第89話『ポチの退屈・1』


かの世界この世界:89


『ポチの退屈・1』   






 ノルデンハーフェンへ北上する街道は曲がりくねっている。




 そもそもが自然に発展した地域だからだ。


 かつては、街道沿いにいくつもの町や村や耕作地が広がっていたのだが、無残に瓦礫の山か焼け野原になり果てている。


 瓦礫や焼け野原なので、視界を遮るものに乏しく、曲がりくねった道の様子がよく分かる。


 平和で盛んだったころは、カーブを曲がるごとに変化する街の様子や景色が旅の無聊を慰めてくれたものだが、こうも荒れた景色が見通せては辛いものがある。


「タングリス、わたしが幽囚の身であった間に荒れ果てたものだな。堕天使の筆頭とは言え、この荒れようには凹んでしまうぞ」


「はい、しかし、戦線は北西の方に移ったようで行程は楽になりました」


 まあ、エスナルの泉からの帰り、ムヘン山地を通り抜ける緊張感に比べれば楽なものだ。Cアラーム(クリーチャー警報機)の電源は入れてあるが、なんの反応もない。


「……ちょっと退屈なの」


 ハッチの縁に顎をのせ、しみじみとポチがこぼす。


 車内ではケイトもロキも居ねむってしまい、年かさのテルは相手をしてくれず、人型に変身して間もないポチは退屈で仕方がない様子だ。


「ならば、我がリトルデーモンとして、我の肩でも揉め」


「やだ、リトルデーモンじゃないもん」


――それなら、わたしが任務を与えましょう――


 ヘッドセットを通してタングリスが提案する。


「なに! おもしろいこと!?」


 ポチは車内に潜り込むと、直接タングリスに聞きに行く。数秒すると操縦席のハッチが開いてポチが元気よく飛び出した。


「じゃ、行ってくるね!」


「お、おう」


 四号の上で一回転すると、ポチは遠雷のように砲声が轟く西の空に飛び立っていった。


「なにを命じたんだ?」


――ちょっと、戦線の動きに気になるところがあるので調べさせようと思いました。好奇心いっぱいのポチには向いていると思いました――


――大丈夫かい、敵と間違われて撃たれたりしないか?――


 テルが心配する。


――味方識別信号チップを持たせてやった――


「そ、そうか、わたしも同じ気持ちだった」


――そうですか――


 そ、そーだ! いちおう、わたしがコマンダーなんだからね、そ、それくらいは思うぞ!


 いつの間に目覚めたのか、ケイトとロキが車内で笑った……ちょっとムカつくブリュンヒルデであった。




☆ ステータス


 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 


 


 

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