第30話 星の艦
ふむー。このまま帰っても面白くないです。
というわけで。遺跡観光をすることにしました! これならまあまあ気分は晴れるよ。気分は考古学愛好者。
旧市街を歩いたり、遺跡の発掘現場を見学したり。なかなか楽しい。発掘済みの遺跡なら罠だ宝箱だなんて考える必要もないし。
科学技術が発達した文明の遺跡なんかもありました。遺跡というか星の艦が落ちてきただけって感じですけど。不時着した感がある。ぱっと見だと宇宙戦艦タイプかな。
前の地球は銀河の覇者くらいまで科学技術が発達していたので、艦くらいじゃあなんか驚かんなー。
でもなんか感動しつつ艦の中を探索。りょうてが詳しそうだ。
[ひだりて:動力が動けばまだ機能は動作しそうな感じがしますね]
[みぎて:医務室と手術部屋使えるなら、右手の接続できそうな気もするおっおっお]
ふーん。しかし動力動かすといってもなー。どうすんの?
[ひだりて:予備電力くらいはあってもおかしくはないですよ]
[みぎて:動力室か、指令室にたどり着けば後は僕たちで調べてみるおー]
簡単に言いますけど、これオーダーがキロメートル単位ですよ。うーん観光ルートじゃないところも侵入して探してみますかねえ……。ただルートから外れると真っ暗なんですよね、観光ル-トが整備されてないんで。光生成と暗視が久しぶりに活躍する機会だ!
宇宙戦艦って、真空の中を進むお艦。構造としては海の中を進む潜水艦と似てるんですよね。動力以外で開かない扉って存在しませんし。空気を逃さないためにブロックごとに固くて分厚い扉があるのも同じ。そこの施錠は固いんですけど、身体能力向上Lv9まで引き上げられる私なら一応動かせます。ふぬぬぬぬ。
進めないと思われていた扉を開けまくって、しらみつぶしに部屋を漁ってますけどいわゆる『退避』とか『艦の廃棄』は完了していたっぽくて、なんもねーす。地表に降りてるんだ、運び出せるものはみんな運んじゃってますよね。
ちなみに兵員室近くに厳重ロックされていた箱があったのでこじ開けたら、魔導銃が入ってました。風化しちゃってるから使い物にはならないけど、鑑定してもらってからなら骨とう品屋さんに売れるな。幸運幸運。
すんすんすーん、いえあ。
よく考えたら数キロメートル単位のお艦が落ちてきて巨大クレーターが発生していないんだ、どういう不時着かは知らんけど、ぎりぎりまで推進力は生きてるよね。さすがに通常動力は死んでるだろーねー。落ちちゃったんだし。
上下何層構造かわからないくらい大きなお艦の中を探ること実に3日。お弁当もぐもぐしながら歩いていると、ついに発見しました。
「おーどう見ても医務室だよここ。中身はわからないけどガラス瓶や飲み薬が並んでる。となるとこの奥はオペ室、つまり手術室だねこれ。どうだろうね、うまくいくかな」
恐らく使用中とか書いてあるだろう黄色と赤いランプの部屋をこじ開けてみました。さすがにここは動力だけで動いてたので、蹴り破った。
なかには、白骨死体と手術台。こういうのは何年たっても時代が変わっても基本的な部分は変わらないんもんだねえ。
「さてどうしようか」
[ひだりて:多分ここだけは動く独立した動力があると思います]
だよね、それは思った。手術中に動力停止されて電気か魔導だか知らにーけど、それの供給が途絶えて手術が止まるとかちょっと考えにくい。
普通の手術ができる病院には予備電力として巨大バッテリーとディーゼル発電機などがセットであるのは知ってる。それは地球の病院でもそうだった。
それで、ここまで大きいのであれば……。
[みぎて:近くに動力があると思ったほうが良いおね。戦闘中に何らかの理由によって途中で供給回線が途切れるとか考えられるから、近くに置くはずだお]
バッテリーは死んでるだろうけど、動力が動けば回路さえ死んでなければ供給できるはず。といっても動力元をたどることが難しいなあ。
[ひだりて:手術台に線がたくさん引かれてますね。観察看破でどうにかなりませんか]
ふーむ。観察。動力線はこれっぽいな。
看破。引き込み線がどこにあるかまでは分かった。そして。
魔導で動いてる。魔石を直結させれば動く。銃を売り払って魔石を買って来よう。
魔石直結したとしても、安全策が何重にも動いているはずだからだめならエラーで動かないはず。動くなら骨の接続手術くらいは……!
