第3話 本の装丁が想定と違う
俺の名前は同人 卓男(ドウジン タクオ)。
高校三年生になったばかり。
趣味は読書と執筆。ゲームと漫画は嗜む程度。
現実世界の絵に描いた様な根暗の男子校生だが、
目の前には今、謎のイケメンが存在している。
小麦色の髪に、蒼い瞳……
生成色の長袖と紺色のデニムを、さらりと着こなしている。
俺の書いた小説の勇者にピッタリな顔をしていて、
なんだか妙に腹立たしかった。多分こいつも敵だ。
「図書館が騒がしくて、
様子を見に行ったらめちゃくちゃ光ってて……
慌てて窓ガラスを割って中に入ろうとしたら、
何故かここにいたんだよな」
良かった、我が部屋の照明は割られなくて……
しかし安心している場合ではない。
割られなくて良かった、というのは最低限の発想だ。
そもそも不審者に侵入されたらダメだろう。
両親が仕事で家を空ける事が多い為、
こういう時は本当に困る……
頼りになるのは自分だけだ!
根暗といえども、毅然と対応せねばならない。
「お前が何を言ってるか分からないが、
一体どうやって部屋に忍び込んできたんだ?」
「だから、光ってたんだよ!
前に見た事がある、なんだっけなあの光……」
必死に思い出そうとしている様だが、
どう見ても脳の許容量が少なそうで希望が見えない。
迷子の迷子の子猫ちゃん状態だ。
「……あ!!
この光だよ、この光!」
「この光って、どの……」
そう言いかけた俺は、思わず二度見した。
確かにツカサの言う通り、光はあったのだが……
その発信源が、なんと俺の書いた本だったのだ。
本を光らせてくれ、なんて印刷所に発注した覚えはない。
そもそもこれは、光ってるなんてレベルじゃないぞ?!
「……勇者さま……」
あれ? この声って……
「ハテシナ?! ハテシナなのか?!?!」
今の声は、俺の知っているハテシナユメコの声だった。
どうしてハテシナの声が、本から聞こえてくるんだ?
本を喋らせてくれなんて、印刷所に頼んだ記憶は勿論ない。
「お願い、助けて……!!!」
よく分からないが、ハテシナが助けを求めている……!!!
「くそっ! どうすりゃいいんだ?!
おい! 俺の本の勇者!!
お前、呼ばれてんぞ?!?!」
俺が必死に書いた本から、ハテシナの声が聞こえてくる……
だったら本の中にいるお前なら、助けられるんじゃないのか?!
だってお前は、ハテシナの為に書いた勇者なんだぞ?!
「おい! ハテシナを助けろよ!!!」
パニックで無理難題を喚いているのは、承知の上だが……
俺の無茶振りに応えるかの様に、その本は更に輝きを増した。
あまりの眩しさに、俺は思わず目を閉じる。
「……っ!!」
しばらくすると、瞼すら貫く程の光量も徐々に薄れてきた。
俺はやっとの思いで、目を開けたのだけれども……
その時には既に、
何故か俺は勇者の姿で獣と対峙していた。
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