第23話「デスノート」を「ただのノート」にしてやるよ

―しょじょターン


「俺を誰だと思っていやがる!」

(まったくこいつは…)「あんたはおおそうじ以外何者でもないんじゃないの?」

 おおそうじの一日の始まりの言葉がこの言葉の時はいつだって何かとっておきを自慢する時なんだわねえー。こいつ…、また何か閃いたんだろうけど…、分かりやすいんだか。昨日のあの落ち着いたおおそうじの方が不気味なんだけどねえ。

「無理を通して」

「道理を蹴っ飛ばすんだよ!」


YEAAAH!ピシガシグッグッ。


 この二人のやり取りをもう何十回、いや何百回見たことか…。

「とりあえず確認しときたいんだけどよお。百歩譲ってアムロ行きますには『キン肉マン』がいるからいいとして。しょじょんところは『超スピード』の能力者はいるのか?『ドラえもん』は確かに強いが俺様から見ればすっとろいぜ。道具出す前に『かめはめ波』で吹っ飛ばせば『ラッキーマン』さえ倒せばお前負けるぜ」

(こいつ…)「あんたさあ…。『ラッキーマン』『速さ』でググってみれば」

「あーん?」

 そう言っておおそうじがスマホを弄ること数十秒。

「そうだね。『超スピード』能力はおおそうじ君の『ドラゴンボール』と『グレンラガン』、しょじょさんの『ラッキーマン』、僕の『キン肉マン』は単体では劣るかな。でも能力が出せないで負けることはないと思うな。あと『ドラクエ』は全員持ってるから『ピオリム』とか『ボミオス』とかスピード操作系の呪文はお互いに唱え合えば無効かな?」

 冷静に考えると、あたしが三位指名した『ドラクエ』をこいつらも使えるって…。おおそうじが六位指名した『ダイの大冒険』はまあいいわ。アムロ行きますの『グーグルプレイ』って何よぉ!その気になればゲームダウンロードし放題じゃないのぉ!かと言って残ってる『アップストア』を補強枠で獲っちゃえばあたしも同じような能力が使えるんだろうけれど…。でもそれをやっちゃえば三位指名した『ドラクエ』の意味がなくなるじゃん。何故あの時はノリノリでOKしちゃったんだああああ。ちょっと前のあたしに説教したい。

「随分あたしの『ドラクエ』を大バーゲンセールみたいに言ってくれるじゃない」

「いや、僕の『ドラクエ』としょじょさんの『ドラクエ』は意味合いが違うからね。しょじょさんには『ラッキーマン』がいる時点である程度無敵の『ドラクエ』だからね。それはおおそうじ君の『ダイの大冒険』も同じくだ。おおそうじ君、今のメラゾーマすごかったねえ」

「今のはメラゾーマじゃない。メラだ」


 YEAAAH!ピシガシグッグッ。


「しょじょの言いたいことも分かるけどこれは最初に決めたことだぜ。そんなことは道理を蹴っ飛ばすどころか多数決以前のことじゃん。枠なんか関係なし!」

 普段なら絶対にいちゃもんをつけるはずのおおそうじがアムロ行きますを全肯定してる時点で怪しさ満開に決まってる。企んでるに決まってる。

「おおそうじ君の言う通り。だけどやっぱり『ラッキーマン』と『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』。この二つはずば抜けている。条件付きなら僕も『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』と同じような能力を使えるけれど、その『ミスターVTR』も『クラフトワーク』で封じられた。未だにその二つだけはネットでも敗北を知らないと思う。普通に考えて勝てなくても確実に引き分けには持ち込める能力だ。それらを指名している時点で少しぐらいは大目に見てもらわないとね」

 ダメ。これはいつものアムロ行きますペースだわ。いいわよ。だったら実力行使あるのみ。アムロ行きます憎けりゃおおそうじまで憎し。

「分かったわよ。それより時間が勿体なくない?戦闘開始ね」

 あたしはあらかじめ打ち込んでおいたラインの送信ボタンを押した。揺れるまでもない。


「『ドラえもん』の『とりよせバッグ』で『ドラゴンボール』七つ揃ってお取り寄せ」


「アムロ行きます。判定は?」

「おおそうじ君。防御策は?」

「ちょいま…。へ?『とりよせバッグ』?」

「ウィキペディアではどこでもドアでは行けないような遠い宇宙や異なる次元にも手が届くとあるね。問題は取り寄せる際に手だけが向こうの場所に現れるために見られたら攻撃を受けることもあるし、向こう側が見えないから手探りになるため違うものを取り寄せる場合もある、だね。でもこれは『ラッキーマン』もいるし、『ドラゴンボール』は基本的に世界に散らばってるし。手を見えなくすることも出来るのは分かってることだろうし。これは攻撃でもないから『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』も使えないかな。さあ、どうする?」

