没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで
八神 凪
幼少期
-プロローグ-
ピーポーピーポー……
――響くサイレンの音を聞きながら俺は薄れゆく意識の中、ぼんやりと過去を振り返っていた。
「(いいことは……何も無かったな……)」
しかし、思い返してみてもロクな思い出は無かった。倒れた身体に打ち付ける冷たい雨が、俺の二十三年の人生を嘲笑うように染みこんでいく。
俺こと『三門
両親は出来の良い弟を溺愛し、何もかもが平均な俺には辛辣に当たっていた。そして実の弟は早く出て行けと言わんばかりの態度でなんとも肩身の狭い思いをしていた。
「(もう……いいか……)」
これは死ぬな、と、身体は痛むのに何となく冷静な判断をする。俺はスリップして歩道に飛びこんだ車に後ろからはねられ全身を強く打っていたからだ。
「――お兄さん! しっかりしてください! ああ……ほ、骨が……」
「君、どきなさい! 後は我々が――」
良かったなと思ったのは、俺の前を歩いていた女の子を突き飛ばしたことで事故に巻き込まれることを阻止できたことだろう。
……どうせ両親と弟は俺が死んでも保険金が出て喜ぶだけ。そういう家族なのだ。
「(なら、これが最初で最後の親孝行か……? 何が英雄だ……期待してもいないくせに分不相応な名前をつけやがって……)」
そんなことを思いながら目を瞑ると、俺の意識は暗闇の中へ誘われていった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます