09:結城亜莉須はロリだが淑女(レディ)である
今日になれば二人は元の魅力の状態に戻るだろうと思っていた。
だけど違った。今朝も彼女たちの空気は変わらない。
どうにもならない、というか何が起きているのか分からない。
そこで今日の放課後、れんれん、天使ちゃんとともに使われてない家庭科室を使って緊急会議を開くことになった。
久しぶりのハーレムとは程遠いさみしい休み時間、授業、昼休みを過ごして行き、とうとう放課後になった。
静かな家庭科室の一角の机に俺をセンターにして机を挟んでれんれん、天使ちゃんが座って全員揃ってゲ〇ドウポーズでこれからのハーレム計画について話した。
「ふゆつき、どうなってるんだ。」
「いや、崩し将棋しねえし。能力関係は天使さんに聞けよ。」
「うーん、私もわかんないや。」
「能力を消す個性とかあるんじゃないの?」
「聞いたことないよ。 それに個性が消えてるかどうか検証してないんだから分からないじゃない。」
三人で終わりのない会議を続けていると突然ガラガラとドアを開ける音がした。
「あら、珍しく手芸部に見学なの? 君は、この間の如月君だね! 二人はお友達かしら?」
声の主はこの間からよく会う結城先輩だ。結城先輩は大きな胸を揺らしながら喜んでいた。ていうか手芸部なんて聞いた事ないぞ。
「あの、手芸部って?」
「そう! 私が部長なのぉ。 でもねぇ、始めたばかりで誰も来ないのよねぇ。どうしてかなぁ...。」
この人すごくかわいそう。でもかわいい。あっそうだこの人に試してみよう。
二人にひっそり話をして二人にも同意を得て結城先輩に近づく。
「すいません、ちょっといいですか?」
先輩のことをじっと見つめて個性を発揮する。
・・・・・・・・・
先輩はん?みたいな表情で首をかしげて少し、にこっと笑った。
「どうしたのぉ?」
「えっ、あっ、なにか俺に感じることとか無いですか?」
「ううん。ないよぉ。 は、恥ずかしいからあんまり見ないでぇ!」
彼女はゆっくりと手を伸ばし、俺の視線をそらそうとしていた。しかし、そのゆっくりな動きと反対に俺は身体がどこかへ吹っ飛びそうな感覚に陥った。
そして一瞬にして俺は教室の端っこに吹っ飛ばされた。まるで黄金体験! 怖すぎる。
意味もわからず、吹っ飛ばされた俺は目を丸めて
「な、なんですか、今のは。」
「あぁ、ごめんねぇ。私、能力者なんだ。私の個性は“おっとり”だから相手にはゆっくり時間が流れるかもだけどホントは何倍もの負荷をかけてるんだって。よくわかんないんだけどね。」
外見的個性には左右されなかったのか。ていうかその能力怖すぎだろ。要はブルドーザーが光の速さで通っていったようなもんか? ていうか彼女に構ってる暇なんてないんだ。
「とりあえず、席をはずしてもらえますか? 今重要な話してるんで。」
「手伝うことある?」
「今のところはないです。」
そう・・・。と肩を撫でおろし、そそくさと立ち去って行った。これでいい、彼女は魅力の効果が使えない以上巻きこめない。三人で話しの続きをした。
天使ちゃんが能力を失った原因を探すべきだと言った。だが、個性を失くす能力以外に個性を消す方法なんてあるのか?
辺りを見渡して見る。身体にもなにも付いてない...よな。
「? そういえば、その後ろについてるのは何なの? ボタン?」
急に話しだしたのは奥で手芸を編んでいた結城先輩だ。後ろにボタンだって?
「なにいってんですか?」
「えぇ~。だって首の後ろにあるよぉ。」
と言って近づいては首に手を当てて、僕の前に見せた。すると本当にボタンの様なものが彼女の手にあった。
「これはなんだ?」
「機械に詳しくないから、わかんなぁい。」
「私もこの世界のものはわかんなぁい。」
「俺もわかんなぁ・・・、おい、モブ男なんかそれに書いてないか?」
れんれんの言葉を受けてよくこのボタンのようなものを観察してみると、確かに文字が彫られている。
ローマ字で“Hanyu"と書かれていた。
「ハニュウという人間に誰か心当たりはある?」
当然天使ちゃんは知らない、れんれんはあまり外界に興味がないから知らないし二人とも首を横に振るしかなかった。
「ハニュウかぁ、うちの学校でいったら、一年生で生徒会の羽生時雄くんかなぁ。」
「羽生時雄か、会って見るしかなさそうだな。」
信男が言うとれんれん、天使がこくりと同意していると
「たのしそう~。ねぇ、私もいいかなぁ?」
この人ほんとに読めん。だが、この人の意志なら、もし、戦闘になっても彼女がいて困ることは無いだろう。
「いいですよ。あなたが来たいならね。」
かくして如月信男、廉連、天使月姫、そして結城亜莉須が加わり、羽生時雄を探すことにした。
羽生は、如月信男の隣で札杜礼と同じクラスだった。そのクラスの人間に話を聞いていき、羽生の居場所を突き止めた。羽生はどこにも隠れず、使われていない教室で待ち構えているという。
そしてようやく、本人と接触した。
羽生は机に座り、本を読んでいた。片手でポンと閉じ、颯爽と飛びおりてこちらへと向かって口を開いた。
「どうやら、僕に辿りつけたようだね。」
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