エッセイ まいにち一歩クン

episode 6 ねぇ、虹はいつ出るの？

　「ねぇ、ママ。虹（にじ）はどうして出（で）てくるの？」

「虹かぁ。難（むずか）しいこと聞（き）くわね」

「ママ、知（し）らないの？」

「知（し）ってるよ。知（し）ってるけど、一歩（いっぷ）が分（わ）かるように上手（じょうず）に説明（せつめい）するのが難（むずか）しいの」

「ふ～ん」

「一歩（いっぷ）さぁ、前（まえ）に公園（こうえん）の噴水（ふんすい）で見（み）た虹（にじ）。覚（おぼ）えてる？」

「覚（おぼ）えてるよ、ボク。触（さわ）ろうと近（ちか）づいたら虹（にじ）、消（き）えちゃったんだ」

「そうだったわねぇ。噴水（ふんすい）はね、落（お）ちてくる水（みず）にお日（ひ）さまの光（ひかり）が反射（はんしゃ）して見（み）えるのよ」

「反射（はんしゃ）？」

「そうだ、しゃぼん玉（だま）をフーって作ると、丸（まぁる）くなった外側（そとがわ）がキラキラ光（ひか）ってたでしょ。あれと同（おんな）じなの、分（わ）かる？」

「キラキラね。分（わ）かるよ」

「お空（そら）に虹（にじ）がかかる時（とき）も噴水（ふんすい）と同（おな）じなのよ。雨（あめ）が降（ふ）って空気（くうき）の中（なか）に残（のこ）っている雨（あめ）の小（ちっ）ちゃな粒（つぶ）にお日（ひ）さまの光（ひかり）が反射（はんしゃ）して虹（にじ）が出来（でき）るのね」

「じゃぁ、曇（くも）っていたり、ザーザー雨（あめ）だったら虹（にじ）は出来（でき）ないの？」

「その通（とお）りよ！　頭（あったま）、いいわね、一歩（いっぷ）」

「じゃぁさ、ママ。虹（にじ）はどうして半分（はんぶん）だけ丸（まる）いの？」

「やっぱり、そう来（き）たかぁ。来（く）るわよね、普通（ふつう）」

「何（なに）ブツブツ言（い）ってるの？　ママ」

「何（なん）でもないよ、一歩（いっぷ）。虹（虹）が丸（まる）いのは地球（ちきゅう）が丸（まる）いからなんだけど、半分（はんぶん）しか見（み）えないのは多分（たぶん）、地面（じめん）に映（うつ）っちゃってるの」

「ホント？」

「念押（ねんお）されちゃうと自信（じしん）がないけど…。そうだ、一歩（いっぷ）。一歩（いっぷ）はお散歩（さんぽ）の時（とき）とか自分（じぶん）の影見（かげみ）たこと、ない？」

「あるよ。パパと影踏（かげふ）み鬼（おに）も、したことある」

「影（かげ）って、壁（かべ）とかにぶつかると真（ま）っすぐにならないで折（お）れ曲（ま）がるでしょ」

「ウン、折（お）れ曲（ま）がっちゃう」

「それと同（おな）じことなのよ、きっと」

「なるほど～」

「あっ、飛行機（ひこうき）から虹（にじ）が見（み）える時（とき）は、運（うん）がいいと丸（まる）く見（み）えるって誰（だれ）かが言（い）ってたわ。丸（まる）くなくても、地面（じめん）に映（うつ）った残（のこ）りの半分（はんぶん）も見（み）ることができるかもしれないわよ」

「ボク、いつ飛行機（ひこうき）に乗（の）れるかなぁ」

「こういうギモンは大事（だいじ）だから、ずっと忘（わす）れないで覚（おぼ）えてなさいね」

「あのね、ママ。『パパに虹（にじ）はいつ出（で）るの？』って聞（き）いたら、何（なん）て言（い）ったでしょう？」

「雨（あめ）の後（あと）でしょ」

「ブ、ブー。『2時（じ）』だって」

「もう、パパったら…」

「あのね、『どうして？』って聞（き）いたら、『だって“ニジ”だもん』だって」

「子（こ）ども相手（あいて）にダジャレか！」

「ママ。ボク、もう子どもじゃないよ」

「でも、まだママに甘（あま）えてるんじゃないのぉ～」

「でも、もう子どもじゃないんだってば！」

「ハイ、ハイ」