第九話 運命の歯車

運命の歯車



何時間寝たのだろうか?


部屋の中は真っ暗だ。ゼクサスとハーツは寝ている。


多分やけど夜中だな。俺は人混み嫌いだから寝た、皆んなは観光でもしていたんだろうな。



なんだろう、すごく暇です。



それからしばらくして、ゼクサスとハーツが起きた。


「ふあ〜。おはよ〜シュウ」


ハーツは、目を擦りながら言う。


「しゃ! 今日は祭りだぜ!」


ゼクサスはいつも通りうるせぇ。



コンコン



「ヒナ達か、入っていいぞ」


俺がそう言うと、ヒナとローズが入ってきた。


「あっ・・・・・・」


俺とゼクサス、ハーツは黙り込んでしまう。


「ど、どうかな?」


ヒナはそう言うと、くるりと回って、自分の衣装を見せた。


この世界にも浴衣あったっけ? いや、そんな事はどうでもいい。この天女達をずっと眺めていたい。


「は、はは、早く行こうよ」


ヒナは皆んなの考えに顔を真っ赤にして、俺達を祭りへと急かした。

ローズは嬉しそうにしている。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇


俺達は朝食を食べずに、祭りへと足を運んだ。


めっちゃ美味そうな匂いがする! やっぱ祭りは最高だな。


たくさんの屋台で、色んなものを食べた。

焼きそばであろうものや、焼き魚、変に甘い木の実、いっぱい食べ歩いた。


皆んなの笑顔に、俺もつられて笑顔になる。

幸せな時間が続いていた。


「そろそろ昼飯の時間だな。何食べたい?」


「ゼクサス、何言ってんだよ、たくさん食べたじゃねぇかよ」


笑いながら答える俺にゼクサスは、


「よしっ! あっちの腕相撲に参加して、お腹空かせようぜ!」


そう言って皆んなで腕相撲をしているところに向かう。


その時だった。俺の時は止まった。

本当に時が止まっていたのかは分からないが、確かに俺の何かが止まった。


俺の視線の先には、白い髪の少女がいた。

その少女は、人混みに紛れてどこかへ行こうとしている。

何故だろう、今すぐに追いかけないと二度と会えない気がした。


追いかけろ!


俺の心がそう叫んだ。後先考えずに俺は走り出していた。


「ちょっ、オイラ達を残してどこ行くんだよーー」


そう言うハーツに俺は振り向きながら叫ぶ。


「悪い! 先に飯食べててくれーー!」


唖然とする皆んなを置き去りに俺は人混みの中へと消えていく。


「すみません! どいて下さい! おめぇどけって!」


人混みをかき分けながら必死に彼女を探す。


くそっ! なんで俺はこんなに焦ってんだよ。今追いかけてる人は、全く知らない人なんだぞ!


俺は自分にそう言い聞かせる。それでも、俺は彼女を探す。


俺が、小さな橋の上に登った時だった、



・・・・・・・・・



俺は息も忘れて、見とれていた。

橋の下の道に彼女はいた。


腰の上辺りまで伸びている白い髪は、陽光を反射し、美しくなびいていた。


彼女、いや、少女と言っておこう。少し離れているが、くっきりと見える。その少女は、美しい顔立ちに、幼さを兼ね備えていて、とても可愛らしい印象だった。


その少女の瞳は、綺麗な茶色い瞳で、とても少女の瞳ではなく、たくさんの苦しみを生き抜いている人のものだった。


その強く、悲しい瞳は、しっかりと俺の両目を捉えていた。


世界から俺達以外の色が消えていた。


俺と見つめ合う少女は、その瞳から一筋の涙を流していた。


全く、可愛いけど変な子だなぁ。


俺は、何かを誤魔化すように自分にそう言った。

あれ? 俺は・・・・・・・・・泣いているのか?


何故だろう、ずっと見つめ合っていたかった。



だが、世界は、俺の思いを汲んではくれない。

異世界だろうが、それは同じだった。


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