第130話『イン ザ ストマック』
かの世界この世界:130
『イン ザ ストマック』語り手:テル
蠕動運動を起こした美容院は数秒で巨大な口になった!
二十畳ほどあった床は舌に変わって、我々はロレロレ転がされて口の向こうの食道の方へ呑み込まれてしまった。
ダスターシュートのような食道を抜けると遊園地のバルーンハウスのような所に墜ちた。
フワフワしているところはバルーンハウスだが、ネバネバしている。
「せっかくシャンプーしたところなのにい!」
「姫、ここは巨大なクリーチャーの胃の中と思われます」
「胃の中!?」
「きっと、灌木林の中で開けた口を美容院に偽装して誘い込んだのでしょう、うかつでした」
「シャンプーは、シャンプーリペアーと言って、瞬間でシャンプーとトリートメントをするだけのようだぞ」
フォルダーを確認すると効能書きのテキストが出てきた。我々の不注意か、そういう魔法が掛かっていたのか、さっきまでは認識できなかったのだ。
「このままでは胃酸に溶かされます……溶解防止のアイテムは……」
「あった、消化防止リングだ」
裁縫に使う指ぬきのようなものだ、各自フォルダーから出して指に装着する。お茶を口に含んだ時のような爽やかさ、お茶のそれと違うのは、その爽やかさを全身をで感じることだ。しかし……護ってくれるのは生身の体だけのようだ。
「服が溶けだしてきたぞ!」
「ということは、裸にされて化け物の体内を巡って…………出されるわけか?」
「消化の早さから見て……おそらく四時間後ぐらいには出られるでしょう」
我々が収まったことで刺激されたのだろう、巨大な胃袋が消化活動を活発にしてきた。胃壁が収縮してもみくちゃにされる。そのたびに胃壁に擦られ、他の者とぶつかって服がほぐれて溶けていく。
「こんなみっともないことが四時間も続くのか!」
あまりの気持ち悪さにブリュンヒルデは自慢のツィンテールをお下げほどの長さに縮こまらせた。
「腸の方へ行ったら、こいつが先に食ったものと一緒になるのではないか?」
先の事を予想して、我ながら不吉な想像をしてしまった。
「先に食ったモノって……?」
「それは、子どもが大好きな仮名文字三字で表現されるものでしょう」
タングリスが無表情に言う。
「それって、ウ〇コのことか!?」
「死ぬよりはましでしょう」
「死んだ方がましだあ!」
「胃から十二指腸にいくには、まだ間があるだろう、グチってないで考えよう」
「なるべくなら、服が溶け切る前に考えが浮かぶといいがな」
三人の衣服はあらかた溶かされて、胃液を含んで半透明になった下着を残すのみとなっている。
「ところで、ポチの姿が見えません」
「あいつ小さいから、もう溶かされてしまったのか?」
「痕跡さえありません」
「不憫なやつだ……」
「いや、痕跡もないということは、胃の中には居ないのではないか?」
「そうか……とすると?」
その時、胃がギュっと収縮して、三人は満員電車の中に居るようになった。
ムギュ~~
「タングリス、寄るなあ!」
「仕方ありません、こいつの生理現象でしょう……」
次の瞬間、巨大なダムが決壊したような衝撃に襲われた!
「「「ウワーーー!!」」」
闇と光と胃液がグルングルンと交錯し、我々は上下の感覚を失った……。
☆ ステータス
HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ)
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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