第2話選んで戦おうぜ!
―名礼祥ターン
いきなり失礼!私の名は名礼祥
なれいしょん
。この物語のナレーションを務める。まあ、実在しない単なる解説役と思ってくれ!私立仙頭
せんとう
学園、三年B組の教室の片隅でいつもの三人が一つの机に集まっていつものようにくだらない話をしている。
「なんかさあ、いっつもこの三人で変わらない毎日だよねえ」
安室行人
あむろゆきと
が言うようにこの三人は一年の時からずっと同じクラスだ。
「それはお互い様だろ?『アムロ行きます』よー」
「『ガンダム』は詳しくないんだけどそんなあだ名で呼ばれるとは今までなかったよ。でも、君だって『おおそうじ』だろ?」
『おおそうじ』と呼ばれた少年の名は大草時
おおくさちか
。
「あたしから見てどっちも同じレベルだと思うけれどねえ」
「うるせー!この『しょじょ!!』」
「『しょじょ』言うなー!あたしは永遠の『少女
しょうじょ
』なんだからね!」
「フォーエバーしょじょですか?」
『しょじょ』と呼ばれた少女は正田助子
しょうだすけこ
。
三人に共通していることは親が意図的に名付けたのか、あだ名がドンピシャな本名を持っていること。そしてもう一つ。部活動に力を入れているこの私立仙頭学園は体育会系も文科系も日本ではトップクラスの成績の部が多い中、クラスの中ではこの三人だけが帰宅部であること。と言っても三人ともずっと帰宅部であった訳ではないらしい。入学時にはそれぞれが違う部活をやっていたが二カ月ほどで三人とも同じタイミングで部を辞めた。それからなんとなく教室の中でつるむようになり、進級してもずっと同じクラスということもあり、素晴らしい成績を残している部活をやっている他の生徒の間ではちょっと浮いてしまっていることもあり、まあ、お互い同盟のような感覚で教室では一緒に集まっていた。別に他のクラスにも帰宅部の生徒はいたし、他に友達がいないということもなかったけれどこの三人はなんとなく一緒にいるらしい。うーん、分かるなあ。なんとなく。あ、これは私の主観であり、同じような環境のこのぐらいの歳の子は全国に星の数ほどいると思うよ。今日も長い昼休みをいつものように退屈な会話で過ごそうとしていたこの三人。
「いつもと変わらず平和だねえ。おおそうじ君さあ」
「それは俺様のセリフだよ。なんかねえの?しょじょさんよぉ」
「そう言えば、『ジョジョ』の五部がアニメ化するってニュースがSNSに出てたわね」
「あれって全部アニメ化するんじゃない?」
「てか、お前らは何部が好きなん?俺様は五部一択。『ジオジオ』」
「えー、絶対四部でしょ?」
「はあー。君たちは何も分かっていないねえ。真の『ジョジョ』好きなら三部以外はありえないのだよ」
ほうほう。こんな会話はよく耳にする。日本中どころか某掲示板で世界中の『ジョジョ』好きが熱く語り合っている。
「『スタンド』が使えたらなぁー。俺様なら…、やっぱ『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』!相手の攻撃を全て『ゼロ』に戻すんだぜ!動作や意思さえも全て!『死んだこと』も『ゼロ』に戻すんだぞ!無限に死に続けるんだぞ!この能力があれば無敵だろ!」
「そう?四部の『ハーベスト』があれば一生お金に困らないと思うけど?それに意外と使える能力が多いのが四部だと思うけど?」
「承太郎の『スタープラチナ』で『時』を止めれば人の財布だって盗み放題だろう?一番万能で使えるのが三部の承太郎なのだよ。それにアヴドゥル、ポルナレフ、花京院、イギー。ジョセフの『ハーミットパープル』は使い方によっては強いよ」
「いーや!『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』!あのスタンドに勝てるやついんのか?」
「でもこういう話っていくらでも聞いてきたし見てきたし。人それぞれってとこあるわねえ。だったら『ドラえもん』の『もしもボックス』があれば無敵なんじゃない?」
「その発想は面白いね、しょじょさん。でも『ドラえもん』は道具をポケットから出すじゃない?『テケテテッテテー♪』とね。その道具を出す二秒ほどの時間が弱点なのだよ。『かめはめ波』を『かーめーはーめー』まで溜めた悟空が瞬間移動して『は!』と繰り出せばドラえもんは余裕で負けるよ」
ん?この三人。アムロ行きます君の面白い発想で話がとんでもない方向に飛躍しそうだぞ?
「そう言われれば『デスノート』も意外と使えないよなあ。ノートに名前を書かれても『ドラクエ』の『ザオリク』で生き返らせれば意味ねえもんな」
「おおそうじくーん。その考え方は浅いよ。確かに『デスノート』は『ザオリク』の前では意味がないかもしれないけれど、『行動を操れる』という意味では使い方によってはかなり強いよ」
「ネットにもいろいろ意見があるなあ。へー、『一方通行』か」
「アメコミにもチートキャラが多いらしいのね。へー、『スーパーマン』って地球を逆回転させて時間を戻したんだって。スーパーサイヤ人でも全然勝てないって」
おおそうじ君としょじょさんがスマホを見ながらいろいろと検索する。
「これってさあ、『組み合わせ』次第で最強を決められると思わない?」
アムロ行きます君の一言で三人が顔を見合わせた。
「それ、おもしれえ!」
「面白そう!」
「三人でやってみるかい?順番に好きな作品を『選ぶ』、つまり『ドラフト』だよ」
「『ドラフト』?あのプロ野球の?」
「そう。『ジョジョ』なら『ジョジョ』を選んだ奴がスタンド能力全て使える。もちろん二部のカーズもだよ。あいつも強いね。『ドラクエ』を選んだ奴は魔法も特技も全て使える。順番に自分が欲しい能力を選んでいき、自分が選んだ能力を組み合わせて三人でバトルするってことだ」
「ちょい待って。『ジョジョ』を選んだ奴は『ジョジョ』の全てのスタンドが使えるってこと?」
「そうだよ」
「『ドラフト』ってことは一位指名で同じものを選ぶ可能性もあるだろ?その時は?」
「そうだねえ、じゃんけんでいいんじゃない?あとは一番最初に一位指名を獲得した奴は二位指名は一番最後。逆に一位指名が一番最後の奴は二位指名は一番最初。これを繰り返していくって感じかな?」
「これよ!これこれ!あたしワクワクしてきたあ!『ドラフト』やろう!『ドラフト』!」
「まあ、明日までにそれぞれ細かいルールと言うか、設定や決まり事をお互いに考えてこよう。明後日には『ドラフト会議』だ。そしてそこからバトルの始まりといこうか」
「これはいかにして『ジョジョ』を取るかだな…」
「あたしに秘策あり。にやり」
この帰宅部の三人がとんでもない発想に辿り着いた。運命の『ドラフト』が二日後に開かれる。こ、こ、これは私、名礼祥もワクワクドキドキである。とんでもない!実にとんでもない!が、最高に面白そう!実に面白そう!
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
「じゃあ、とりあえずルールは明日までにと言うことで」
「オッケー!俺様に任せときな!俺様がプロ野球通なのも知ってるよな?『ドラフト』は俺様の得意分野だぜ!」
「野球は下手ですぐ辞めたんだけどねえー」
「うるせー!」
おおそうじ君としょじょさんがアムロ行きます君の机から楽しそうな声を出しながら自分の席へと戻っていった。
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