46話 3回目の進化

 リザードマンたちの村へ帰りついた俺。

 森林地帯に踏み込み、数々のモンスターを打倒した結果レベル35へ到達。

 三回目の進化が可能になっていた。


「ダストゾンビからずいぶん遠くに来たもんだ」


 目が覚めたら体半分もげてた頃が懐かしいぜ。


 マミーの次のモンスター、それはドラウグル。

 ……ってどんなモンスターだっけ。


 確か北欧系のゾンビだかミイラめいたやつだった気がする。

 日本じゃあまり見なかったような。


 ていうかレベル35で、ずいぶん進化ツリーの上のほうへいけるんだな。

 オークと同じくらいのレベルだぞ、俺。

 モンスターの進化は謎に包まれているなあ。


 それはさておき。


「こっそり進化しようと思ってたのに……」


 宴が早朝、ひっそり進化しようという計画は叶わなかった。

 どこで聞きつけたのか「進化を見せてほしい」と族長が訪ねてきたのだ。

 まず自分自身で変化を確認してから皆さんにお見せしたかったんだが、しかたない。


「マミーのときはアタシにドヤ顔披露したじゃん」


「身内と第三者は違うんだよ」


 リゼルヴァをはじめとした戦士を集め、披露させていただく運びになった。

 リザードマンは最終的にドラゴンへ進化するらしい。

 しかしレッサードラゴンへの進化すら滅多にない一大イベントなんだそうだ。


「モンスターの進化を見られるのがそもそも奇跡的なのだ。マミーほどのモンスターとなればなおさらな」


「そういうもんなんだ」

 

 ちなみにドラウグルを知っている村人は誰もいなかった。

 ドクンちゃんによると「ゾンビの一番強い奴」らしい。

 評価が雑すぎない?


「じゃ進化しまーす」


<<ドラウグル に進化します>>


 実行と同時、俺は光に包まれる。

 何度包まれても嫌なものだ、光というのは。


 全身がむずがゆいような、形容しがたい感覚のあと光は収縮して消えた。


<<ドラウグル に進化しました>>


「お、おぉ……」


 周囲がどよめいている。

 てっきり「わー!」とか「かっこいー!」的なノリになるかと思ったのに。

 スベったみたいで恥ずかしいわ。


 まず体はどうなったかな?

 目線の高さは変わらない。

 二本足に両腕と頭、うん人型だ。


 手足を眺める……青白く乾燥した皮膚に包帯が巻きついている。

 マミーと似ているけど包帯はだいぶすくない、オマケ程度だ。

 代わりに筋肉が増えてちょっぴり新鮮になった。


「マヒ爪もちゃんとあるな」


 指先を意識すると爪が伸び縮みした。

 うっすらマヒ毒液を帯びているのも確認できる。

 メインウェポンは健在のようでなにより。


 頭頂部。

 房のようなものが生えてる。

 引っ張ると頭皮がつられて持ち上がった。


「おぉ、髪生えとる! ちょっぴりだけど」


 転生してからずーっとスポーティな頭部だった。

 久しぶりの毛髪に嬉しくなってしまう。

 これでハゲとは言わせんぞ。

 

 眼球もある。

 鼻はない、孔だけだ。

 歯も生えそろっている。


「全体的にマミーがフレッシュになった感じだな、どうよドクンちゃん」


「スゴ味が増した感じよ、クールね」


「族長どうよ、これがドラウグルだぜ!」


 まだ息を呑んでいるリザードマンたち。

 今にも逃げ出しそうな人もいる。


 ……もしかして怖がられてる?

 そんなにビジュアル変わらなくない?


「マミー殿、いえフジミ殿。雄々しい姿ですが……すさまじい威圧感に若い者が委縮しております」


 族長もなんだか緊張した面持ちだ。

 俺の顔が怖いってこと?


「えっ、シンプルに酷いこというのね。さすがの俺も傷心」


「マスター、スキル見てみて。きっと何か働いているのよ」


 ドクンちゃんの助言通りステータスを開いてみる。

 するとスキルの一つがたしかに点灯していた。

 

「『恐慌まとい』……これのせいか?」


 そういえば滅多に使わない闇魔法に『フィアー』っていうのがあった。

 自分のレベル以下のモンスターを『恐慌』状態にするっていう効果だ。

 『恐慌』になるとパニック状態に陥るらしい、が一回しか使ったことがない。


 俺よりレベルが低いモンスターなら斬り伏せたほうが早いからだ。


「たぶん『恐慌』をふりまくパッシブスキルね。気合で無効にできないかしら」


「気合ってお前……あ、できた」


 試しに意識を集中してみると『恐慌まとい』の点灯が消えた。

 同時にリザードマンから、ため息が漏れる。

 そんなにメンタル攻撃したのね、申し訳ない。


「ごめんごめん、恐慌ダダ漏れだったわ」


「私には効かんがな」


 リゼルヴァが張り合ってきた。

 俺よりレベルが高いから恐慌が効かなかったのかな。

 

「よっし、じゃあ肩慣らしするか」


「ならば私が相手だ」


「まだダメー」


 スキルは後で考えるとして、まずは体を動かしてみよう。

 リゼルヴァが立候補したが却下した。

 最初はスケルトンオーガで試すべきだと思ったのだ。


 ……新しい体で手加減できるかわからないからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る