が必要、というクリスに対して笑顔で協力する一方、

 あれほどの脅威が聖戦士の神器で阻止出来るとは楽観的に過ぎるという懸念も示していた。

 レイソル=ロザスの国王就任の宣言を支持するといち早く表明し、間接的にパルフェタらが"翠星の弓"キルキナエを持ち出して巨人と戦う決意のサポートをした。



 "三星剣"アスカ=スリースターズ

 種族:エルフ 性別:女性 年齢:125歳


 ウル=ヴァ=ドゥール王国のセドリック国王に仕える密偵。かつてはウルシラ地方でも屈指の冒険者として名を馳せ、その後はケイリオ氏族の代表として女王の近衛"を通算で8度務めており、ウル=ヴァ=ドゥール王国に登用された後もアヴァルフ妖精連邦の中で指折りの勇者として一定の発言力を保持する優秀な人物。

 素人の変装で入国していたパルフェタをすぐに捕捉し、事情を察して主君のセドリック王に繋ぐ。セレモニーにおいては険悪に対面したレイソルとパルフェタを仲裁し、オリヴィエの提案を受けて"大沼の試練"を2人に与えた。



“白日の王”レイソル=ロザス 

 種族:メリア長命種 性別:男性 年齢:144歳


 アヴァルフ妖精連邦を構成するメリアの国家の1つ、ロザス王国の国王代理。長い黒髪に女性と見紛う美丈夫。”翠星の弓”キルキナエの継承者であった前ロザス国王クラウディ=ロザスの直系であったが、前国王は彼を認めないまま逝去し、キルキナエを受け継げないまま国王代理としてメリア3王国のリーダーに臨まざるを得なくなった。

 鷹揚な者が多いメリア長命種にしては珍しく、プライドが高く酷薄な性格をしており、一個人として徳の高い人格者とは言えない人物であったことが、前国王がキルキナエを継がせなかった理由なのかもしれない。

 コンプレックスの塊で他者に攻撃的だが、一方で反骨心を元にした努力家でもあり、為政者としては内政手腕に知見が深く、武人としても弓を扱う技術は達人の域。

 だがキルキナエを扱えぬ彼を認めない者は連邦内にも多く権力基盤は脆弱であり、非常に強いストレスと劣等感を抱いていた。またキルキナエを継ぎうる妹・ブルームーンが政治に興味を示さなかったことは責任の放棄と映り、妹とも呼べる彼女に対し憎しみをぶつけるようになり、ついには無実の罪を被せて国外へと追放する。

 その後も神器を扱えない劣等感を抱えながら約20年もの間、"国王代理"として政治と祭祀に携わっていたが、"女王の近衛"就任のセレモニーで再会した妹に対して国内を割りかねない不安要素と激しく糾弾する。

 それでも"大沼の試練"で彼の放った矢はパルフェタではなく、試練の障害となるスワンプウォームを貫いた。彼もまた、神器を巡る歪んだ世界の犠牲者であり、それを乗り越えようともがく、か弱き人族なのだ。



【次回予告】

 地響きと共にスフバール聖鉄鎖公国に迫る”終末の巨人”。


 暴走するオーブレイの遺産を、一縷の望みと共に阻止せんと対峙する神器の継承者たち。


 そのような極限の状況でも人間は互いに争い、信じあえず、傷付け合う。


 かつて英雄と共に在りながら人を見捨てまどろむ幻獣の王よ


 英雄たりえながらその心を殺し、死の雨を振り撒く流星の騎士よ


 奈落を貫き希望導く、星天の神ハルーラの名のもとに


 冷たき雨降るその世界に、ひとすじの光と、抗う心を!


 ソード・ワールドRPG第三部第3話「夜明け裂く流星の如く」


 冒険者たちよ、剣の加護は汝と共に。
















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