第6話 風の谷のお姫様みてぇな狂戦士だな…
銃を構えたままサー・イエッサー大佐がロケットマン装備を肩から外す。
足でゴルフクラブを踏みつけたままのレーダーを中心に崖側に大佐とその部下がゾロゾロと上陸している。
レーダーを睨んだままの学生服、その後方にドライブ、レーダーの隣にはJC、少し離れたところにブッシが兵士に囲まれつつある。
「オニィ…」
JCの表情が恐怖で強張る。
「オマエの兄ちゃん、殺意駄々洩れだな…」
片足に全体重をかけてゴルフクラブを押さえつけているレーダーが歯を食いしばるような声を出す。
目でJCに走れと促すが、JCは身体が強張っているように小刻みに震えている。
(ダメか…)
視線をドライブに移すと、ドライブは少しずつ後方のタイプ2に移動しているものの、その動きは警戒心による緊張で顔に汗が滲んでいる。
ドライブは自分に向けられているサー・イェッサー大佐の銃口、なんだかんだで大佐なのである。
その強かさが眼光から質量を帯びたようにドライブに圧を掛けているのだ。
(ブッシは…ダメだ…)
水兵さんに囲まれて早々に両手を天にかざしていた。
「オラに元気を分けてくれ‼」
今にも叫びそうなくらいの天の仰ぎ方である。
「すべての状況を打破するには…」
レーダーが唾を飲み込む。
喉に痛みが走るのは極度の緊張からだろう。
チラッとJCの方を見たレーダー、その視線に気づいたJCが意を決したように大きく深呼吸してクラブを握るオニィの手を蹴り上げる。
「グッ…」
クラブから手を離したオニィ、JCがゴルフクラブを奪い取り、身を翻しサー・イェッサー大佐に向かって走りながらクラブを振りかぶる。
「それでいい…」
ゴンッ…
鈍い音、拳銃が地に落ちる。
レーダーが拳銃を拾い、銃口を大佐に向ける。
「チェックメイトだ…タダノ大佐の頭を吹き飛ばすぞ‼ 武器を捨てて崖下へ戻れ‼」
レーダーが言い終わると同時に背中に重い衝撃…
「俺には…関係ねぇ」
オニィがレーダーの背中を思い切り蹴ったのだ。
銃口が逸れ、痛みで背を曲げるレーダー、その隙に大佐がレーダーの頭を押さえつける。
「ただの大佐だと? 俺は…ただの大佐じゃねぇ‼ スーパーな大佐、サー・イェッサ
ーだ‼ そうだな‼」
「サー・イェッサー‼」
「呼び捨てにするなー‼ ぐべっ…」
JCのゴルフクラブのヘッドがサー・イェッサー大佐の顔面にめり込んだ。
仰向けに倒れた大佐。
「タダノ大佐じゃなかったのか…」
レーダーが背中を摩りながら上体を起こす。
「ブッシ…いつまで手を挙げている?」
「違うぞ…俺は…その元気を集めてだな…一発かますつもりで…だな…」
「うらぁぁあ」
ブッシの言い訳をかき消すような雄叫び、JCがオニィに飛び掛かる。
(風の谷のお姫様みてぇな狂戦士だな…)
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