第240話
「どの辺が駄目なんだ?」
「駄目って事は無いが、ピンと来るものが足りない?」
「はぁ?」
「なぁ。どうやったら獣化ってヤツになれるんだ?」
「うーん?こうギュッとして、ブワってなってズドーンって感じか」
先程から、聞こえてくるクロードの説明が説明になっていない。擬音が多くて全く意味がわからなかった。
「説明が下手。もう少し、まともに説明できないのですか?」
ここまでシェリーがお膳立てをしたのに、肝心なクロードの説明が全く意味をなさないものだったなんて、使えない。
「そう言われてもなぁ。感覚的にこうすれば出来るってわかるからそうしているだけだ。」
これはあれだ。こうあろうと考えれば、そこまでの道筋が見えてしまうのだろう。これではグレイにもオルクスにも役に立たたない。
まあいい。クストとクロードの戦いを見ることで何か参考になることはあったはずだ。
「そうですか。これ以上ここに居ても役に立たなそうなので、還しますね。」
「お前さ自分勝手って言われな「解除」・・・」
シェリーはまだ話している途中のクロードを世界の記憶の海へ戻した。
「シェリー。まだ聞きたいことがあったんだけど・・・。」
グレイが名残惜しそうにクロードがいた場所を見ていた。しかし、シェリーはそんなグレイに周りの見るように言う。
「グレイさん、そろそろ邪魔になりそうですよ。」
訓練場には殆ど人がいなくなり、居るのはルジオーネに命令され、ここを整備するように言われた者たちだけだった。
軍の敷地内から出ようとしていると、前方から第2師団長のアンディウムがこちらに向かって来ていた。
そのアンディウムがシェリーの前で立ち止まった。かなりの距離を空けて
「シェリーさん。今日はどうされたのですか?」
アンディウムがそうシェリーに話しかけるもシェリーは距離を縮めていく。しかし、アンディウムもその分距離を取っていく。
「クソ狐、いい加減に学習というものをしないのですか?」
「いやいや。君とは距離を取ることを覚えたよ。」
クソ狐と呼ばれたアンディウムは軽い口調で答えていく。だが、姿に変わりはない。
「君が
なんのついでかは分からないが、シェリーに用があったらしい。
「ああ、魔剣を運んでくれたらしいね。ウィルの報告のおかげでこちらも色々対応しなければならない事が増えたから、ついでに辺境の方にも運んでくれないかな?」
「お断りします。もっと軍が働けばいいと思います。おかげで、王都の冒険者が辺境の依頼を受けることになっているのですが?」
シェリーの言葉にアンディウム(仮)は肩をすくめる。冒険者のことに軍は関係ないと言わんばかりに。そして、アンディウム(仮)はシェリーの後ろにいる人物に視線を向け、再びシェリーに視線を戻しながら言う。
「しかし、君は本当に困ったものだね。この国を乗っ取るつもりなのかな?」
「なぜ、そのような面倒なことをしなければならないのですか。」
「面倒か。ああ、5日後もう一度話し合いの為に訪ねて来てくれ。今度は教会を交えて行うからね。時間は追って知らせるよ。」
「教会には行きませんよ。しかし、5日後とは早急ですね。」
「あれはもう懲り懲りだから場所は王宮で行うから」
アンディウム(仮)は困ったような表情をして、スーウェンを伺い見る。
「早急と言うか、エルフの方がこの話に興味を持っていてね。聖女を確認したいそうだよ。エルフというのはこういう話を持っていくと否が応でも強引だね。」
本当は今ここに聖女を呼び出せと言わんばかりの態度だったのだろう。しかし、シェリーに連絡が取れるのが、いつになるか分からない為、これでも引き伸ばした方ではないのだろうか。
「そう言えば先程、懐かしい感じがしたのだけどね。一体なにがあったのかな?君が何かしたのだろう?」
「懐かしい?」
「雷牙の黒狼。彼の力を感じてね。軍の上層部では大騒ぎなんだけど、知らない?」
「雷牙の黒狼と言う人を知りません。」
シェリーはシレッと知らないと言う。別に嘘を付いているわけではない。そのような名前の人物を初めて聞いたのだ。シェリーのその答えに呆れたような視線をアンディウム(仮)は向ける。
「そんな常識もないようなことをするのは君ぐらいだと思うんだけど?まぁいいよ。君がここに居たと言えば、皆納得してくれるだろう。」
そう言って、アンディウム(仮)は踵を返してもと来た道を戻って行った。本当にシェリーに用があっただけらしい。しかし、一国の王がフラフラと部下に命令をすればいいことを自分で
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