第32話『無辺街道半ば』
かの世界この世界
32『無辺街道半ば』
こんなやつでも街道の主なんだろう。
魔物やクリーチャーに出くわさない。
まあ、無辺街道程度の化け物なんか屁でもないんだけど、バトルの度に足を止められるのもかなわない。
しかし「ブリのお蔭だな」なんとことは口にはしない。
誉めたりお礼を言ったりすれば、見た目四五歳の幼女にしか見えないブリは見かけ通りに「ニヘヘヘ」とか笑っていい気になるのに違いないからだ。
こいつがいい気になったら、プラウダ高校のカチューシャよりも鼻持ちならないに違いない。
タタタタ
ブリがいきなり駆けだした。
駆け出して、そのまま消えてくれてもいいんだけど、また、シリンダーとかの化け物に出くわすのも嫌だ。
ちょっと待ちゅのだ!
言おうとしたら立ち止まり、ピョンとジャンプして両手を広げて振り返った。
「ここが無辺街道の真ん中だじょ!」
「そうか、思ったより早かったね」
ケイトが無邪気なくらいホッとして、担いでいた弓も荷物も下ろしてしまう。
「なにをホッとしてるんだ。真ん中なら、もう少し稼いでおこう。まだまだ陽は高いんだからな」
「ま、真ん中なんだじょ。一区切りなんだじょ。ケイトの言う通り一休みするのが当たり前じゃにゃいか!」
「そういう根性が堕落の元なんだ。夏休みの真ん中で気が緩むと、あとはズルズルになって宿題をやり残して最終日にオタオタすることになるんだぞ」
「船らって、赤道を通過(ちゅうか)しゅるときは赤道祭りってのをやって一休みするんだじょ!」
「休もうよおおお」
仕方がない、二対一の三人旅だ。
「分かった、じゃ……ちょうどそこが宿営にピッタリだ」
街道から少し入ったところが五十坪ほどの空き地で、先達たちがキャンプした跡もある。
「火をたいた跡もある、キャンプの用意をするか」
「どうやって火を起こすの?」
「なに、ケイトは火も起こしぇないのか?」
「ふつう出来ないと思うよ」
「ガルパンではやっていたぞ、大洗女子が廃校になって寄宿生活始めた時に弥生時代みたく火を起こしていたぞ」
「あれはアニメだろーが」
「マッチの使い残しがあるじょ。前に通ったやちゅが残していったんら」
ブリが一抱えの薪といっしょに持ってきた。
「これ、学校のプリントだ」
ケイトが燃え残りをつまみだした。
「先行した女子たちだな、ここでキャンプして先に進んだんだな」
「ちがうじょ」
「なんで!?」
ケイトが突っかかるように聞く。自分を置いてけぼりにした相手だ、思うところがあるんだろう。
「ここから先に進んだのらったら、栄光の旅立ち、街道の先に行った足跡が光り輝くのりゃ! ひと月ほどは残るんだじょ」
「ひと月より前かもしれないじゃん」
「そんなに前なら、マッチなんか湿気って使えないぞ」
「じゃ、ここで打ち上げのキャンプやって帰っていったってこと?」
「愚か(おりょか)な奴やだ、ここで戻ったら参加賞しかもらえないじょ」
「参加賞じゃ、だめなのか?」
「参加した者は安穏な人生が保障されるけろ、世界の平和は二三年しか保証されないじょ。最後まで行ってミッションコンプリートしなければ、おまえたちの世界に本当の平和は訪れないのだ。フン、ヘタレの愚か者たちめ!」
「そうなの?」
「しょれに……」
「な、なんだ、その意地悪な目は!」
「こいつらが戻ったんなら、出口は閉じてしまっているじょ。エヘヘ、おまえたちは戻れないじょ」
「「そんなあ!」」
「戻りたいのなら、最後まで行ってミッションコンプリートしゅゆことだ」
「そうなの?」
「ああ、光子(みちゅこ)がプロットで決めたことだかりゃな」
「ミツコ?」
ブリと目が合う……そうだ、これは、わたしがプロットの段階で放り出した世界だ。
最後までやって、真の勇者になるまでは終わらない設定なんだった(;゜Д゜)。
「やろう、三人で真の勇者を目指そう!」
「「お、おー!」」
「で、ミツコってだれ?」
ケイトの質問に答えられるわけもなく、聞こえないふりして火を起こしにかかった(^_^;)。
☆ ステータス
HP:200 MP:100 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト
持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1
☆ 主な登場人物
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
ブリ ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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