第2話 女神エリスと箱庭の世界

明らかに病院らしくない周りの風景。

 病院でもないということは……


 頬を叩いてみる。

 バシッ

 痛い。


 ということは夢じゃない?


 ……

 あ、僕死んだんだろうか。


 ストンっと何かが落ちるように納得した。

 そう思える何かがあった。


 これまで自分が培ってきた交渉力と才能で頑張って生きてきた。

 親は平凡だったけど、それでも他の人を見返して勝って、成功したい。


 負けず嫌いだったのだ。


 それだけの一心でここまで来た。


 可愛い妹もいた。ツインテールにしてっていったらしてくれるような。

 目の下にホクロがあって本人は気にしてたようだけど……そんなとこも含めて可愛い妹がいた。


 未練は沢山ある。

 けれど死んでしまったという事実は間違いないんだろう……


 受け入れるしかないのである。

 涙が出そうになったがぐっと堪えた。


 さて、事実を受け入れた上で今後の活動方針を決めようじゃないか……ここで生きてた頃の知識が役立つかは知らんが。


 まずここはどこなんだ?天国だろうな?

 これからどうするんだろう……まさか何もせずに無為に過ごすことになるのか……


 思案しているとふと後ろに気配を感じた。


「やっほー!」


 うわっ!!!びっくりした……

 誰???


「驚かせてごめんね!私は女神エリスよ」


 女神エリス?誰?


「まあ、知らないのも無理ないか……

 私はね、あなたのいた世界とはちょっと違う世界の神なの」


 うーん?どんな?


「地球の神様がね、箱庭感覚で新しい世界創っちゃってさ?

 なんか……地球は人間が文明発展させまくってるし、信仰心も薄らいできてるし……面白くねえなぁとか言ってて。

 そんなわけで箱庭世界の管理任されてるんだよねー私!!

 まあ、異世界みたいなもんだと思ってくれていいよー。

 箱庭って言ってるけどちゃんとした世界だから!!」


 は、はあ……


「地球の神はひどいのよ?私なんかこっちのこと押し付けられちゃってさ?

 あいつの趣味には付き合ってらんないわ……

 仕事が増えるわ増えるわ……心休まる暇がないわ……」


 1人でできない仕事を上司に押し付けられてブラックになってる系か。

 日本の会社も同じようなものだなぁ。

 ご愁傷さまです、女神さん。


「でも、面白い子が来たわね。

 この世界に地球の子が来るのは初めてなの!!」


 え?僕が初めてなんですか?

 というか今更になるけど……

 今、僕は死んでいるという解釈で良いのか?


「うんうん!!

 てなわけで、折り入って相談があるんだけどさぁ?」


 軽いな……けど死んだのはやっぱり本当なのか……

 それに女神様からの相談?なんか嫌な予感するよ……

 でも、やることも無いし、断る理由もないし断ったとしてどうなると言うのだ。


 引き受けますよ。


「ありがとう

 あのね、君には私の仕事を手伝って欲しいの」


 仕事?女神様の?

 何をやればいいのデスカ?!


「仕事といっても細かい話じゃないわ、あなた今からこの世界で暮らしてこの世界を平和にしてちょーだい」


 箱庭とはいえ世界をひとつ平和に?無理でしょ。そんなの地球でもほとんど出来てないのに……


「まあまあ、力は貸すから!!

 この世界もね、地球みたいに昔ほど奇跡とか信じてくれないし、なんなら場所によっては神もあんまり信仰してないし

 人間の欲が強くなって争いも増えてるの……

 だからね、あなたが行ってぱぱっと世界を纏めてくれたら私とっても楽なんだけど!!」


 ぱぱっと……って言われても……

 何十年もかかっちゃいますよ??


「それでもいいわ!!私たちにとってはそんなの大した時間じゃないし……

 せっかく頭の良さそうな君がここに来てくれてるわけだし、これに乗らない手はないでしょ!!

 それに、あなたまだ若いから生きたりないでしょ!!」


 なるほど……


 はっきりさせておかないといけないのは、依頼完了の条件と完了後のこと、それから依頼遂行の手段とサポートがいかほどなのか……それから……


「そう簡単に死なれちゃ困るから……あっちの世界でも断トツで強いくらいのステータスにしといてあげるね!!

 なんかあったら教会で私に話しかけてちょうだい!!

 じゃあ、またね!健闘を祈るわ!!」


 そう言われると、再び暗い世界の中に落ちていった。


 えっ、もう開始なの……

 女神様、さすがにそれは早いよー!!!!

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