第77話 恐怖。

 白く、唯々白く、色のないそんな場所。


 だからといって明るいとかそういうわけでもない。


 とにかく白いのだ。


 インナースペースに潜っているときの白さともまたちょっと違う。


 あちらは白と言っても若干色がうねっている様なきもする気持ちのいい白さ。


 今のあたしの周りにあるのは、漆黒の反対。漆喰のような。でも、とにかく白い。黄ばみも何もない。色のない白さ。




 これは夢かな。


 久々にあたし、夢を見ているのかな?


 そんな風にも思う。



 ここの所ずっと夢をみなかった。


 っていうか夢を見るのは身体があってはじめて可能なのかも? そうも思ってたのに。



 夢の中でこれが夢だと思っているのに、なんだかおかしい。


 ひょっといて、夢、じゃ、ない?








 見つけた 

 

 みつけた


   みつけた


     見つけた



 ラギ


  ラギ


    ラギ



        ラギ




           やっと、みつけた





 あたしの事をラギと呼ぶ、そんな不思議な声。



 頭の中で響き渡っている、そんな、気持ちの悪い声。




 嫌だ。



   怖い。






 ——あなた、だれ?



 あたしはそう思念する。



 伝わってくるのは音では無い声。


 だから。




 わたしはラス


    わたしはラス


       わたしはラス



          わたしはラス



 ラスレイズ


    ラスレイズ



        ラスレイズ




            ラスレイズ





 ラスレイズ?


 魔道王国の名前?




 やっとみつけたよラギ



     やっとみつけたよラギ



           やっと、だ、


               やっと……



 もう逃がさない……


         もう逃がさない……



                   もう逃がさない……



                               もう逃がさない……





 怖い、

 怖い、


 怖い!



 あたしはラギレスとなってから忘れていた、恐怖って感情に飲まれていた。


 とにかく怖い。


 嫌だ。



 ここから離れたい!




 魔法を使おうと思ってもなにも起こらない。



 それが恐怖を加速させた。






 もう、だめ。





 あたしは振り返り、走った。


 ここがどこなのかもわからないのに。


 とにかくここから離れよう。




 それだけしか考えられなかった。

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