幻夜

苔田 カエル

第壱部 捕囚

1頁

遠い国でのおはなしです


赤々とした太陽が名のしく沈もうとしている

まだ冬支度じたくが済んでいないというのに

ずしずしと 寒さが押し寄せる

そうなれば 誰も止められやしない


群青色ぐんじょういろの雲が空に広がってゆく

まだ 薄っすらと残る赤を飲み込もうとして

さめざめと 色は失せていく

そうなれば誰も止められやしない


季節は やがて秋から冬へ

一日は やがて日なかから夜へ

過ごしやすい時間は過ぎてしまった

それは 誰も止められやしない


それでもいいさ寒くなったら火を起こそう

暗くなったら 明かりをともそう

家族みんなで 食卓囲もう

そして柔らかな寝床に身を沈めよう


どうして寂しいことがあろうか

家族みんなが身を寄せてあって

どうして悲しいことがあろうか

家族みんなが 寝息をたてて

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