第137話 魔王アルカと執事のバトラ。

 ……しかしこれからどうするか。


 アルカ様が表面に出ることは……、


 ……うむ。出来んな。さっきから何度も試しているのだがな。それに……。


 それに?


 ……このままだと魔法を使うこともどうやら出来ん。何一つ動かすことも出来ぬ。


 ああ、どうしよう。


 あの勇者の事もある。このままじゃ……。


 そんな事を考えて居た時。

 またガチャッと扉が開く音。


 カツカツと靴音鳴らして近づいてくるナイスミドルの紳士。


「お加減はいかがでしょうか、アルカ様」


 ああ、ゾクゾクっと来るこの声。ダメ。どうにかなっちゃいそう。


 ……バトラが好みなのか? ロイド少年。


 ううん! 違います! 心の中でかぶりを振ってそう答えるボク。


「どうかなさいましたので?」


 バトラさん? がそう、心配そうに覗き込む。もうダメ。ドキドキがおさまらない……。


 《バトラよ、今あたしは訳あって喋ることが出来ん。このまま念話で語りかけるが聞こえるか?》


 ちょっと目を見張るバトラさん。驚いている。


「聞こえますアルカ様。一体どうなさったのですか? 今のアルカ様の見た目は少女のような佇まいになってしまっておりますよ?」


 《ああ。そうだろうな。今表に出ているのはあたしじゃないからな。まあいい。順番に話すが、あの勇者はどうした? 小癪だが奴は強かったからな。今までの様にポイと返すわけにもいかなかったろう?》


 ……今までもたまーに異世界からいきなりやってきて魔王退治だとかいう変なのはいたんだがな。そういう類には丁重にお相手して差し上げて、他の世界にポイしてたのさ。


 なるほど。


「ええ。何故か一旦撤退してくれたのでその隙にアンカーを探し出して切断しておきました。あやつがどういう方法でこちらに参ったかは分かりませんが、これで時間は稼げるか、と」


 そっか。増援を呼んでとか言ってたっけ、あのまま一旦帰ったのかな?


 ……そういうことだろうな。


 《自分の世界に戻り増援を呼んで、か。面倒だな》


「まあ、おそらくですが、アンカーが設置されていたことから考えてもあちらにも任意の転移技術は無いか、または困難なのだと思われます」


 《楽観的だな》


「大魔王様にも報告が必要でしょう。来年には100年に一度のトーナメントも開催されますし、今年はその前哨戦として色々とイベントが目白押しです。邪魔はされたくありませんね」


 《トーナメントか。そちらの準備もしなくては、だな》


 ……ロイド少年。お前にも頑張って貰わねばな。


 えーー? 何を?


 ……お前には当分あたしを演って貰わなきゃだから。

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