第24話 出所どころか…
『ゲームセンターUFO』は商店街の地下にあった。
探していないと見逃しそうな小さな看板、細い階段をっ下った先にある寂れたゲームセンターには客はいなかった。
咥えタバコの店員が独り、暇そうに景品の補充をしていた。
UFOキャッチャーの原型のようなアミューズメント。
扇形に動く棒にカプセルに入った景品を引っかけて落とすものらしい。
店員は相良の方を見るでもなく、景品を並べている。
「あの…」
相良が声をかけると店員は手を止めずに話し出した。
「棒の動きは一定だ、だから絶対に動かない場所というものがある」
「はっ?」
「高い景品は棒に当たらない位置に置き、安い景品だけが動くように配置する…コレは数学なんだろうな、俺は高卒で数学なんて知りもしないが…理解はしている。この丸い盤上では数式が飛び交っているわけだ…俺には見えないけどな」
「何を言っている?」
店員は景品が詰まっている箱の奥から黒いものを取り出し盤の上にゴトッと置いた。
「おい…仮にも俺、刑事だよ…」
「数式が支配しているんだよ…全ての事象は偶然じゃない起こるべく導かれた結果なんだ、だけど正しいとは限らない…経験ないか? 単純な掛け算を間違って×を貰ったことあるだろ? 嘘でも結果は導けるってことなんだよな…そして指摘されるまで気づかない、そんなもんさ」
そう言うと店員は両替機の置いてあるカウンターへ戻っていった。
「取ってみせろってこと?1回100円…」
相良が置かれた拳銃を落とすまでに800円投入した。
「きっと必要になる」
拳銃を握った相良に店員は笑いかけた。
店員の胸にはネームプレート『レーダー』
「礼を言えば? え~っとレーダーさん?」
「礼はいらない…彼女に会ったらヨロシクと伝えてくれればいい…ソレと、そのうち会いに行くとだけ伝えてくれ」
「彼女? 霧島 霧子のことか? おい‼」
レーダーは相良の問いかけには答えてくれなかった。
無言が返事だということなのだろう。
相良は寄れたトレンチコートのポケットに拳銃をしまいゲームセンターを後にした。
「スイングアウト…装弾数6発…足りりゃいいんだけど…」
命中率の悪そうな銃、自身の腕前にも自信が持てない。
トリガーに指をかけたままポケットの中に右手を突っ込んだまま歩く。
商店街の外れに近づくと急にフラフラと足取りが覚束なくなった。
「で…気が付くと戻っていたと…」
花田が相良にお茶を出した。
「そんなとこ」
「失踪した警察官は?」
「さぁ?」
「あっ、ところで拳銃って、その警官のじゃないですか?」
「と思ったんだが…ほら」
相良がコートから取り出した拳銃。
「よく見る感じですね」
「メーカーがね…」
拳銃のグリップには蛇が槍に絡みついたロゴと『蛇骨』の文字。
「じゃこつ? 偽造ですか?」
「さぁね…ちょっと当たってみてくれるかな?」
相良がお茶をズズッと啜った。
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