第120話 眠り姫。
長い、真白な廊下を案内されて歩いているあたしたち。
レックスギルド長からの紹介のお陰で王宮の門は簡単に通して貰えたんだけど、白髪の侍従さんが通してくれた廊下がとにかく長い。
——これは、なんだろね、時間稼ぎ?
——うん。なんだか観察されてる気がするよね?
あたしはデュークとそんな会話を念話でしつつ侍従さんの後ろをついて行った。
ぐるぐるとあっち曲がりこっち曲がり階段を上がったり降りたり。
途中何度かゲートみたいなのも潜ったけど、あれは魔力の質とか量とかも測ってる様子。
あたしたちのこといろいろ調べてるんだろうなってのはわかる。けどね?
1キロくらい歩いただろうか、
「こちらでございます」
そう案内された部屋。寝室? 中に入ると護衛騎士さんが数人。大きな天蓋付きの真っ赤なベッドに誰か寝てる?
ああ、あそこに寝てるのが魔王様かな。
白銀に煌く髪。猫っぽい耳。かわいい寝顔が見えた。
「どうか。我らの魔王様を助けてください」
侍従さんが頭を下げる。
「ええ。あたしたちにできることなら」
そう笑顔で返すあたし。
緊張していたのであろう護衛騎士さんたち、ちょっと肩の力が抜けた? オーラの色が変わった。恐怖、敵意、から、安堵の色に。
「失礼だとは思いましたがあなた方の魔力量を測らせて頂いておりました。結局ここに至るまで計測不能でしたが……。ただ、あなた方がその気になればこの街など吹き飛ばしてしまえるのだろう力は感じます。ですから……。我々はそのお力にお縋りする道を選びました」
侍従さん、あたしの手を取って膝をついた。
こちらを見上げるように。
「どうか、どうか、あなた方が真皇の御使いであると信じてお願いいたします。試すような真似をした事はお詫びします。ですが、どうか、お願いします。我らの魔王様を、どうかお助けください……」
綺麗な銀色の髪がほおにかかる。
寝息が可愛らしい、そんな少女だった。
——まるで眠り姫。ね。
——眠り続けるお姫様? なんだか昔話にそんなのあったっけ。
——そうね。そんな題材の絵本、あったかもね。
あたしたちの世界にもね。
「傷は全て癒したのです」
と、侍従さん。
「しかし、目を覚まして頂けなくて……」
と。
こうして見ていてもただただ寝ているだけにしか見えない魔王キャッツさま。
でも。
もう半月、目を覚まさないのだというのだ。
——うーん、これは直接インナースペースを覗いてみるしかないよね?
——うん。まあ姉さんなら出来るんだよねそういうのも。ほんとびっくりだけど。
——ちょっとデューク。もう。あんたにも手伝ってもらうからね?
——了解。俺にできることならなんでもするよ。
じゃぁ。ちょっと頑張って見ますか。ね。
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