12話目・ハルキとカホとアキラとフユコ



「なんというか、チートじみたスキルがあれば、こんなゲームみたいな世界はちょろいな。なぁカホ?」


漆黒の鎧で身を包んだ暗黒騎士のアキラが隣の大魔法使い姿のギャル風の女の子に声をかける。


「うんうんー、それが4人でパーティー組んでとか最強っしょ」


「とりあえず、あなた方はスキルがあるからと無茶しすぎですわ。わたくしの全快フルキュアーが無ければ何度死亡してたか分からないんですのよ?」


テンプレお嬢様の司祭姿のフユコが2人を指さしながら説教じみた事を言う。


そんな3人に背中を向け、白銀の鎧に身を包んだハルキは、祭壇に3つのアイテムを並べる。



3つのアイテム、これは世界各地で4人が龍を倒して得たものだ。


赤い玉は【火龍ボルケーノ】を火山で倒して。

青い玉は【水流ダイダル】を三日月湖で倒して。

黄色の玉は【土龍アースシェイカー】を砂漠で倒して。


世界各地で謎を解き、モンスターの巣食う洞窟を抜け、色々な人々の助けを受けて、やっと倒した。


そして、この3つの玉が揃う事で、魔王城への道が開かれるのだ。



そう、魔王城は常に3つの魔法壁で守られている。


その魔法壁は、どんな勇者であろうと破壊することは出来ない。


ただし、その魔法壁に対応した玉を祭壇に納める事により、その魔法壁を解除することが出来るのだ。



普通に考えたらここまで来るのにそれ相応の日数がかかりそうなものだが、チートクラスのスキルを最初から持っている彼らは、一気にレベルを上げ、圧倒的な暴力で倒し、新天地でレベル上げをして…とまさに廃ペースで駆け抜けたのだ。


まさにチート、そしてバランスの良いジョブが4人そろった当然の結果だと言える。




「さぁ、始めるぞ」


ハルキが後ろの3人に声をかける。


後ろの3人も神妙な顔をして頷く。


そしてハルキは、祭壇に開いた穴に玉を入れていく。

3つ入れ終わると、3つの玉が強い光を放ちだす。



その光に反応するように黄色の魔法壁が消え去り、黄色の玉の光が失われる。


次に青い魔法壁が消え、青い玉も光を失う。


最後に赤い魔法壁が消え、赤い玉も光を失う。


全ての魔法壁が消えると、3つの玉はパリーンと砕け散った。



「よし、これであとは魔王を倒すだけだな!」

「そーいえば、倒したら何か報酬出るんだっけ?アタシ聞いてなかった」

「世界に平和を取り戻す、それだけで十分の報酬ですのよ!」


そんな3人に背を向けたまま、ハルキは魔王城を睨みつけると手に持った聖剣を頭上に掲げる。


「これで長かった戦いが終わる…お前達、あと少しだけ俺に力を貸してくれ」


「「「おーーーーーーーっ!」」」



そしてハルキが魔法壁が消えた魔王城への橋に足を踏み入れようとした瞬間。


ガチーン


と、何かに衝突した。




何事かと見上げると、そこには赤い魔法壁があった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る