第42話
朝日の光を瞼に感じ目を開ける。目の前には、赤色の目が・・・バージョンアップしている。
お腹と足と背中が重いのはカイルだろうか。
「シェリーおはよ。」
グレイのかけ声にお腹の圧迫間が増す。カイルも起きているようなので早くこの拘束を解いて欲しいものだ。
昨日はあれからも苦行は続いた。夕食ではカイルの膝の上で、グレイに食べさせられる。逆に二人に 食べさせるをいう非常識な行為をさせられた。
(シェリーは番の餌付け行為があることを知りません。)
最後は寝る位置で揉め、ソファーで寝たはずなのにどういうことだろう。
「おはようございます。カイルさん、起きれないので、離してもらえませんか。」
手足の拘束がはずれ、おはようと言われ、軽く口づけをされる。グレイもずるいっと言ってシェリーに口づけをする。スキンシップが日々酷くなっていき、朝からもう胸がいっぱいだ。
約束通り、昨日の離宮にやって来た。昨日の話し合いの結果、大公閣下は死を与えることに決まったそうだが、先程から嫌な予感がする。
離宮へ至る門の入り口には昨日まで門兵がいたのに今いない。黒い
「カイルさん、グレイさん急ぎましょう。何かあったようです。」
「そうだね。あまりにも人の気配が少ない。」
離宮に入り、微かに血の臭いが漂う。
「先に行く。」
一番血の臭いを感じているであろうグレイが消えた。目に見えない速さとはこういうものなのだろうか。
昨日の部屋の前までたどり着く、開け放たれた扉の中は血の海だった。その中央には、黒髪に長身の男が背を向けて立っていた。足元には先に行ったはずのグレイが背中に剣が生えて倒れている。
「『聖女の祈りは神の奇跡』」
辺り一体に金色の光が満ちる。
どれだけの者達が助かるかはわからない。この殺戮がいつから始まったものかはわからないが、
「カイルさん少し足止めをお願いします。」
カイルは大剣を構え黒い人物に向かう。
シェリーは鞄から魔石を4つ取りだし、部屋の4隅に向けて投げ放つ。そして、別の魔石を再び取りだし
「カイルさんこちらに来てください。『転移発動』」
部屋に倒れているもの達を離宮の外に転移させる。
「『
スキル
地獄の牢獄
中からも外からも7日間は絶対出入りが不可能となる異空間を造りだし、対象物を閉じ込める。ただし、高魔力が維持には必要なため施行者が結界に魔力を供給し続けるか、高純度の魔石が必要。
閉じ込めるだけって、意味あるの?
スキルが発動した瞬間、中にいたものと目があった。昨日見た大公閣下によくにた20歳ぐらいの黒髪の男で、タールでも流し込んだかのような目がシェリーを見つめニヤリとわらった。その瞬間、禍々しい骸骨でできた扉が閉まり、ガチリと手の形をした骨が中央で合わさった。
シェリーは扉が閉まったことを確認し、すぐさま踵を返した。死んだ者は生き返らせたが、虫の息の者は治療したわけではないのでそのままだ。
離宮の外まで戻り、剣が刺さったままのグレイのところに行き、息を確認する。とりあえずは生きているようだ。
「カイルさん、生き返らせた人たちはソロソロ目覚めます。それ以外の治療の必要な方を連れてきてもらえませんか。」
そういいながらシェリーはグレイの背中の剣を抜く。血が溢れ出てきたが傷口を圧迫し出血を最小にとどめる。
「『聖女の慈愛』」
聖魔術
聖女の慈愛
聖人のみが術式を組むことができる治癒魔術。切り傷、火傷、四肢の欠損、病など、どのような身体異常でもたちまち治る。ただし、呪いでの異常は治療不可。
グレイの顔色が良くなり、傷は完治したようだ。
その他に3人の兵士の治療を行った。
しかし、間に合わなかった人たちもいた。ひとりは昨日会った、銀髪の女性だ大公閣下の第一夫人で首があらぬ方向に曲がっていた。一晩中側にいたそうだ。
二人目は大公閣下の弟殿下だ。金髪の男性が肩から腰までの傷を受け、あちらこちらに刺し傷もみ受けていた。使用人の一人が朝の準備で訪れたときには、二人はすでにこの状態で側に黒い人物が立っていたという。
黒い人物、ミゲルロディア・ラース大公閣下が魔人化した姿と思われる。
番を亡くし、弱った心と体に黒い靄の元である、人の悪の心、闇の心が入り込み、侵食される。人が魔に転じることで、魔人ミゲルロディアが誕生してしまった。魔人を止めることは難しい。人の意志が残っている分、劣化版魔王とも言われている。
では、魔人をどう対処するかと言えば、魔導師による未開の大陸、ラフテリア大陸に転送させることだ。対処できないのなら人がいないところへ送ってしまえと言う人の自分勝手な言い分だ。
昨日、魔導師の手配をお願いしたのだが、来てくれているのだろうか。
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