病院の章
第17話 逃げられねぇようになってんだわ…コレが
緊急外来から中へ入ると、先ほどまでの静けさが嘘のようにガヤガヤとした雑踏が3人を包む。
(急にコレだよ)
レーダーが舌打ちした。
「診察ですか? それともお見舞い?」
看護婦がレーダーに声をかけた。
「どこも悪くないよ、お見舞いでもない…」
「そうさ、強いて言えば、お迎えだ‼」
ドライブが看護婦の顔に拳を叩きつける。
ゴッ…鈍い音が響き、看護婦の上半身がグニャッと折れるように後ろに仰け反る。
「気持ちわりぃ…」
ブッシが思わず呟く。
ギュルンッ‼
映像を逆再生するように看護婦の身体が元に戻る。
「外来受付はあちらでございます」
何事もなかったようにニコリとほほ笑んで看護婦は話し始める。
大病院のロビー、大勢の人が往来しているが、きっと誰一人として人間はいないのだろう。
「これも用意されたステージなのかな」
レーダーが人の雑踏の中へ歩き出す。
後に続こうとしたブッシに看護婦が声をかけた。
「コチラ整理券になります。待合室でお待ちください」
スッと差し出された紙に『666』のナンバー。
「獣の数字…か」
ドライブがブッシの手から整理券をサッと取り上げ呟いた。
「あながち間違いでもねぇさ、知ってるか、とある宗教では『6』ってのは不完全な象徴なんだぜ」
レーダーが煙草を咥え火を点けた。
「不完全か」
「あぁ…未完成とか未達とか、完全数が『7』とされているそうだからな、未完成ってのが正しいのかもな」
「どうでもいいよ、完全な存在って、そもそもなんだよ?」
ブッシがジャケットのポケットからチョコバーを取り出して食べ始める。
「ココで待ってりゃ、解るんじゃないのか?」
ドライブがブッシのポケットに手を入れ、チョコバーを貰うよといったジェスチャーをして取りだす。
レーダーが2本目のタバコを咥え火を付けた頃、順番を表示する電光掲示板がカシャカシャと目まぐるしく動き出す。
1本目のタバコは腰かけている長椅子の下で踏み消されていた。
電光掲示板は、まるでパチンコのリーチのような動きで『666』を表示した。
ロビーにファンファーレが鳴り響き、皆が拍手する。
「なんなんだ?」
タバコを口から落として立ち上がったレーダーに皆が注目し拍手はさらに大きくなる。
先の見えない暗い奥の通路から、ピンクのミニスカナースがチアガールのように元気に湧いて出てくる。
3人を取り囲むように踊りながら輪を作り、薄暗い通路に案内するように壁を作り出した。
「悪い気しないよな~」
ブッシが嬉しそうに歩き出す。
「壁だな…」
(逃げられねぇようになってんだわ…コレが)
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