「だああああー!分かってるよ!えーっと、待て待て。『とある魔術の禁書目録』の『幻想殺し』で能力無効化は?」

「これは能力じゃなくて道具だから無理があるかな?」

「だよな。おおそうじはクールにライン送信」


おおそうじ「『ドラゴンボール』の能力『三分前からやり直し』で『ドラゴンボール』を取られる前に時間を戻す」


 想定内。揺れるまでもないわよ。ライン送信。


「同時に『ドラえもん』の『マッドウォッチ』で時間の流れを超高速にして三分以上経過させる」


「え?『マッドウォッチ』?なんだそれ?」

 スマホを見ながらアムロ行きますが説明する。

「『マッドウォッチ』は時間の流れを部分的に速くしたり、遅くしたりする懐中時計。速さの調節は倍数カウンターにて指定。倍数カウンターの上限は100倍が上限となる。うーん、これはどうだろ?三分は百八十秒だから、『マッドウォッチ』をマックスで使ったとして一・八秒かあ。その時間があれば防げるかなあ?」

「えー、ダメなの?」

「つーか、俺様は『トーキングヘッド』で『もしもボックス』を封じてるんだぜ。『神龍』にお願いだって無理だろ?」

「そんなの決まってるじゃない。嫌がらせ」

「嫌がらせだと…。しょじょ、お前の血液を『メタリカ』で剃刀にしちまうぞ」

「あたしの『ドラえもん』は猫型ロボットだから効かないんだかんねー」

「いいね。これぞ『ドラフト』って感じだね。最新の能力系漫画を主力にしてるおおそうじ君とゲーム系と『ドラえもん』、『ラッキーマン』を上手く組み合わせてるしょじょさん。僕もどちらかと言うとしょじょさん陣営に似てるかな」

「しょじょ。おめえは後回しだ。とりあえずアムロ行きます。お前の『デスノート』をただのノートにしてやるよ」

 そう言っておおそうじからラインが届く。


 おおそうじ「『ジョジョ』のスタンド『ジュエル・ハウス・ロック』で『デスノート』の使用者を攻撃。記憶が三つまでになるため、『攻撃相手を認識』、『ノートに書き込むことの認識』、『攻撃相手の顔』、『攻撃相手の名前』、『ノートに書き込むという動作』を行うことは不可能となる」


 やるじゃん!おおそうじ!

「……まいったね。こんなに早く『デスノート』封じに辿り着かれるとは思っていなかったよ。しょじょさんの判定を待つまでもない。これは完全に僕の負けだよ」

「よーし、しょじょ。これでアムロ行きますに『石ころ帽子』は通用することになったぜ」

「あれ?君たち二人がタッグを組んで攻撃してくるの?」

「当ったり前だろ。プロ野球でもライバル通しが包囲網を作ることだって普通にあるぜ」

「でもそれじゃあ『トレード』の意味がなくなってくるんじゃないかな?」


 うーん?この場合、『多数決のルール』であたしの一票で決まるんだろうけど…。二人の考え方を少し聞いてみようかなあ。


「俺様が言ってることは『時と場合によって共闘はあり』ってことだ。三国志だって敵と一時的に協定を結んで共通の敵を攻撃することもあるだろ?俺様にとって有益でないと判断した時にはしょじょに対しての『デスノート』封じは解除する。それに今後も同じような場面は出てくるに決まってるだろ?」

「なるほど。僕はオッケーだね。しょじょさんはどう?」


 へ?そういう意味合いでのあたしの一票なの?


「『多数決のルール』でしょ?おおそうじとアムロ行きますが認めた時点であたしの意見を言わなきゃダメかなあ?」

「だね。じゃあ、僕も一つの行動を送るね」


 アムロ行きます「『キテレツ大百科』の『真っ黒衣』を着用して『デスノート』を使用」


「しょじょさん、『デスノート』封じ破りはどう?」

「あんたって本当に…。おおそうじ、一瞬だけ夢見れた?」

「『夢は見れた?』だとおおおお」

 おおそうじのセリフとほぼ同じタイミングで休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。

「じゃあ続きはまた明日ってことで」

「ゴングに救われたな!」

 おおそうじの奴はたまにツッコミようがないことを平気で言う。ゴングってなんなのさ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る