結果。魔石直結は成功。でも壁があって。
読めないんだよ、ホログラムに浮き上がる文字が。この星は世界統一語と世界統一文字があるから古代超文明の人とも話せたんだ。
この艦はこの星の物じゃあない。違う星から戦争? 外交? に来て、それで落ちてきた。翻訳しないと……。
[みぎて:接合手術は技術レベルが違っても星が違ってもやることはまあまあだいだいあるていど同じだお。自動診断と自動治療さえわかればなんとかなるお]
うーんうーん、と悩んでいるうちに、ホログラムがうにょうにょと文字の羅列を始めたよ。
そして、ロゴっぽいのが出て、2つの選択肢を示した。
[みぎて:再起動したっぽいおね]
[ひだりて:利用開始の暗号はないのでしょうか。この2択は、自動か手動、と推測できますね]
文字の羅列、そして単語の数から推測しよう。まず右から読むはまず間違いない。左側に同じ単語が並んでる。自動診断、手動診断。同じ単語なんだろう。
地球にいたころを思い返すと、簡単な物事は上が自動で下が手動だった気がする。簡単なものであれば、だけど。
手術が簡単なものになっていたとするなら、上、かな。まず上のホログラムを押してみる。
違った。と思う。結構な数の単語の羅列が出てきちゃった。これ多分……。
[ひだりて:手術の種類でしょうね。専門家が細かく設定をするのだと思います]
一度元に戻そう。さっきは再起動してくれたので、魔石との連結を外して、再度連結。やはり先ほどと同じような画面がでてきて、先ほどの2択に。
次は下を押す。こっちもかなりの文字ができたけど、右下に2択がまたある。これたぶん、同意します、しませんの承諾だよね。えーと、地球だと……右なんだけど。こっちは右読み。光ってるのは左。左を押す。
ぱらぱらと画面に文字列が動いた後、中央に大きく文字の羅列。
[ひだりて:準備完了、既定の場所に]
だろうねえ。手術台を見ると、もう上からライトが照射されて光ってる。右手を取り出して手術台に置き、私のそこに乗る。
ういーんと上から下に光線があてられる。診断してるのかな。右手に光が集中した。お、これはたぶんいける。
そこで一度動きが止まる。おろ?
ピッピー
という音と共に医務室と思っていたところから服が出現してた。音で誘導して、服を見せることで着替えさせる感じだね。
手術着に着替えろってことか。もうここまできたら後に退けない、いや、引かない。右手を治してもらう。
着替えてから再度手術台に。ちなみにこの部屋はさっきと匂いが違うね。空気を消毒交換したんだろうね。もう右手は機械のアームに固定されてた。うん、手術機械もわかってるみたい。
手術台に乗ると、何かを照射されたあと全身に拘束具らしきものが装着されて、一気に右手が繋がれていったよ。麻酔とかはもう在庫がないか期限切れらしく全くそういうの無しでの手術。本体の欠損部分にはもう肉が付いているので、それを切り取られてから繋ぐわけで、めちゃくちゃ痛い。もう呻いて身体が暴れる程度には痛い。右手首は骨以外残ってないから神経以外にもなんかわからんものを注入してから繋いでくれるんだけど、なかもうそれも痛い。神経がつながるって痛い。喚く呻く暴れようとする。それを察知していたから拘束具がつけられたんだろうね。
呻いて呻いて泣きまくったあとに手術は終了。お肉とかはつかなかった。なので筋肉もないから右手が動くわけじゃあない。でもくっついた! くっついた!
[ひだりて:神経等は機械的な部品が挿入された感じがします]
[みぎて:地球の技術レベルで推測するとうんたらかんたら]
そうだねー! とにかく時間が立てば生の神経とかに置き換わるってことだねー!
医療技術は本当分からん。なのでりょうてが言う通りにする。
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