龍神の子 〜天記と聖水の剣〜
藤沢 遼
第1話 プロローグ
『生まれた 生まれた』
『神の子だ 龍神の子だ』
暑かった夏が過ぎ、秋風がザワザワと木々の枝や葉をゆらす。ゆれる木々のすきま、暗闇のそこここから、ヒソヒソと小さくしゃがれた声が聞こえてくる。
全身が黒い毛で覆われた、まるで猿のような姿をした得体のしれない無数の者たちが、目だけを黄色く光らせ闇の中でじっと様子をうかがっていた。
『生まれた 生まれた』
『龍神の子が生まれた』
大きく開け放たれた両開きの窓から、月の光が明るくさし込んで小さなベッドを照らしていた。ベッドには生まれたばかりの男の子が、スヤスヤと寝息をたてて眠っている。
月明かりだけのその部屋で、背の高いスラリとした若い男がベッドの側に立ち、眠っているその子を見下ろしていた。
男は眠っているその子の額にそっと右手を置いて、ささやくような小さな声で何やら呪文のようなものを唱えた。
次の瞬間、男の子の体全体がふわりとした白い光に包まれた。
「私の子、お前が生まれてくるのをずっと待っていた」
額から手を離しもう一度呪文を唱える。
すると男の子は目を覚まし、泣きもせず、まるで全てが見えているかのように男の顔をじっと見た。
青みがかった銀色の小さな瞳は、人のものではなかった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます