第7話 トゥイッタランドの襲撃
「あ〜ぁ、外しちまったかぁ」
そんな呑気な声が聞こえてくる。
外しちまったかぁ…… じゃない。
そもそも人に卍を投げ付けないでくれ!
「君たち、一体何者……?」
俺とツカサがまだ窓の外に気を取られている間に、
ハテシナレイは敵影を捉え、すでに廊下の奥へと睨みを利かせていた。
現代人とは思えない程の鋭さだ。
「おぉ! この暗さで良く分かったね」
「……良く分かったね、じゃないわよ。
バレたらダメじゃないの、クソチャラ男……」
「確かに、タスケの気配の消し方は甘かったな」
「カクタくんが消し過ぎんだよ〜!
なんでマッチョのくせに気配消せる訳? ありえなくね?」
「ツブラギだって、気配を消しているだろう」
「いやいや、ツブラギちゃんは元々気配とかねーから!」
「……タスケ絶許……」
「おい、待て待て待て!!!
ただでさえ何一つ解決してないっていうのに、
情報量が多い。一度に3人も出てくるな!」
完全に自己都合で文句を言わせてもらったが、
いきなり卍を投げつけてくる奴等には
これくらい言っても許されるだろう。
「……3人もって、何言ってるのよ。
それがルールじゃない……」
「は? ルールってなんの話だ?」
「そっちも3人揃えているだろう」
「コンテスト、もう始まってんだよなぁ〜?」
コンテスト???
ルールだとか、さっきからこいつらは何を言ってるんだ……
「……戦う前に、自己紹介とか必要だった?
私たち、トゥイッタランドの表現者……」
「こっちの闇が深い黒髪姫カット娘がツブラギちゃんで、
あっちのシルバーウルフカットのマッチョがカクタくん!
で、この金髪サラサラヘアなイケメンが俺!タスケ!」
「……タスケの髪型は、量産型でしょ……」
「うっ!核心つかないでよツブラギちゃん……」
「いや別に自己紹介とかいらねぇから!!」
「……なら、始めよう。そろそろRT、溜まってきた……」
そう言うとツブラギは、携帯をいじり出した。
こんな状況下で携帯をいじるか普通?!
突っ込みつつも、
ツブラギの携帯から放たれる光に見覚えがあって、
俺は目を見張らずにはいられなかった。
「あーーー!!! 思い出した!!!!!」
その光を食い入る様に見つめていると、
張り裂けん程の大声が隣から聞こえて、俺の肩がビクリと跳ねる。
司書の癖に、いきなり絶叫するのはやめてくれ……
「あの光! 表現だ!!!」
「表現……??」
「ほら、やっぱり知ってるじゃない……」
「いやいや、俺は知らないんだよ!
自己紹介よりもそっちの説明をしてくれ!」
「……じゃあ私の表現、見せてあげる……
やるよ、お前ら……」
一体何を始めるのかと警戒したものの、
襲ってくる訳でもなく、3人は何故かポーズを取り始めた。
真ん中にツブラギが立ち、その左右にカクタとタスケが並ぶ。
まるでヒーローショーみたいだ……
「者共、控えおろう!!
このお方を、どなたと心得る!!!」
カクタがツカサに負けない程の声量で叫び出す。
そんなに大声を出さずとも、嫌でも聞こえているのだが……
脳筋は声を張らねば死ぬ様に出来ているんだろうか?
「恐れ多くも〜…… なんだっけ?
まぁいいや、とにかくコレが目に入らぬかー!!」
タスケの雑な掛け声と共に、
カクタがツブラギの携帯をうやうやしく持つ。
それをタスケが、ジャジャーン!
というジェスチャーでアピールしていた。
真ん中にいるツブラギは手持ち無沙汰になったのか、
無駄に腕を組んで仁王立ちしている……
なんなんだ、この茶番は……
そう思った瞬間。
携帯からあの光と共に、
とてつもない衝撃波が放たれた。
壁に貼られているポスターが次々と吹き飛ばされていく。
馬鹿馬鹿しいポーズを取っていた癖に、物凄い威力だ……!!
「ぬうぉおああああああ?!?!」
俺はキモい声をあげて吹き飛ばされながらも、
この恐ろしい力の正体が気になって
ツブラギの携帯画面を見定めようと試みた。
きっと異世界能力的なもので、
魔法陣とかが書いてあるに違いないと思ったのだが……
なんという事はない。
画面の中では、
ツブラギの呟きが凄まじくバズっていた……
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