2 さよなら、世界
さよなら、世界
ユニ ロボットの少女
広大ななにもない真っ白な世界が広がっている。
青色の空と、真っ白な雲。透明で清らかな風。……生き物の声はどこからも聞こえてこない。……無音。
誰もいない世界。
そんな世界の中で、一人、ユニは目を覚ました。
それは、とても悲しい世界だった。
だからユニは涙を流した。
悲しいから。
悲しいときは、涙を流すのだと知った。
ユニは悲しいという感情を覚えた。
それが、ユニがこの世界に生まれて初めて覚えた、……感情だった。
さよなら。
さようなら、私の生まれた世界。
私はこの世界を愛しています。
この世界のことが嫌いなわけではないんです。
でも、……私は、この世界の外側にいきます。
世界を抜け出して、……誰かと出会いたんです。
命と。意思と。希望と。……自分以外の思考と。誰かと出会って、その人と友達になって、いろんなお話がしてみたいんです。
だから私は世界を抜け出します。
でも、いつかきっと私はこの世界に帰ってきます。
私以外に誰もいない、……本当になにもない、とても悲しい世界だけど、それでもここはやっぱり、私の生まれた世界なのだから。
だからそれまで待っていてください。
私がもう一度この場所に帰ってくるまで、……さようなら。
さようなら。世界。
ユニの生まれた世界の真っ白な大地の上には、そんな一枚の手紙が置いてあった。ユニが残していった、誰も読む人のいない手紙。(宛先のところには、誰の名前も書かれていなかった)
その真っ白な封筒の中に入れられている、ユニの手書きの手紙は、いつまでも、いつまでも、誰にも読まれることもなく、ずっと、その場所に残され続けていた。(……きっと、ユニの残していった、悲しいと言う感情と一緒に)
やがて、強い風が真っ白な世界の上に吹いた。
その風にユニの残していった手紙(メモリー)は飛ばされる。
どこか、……とても遠いところに。
(その手紙を、ある日、一人の少年が拾った。それは、たぶん奇跡だった)
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