第28話『ペギーの店・2』


かの世界この世界:28     


『ペギーの店・2』     






 テルキは剣士レベル1、ケイトは遠距離攻撃の弓兵レベル1がいいでしょ。



 エフェクトが満開の花火のようになって、それがチラチラと煌めきながら消えていくまでの十秒ほどで、ペギーさんは属性と装備を決めてしまった。


「あ、えと、装備はともかく、どうしてIDネームまで知ってるんですか?」


「ビミョーに間違えてるし……」


「そのナリでケントはないでしょ、女の子らしくケイト。装備は、これよ……」


 ペギーさんが指を振ると、目の前にトルソーに着せた装備一式が現れた。




 わたしのは、チュニックに皮鎧。ベルトにはタガーが挟まれ、ソ-ドはレイピアのように細身だけど実用本位で、鞘も柄も鉄地剥き出しの鈍色だ。ミニのアーマースカートが付いていなければ、男性用と言われても分からない。


 ケント、いやケイトのは、チュニックに胴着。ベルトにタガーは同じだけど、斜めに掛けた短弓は心もち太めだ。わたしのソード同様実用本位で木地のままだ。




「お察しの通りの実用本位だけど、初期装備としては強力なものよ。レベル10までは十分だと思う」


「えと、ちょっと贅沢すぎる気がしないでもないんですけど」


「うん、レベル8の装備とスペック的には変わらないんだけどね、今日は、あんたたちで仕舞みたいだし……ま、サービスだと思ってくれていいわよ」


「「ありがとうございます」」


「実は、今日のタームは女子限定なんだよ。そんなナリはしてるけど男子がやってくるのには意味があると思うのよ」


「これは、クラスの女子に……」


「言われたんだろうけど、その女子たちも気づいていない力が働いているように思うんだよ。一応の属性は決めてあげたけど、フラグの立ち方次第では変わるかもしれない。ま、峠の万屋(よろずや)の素人判断だけど、ペギーさんの参考意見ってことで。そうだ、サービスで金の針を一本ずつ付けてあげる」


 ダガーの横に鞘に入った金の糸が現れた。


「金の糸ということは、石化魔法を使うモンスターが現れるんですか!?」


 石化魔法は、制限時間以内に解かないと、直ぐに粉々の砂に劣化してゲームオーバーになってしまう。


「ああ、まあ、使い方は色々さ。あけすけに言えば売れ残りなんだけどね、ケイトの女子化と同じく、なんか意味のあることじゃないかと……思ってみたい峠の万屋さ。ま、気を付けて行っといで」


「「はい、ありがとうございます」」




 ケイトと揃って頭を下げて、上げた時には店ごと消えてしまっていた。




「あ……」


「えと……」


「お代、まだ払ってなかったよね」


「帰りに通りかかったら、払おうか」


「だね、じゃ、行くか!」




 路傍の道標には――たちまち海岸へ10マイル――の文字が浮かび上がっていた。




 HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)


 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル


 装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1






☆ 主な登場人物


 寺井光子  二年生 今度の世界では小早川照姫


 小山内健人 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる


 二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される。回避しようとすれば光子の命が無い。


 中臣美空  三年生、セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 


 

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