第86話 復活のラギレス。

「探したよ。ラギレス。マシンメア・ハーツの世界に居ると思っていたのにな。まさかこんなパラレル世界に来ているとは」


 え?


 何?


 ラギレス……?


 えーー?



「全く手間をかけさせる。これならアリシアでいる間に手にかけておけばよかったよ」


 って!


「どういうことよ!」


「はっ。おもいだせないか? 歯痒いな。お前はいつもそうだ。自分だけそうして世界に溶け込んでしまおうとする。俺はお前のことを忘れた事はないぞ?」


 なにを。


 そう言いかけて止まる。


 隣に居るはずのジルを見て。そして周囲を見渡したあたし。


 世界はいつのまにか色を無くしていた。


 目の前の炎も、そして、ジルも。


 全てが灰色の世界に塗りつぶされて。




 あたしはいつのまにかラギの身体を離れ、そして。


 思い出していた。


 あたしはラギレス。


 そう。


 大賢者と呼ばれたラギレス!


 って。今は猫のミーシャのはずなんだけどね?


「あなた、誰? 誰なの⁉︎」


 あたしは声にならない声でそう叫ぶ。


 声は届かなくてもいい。たぶん心が通じている。



「俺は、魔。魔・ラスレイズ。お前のカタワレ。そして、お前を飲み込んで真の神になるのだ!」



 そういうと触手のような黒い手がこちらに伸びてきた。


 気持ち悪い!


 あたしは身体の周囲に防御膜を張り、なんとか直接絡めとられるのは防ぐ!



「どうして?」


「今更聞くのか。わかっているのだろう? 此処が何処だか。お前が何なのか。そして俺がお前を欲しがるわけも!」



 わかんないよ!


 そんなの!


「わかんないよ‼︎」


 あたしは風のアウラの上位ギア。魔・ギア《エンジェルウイング》アウラ・フェザーを起動。


 そして。


 あたしから伸びる天使の羽は、ラスレイズの黒い触手を切り裂いた。



 そして、そのまま。


 世界の深淵。以前辿り着いたそこ。事象の果てに向けて跳んだ。

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