第25話 廻る、廻る。国を廻る。



 吹き飛ばされた国境の超絶強固な封鎖線。ロゼス王国研究班によると、クーガーを魔術砲弾の芯にして突撃させ、穴をあけたようです。中型機動装甲車クーガー。中型とはいえとんでもない性能の車でした、あれを元にしてぶつければ確かに穴はあくでしょうね。穴さえあいてしまえばあとはそこから壊せますからね。


 私とリヴァイアー様のクーガー。最後は車じゃなくて砲弾にされたのか……。


 ヘイトしか溜まらないです、神王国。


 でも、クーガーじゃないと破壊できなかったのは悪くはない。勇者ユウイチが壊してないなら、もう一度封鎖すれば二度目の破壊は早々起きない。

 ユウイチが破壊したのであれば、正直ユウイチを止められないですわ。

 あの封鎖線は空間転移を止められます。封鎖線があれば、ユウイチが神王国の首都からロゼス王国の街に空間転移してあの魔法陣をさくっと撃ちさくっと帰還する、そんな馬鹿げた行為はできないわけです。


 ユウイチはロッキー山脈を歩いていた私を見つけて空間転移で目の前に現れて捕獲、そして即座に首都まで戻ってますからね。かなり正確そして長距離を転移できます。

 魔法陣を撃ち込んで即座に帰るなんてことは屁でもないんですよ、恐らく。



 話が長くなった。つまり私は封鎖線復旧の仕事にあたったんです。報酬がスキルジュエルというのもありましたけど、総合能力AAなのでご指名が来ました。


 頂いたジュエルは、

 精密 範囲 結界 おまけに蒸気と簡易。


 返還したけどお借りしたジュエルは魔法陣。

 魔法陣で作る範囲結界を精密に展開し、壁が出来上がるまでの防御としたんですね。


 魔法陣の知識がさほどないのであまりわからなかったのですが、魔法陣が崩れない限りは結界が存在するような術式を魔法陣の中に書き込んであるそうです。

 魔法陣はそれだけでは機能せず、内部に術式を書くことで機能するそうです。

 魔法陣の大きさとそれに込めた精神力が大きいほど、書いた術式の効果や範囲が強く広くなる。

 今回は超大規模戦略魔法を構築しました。私はその魔法陣に精神力を込める作業員ってところでしたね。



 蒸気と簡易は任意報酬です。


 蒸気は自爆攻撃とはいえカエルとムサキ、2回も私を助けてくれた心強いスキル。それをスキルで強化できるのは強い。

 簡易は、組み合わせの強化に使えます。精密や狙うの逆というか……、とにかく即座にスキルが出ます。簡易結界、簡易攻撃スキルによる実質的な手加減、簡易範囲攻撃……。早いはすべて、速いは何よりも素晴らしい。


 前以上に強い防御を作るには5年10年かかると思うし、壁そのものの構築にも付き合いたかったんですけど、そうもしていられないのが私でして。


 博士の悪夢が出始めたので、超城塞都市ロレパックから離れることにしました。


[ひだりて:どこに向かいましょうか]

[みぎて:このロゼス王国は資源も人も豊富だから、少しじっくり滞在して強化に励みたいところだおね]


 そうなんですよねえ。ロッキー山脈付近、国の南西部は鉱物資源が多くて肉体労働でお金が稼げますし、鉱物増産による、物資の回復に貢献できます。

 北東部は古代超文明から続く古い都市と未発掘の遺跡が多いので、レアジュエルの獲得が狙えるかなあ。

 国の中央にある首都付近から北部は巨大経済圏で人口もすごく多いです。人が多いから恐らく博士の目を効果的に【誤魔化せる】と思います。経済圏だし冒険者やハンターとしての職業的な需要もありますよねえ。ロッキー山脈から流れてくる大きな川もあり、水運による貿易も盛ん。

 西部は諸国連合と帝国との国境があるので、こちらはこちらで貿易路があります。トラックが走るから、燃料として魔石の需要が高いんですよねー。



 南部のロッキー山脈からぐるっと反時計回りに廻ろうかなあ……。


 そのー、うぬぼれに近いけど、チートスキルを持っていて、限界突破っていう破格のスキルもある勇者ユーイチを少しでも足止めできるのは、累乗でスキル能力が上がる私くらいじゃない……かな?

 スキルLvの倍率だけなら、Lv2スキルでLv9相当、Lv3スキルで27相当。限界突破がどれだけ限界を突破するのはわかりませんが、たしかLv10にするのは容易いといっていた記憶があります。なんとかして私のスキルをLv2で揃えれば足止めはできそう。Lv3なら超えることも夢じゃない。



 ロゼス王国に来て知ったのですが、Lv4、Lv5に通常スキルのレベルを上げるのは相当難しくて、レアスキルをLv3にする方が1兆倍楽だ、とか言われているそうでして。そっかぁ……。約80倍、約240倍は夢物語に近いのかぁ……。



 さ、嘆くのはこれくらいにして、ロッキー山脈付近に行きましょう。鉱山労働でお金を稼ぎつつダンジョンにもモンスター討伐にもいってスキルを集めて強化していこう!




 乗り合い『馬車』にのって揺られることひと月くらい、鉱山都市フリルクレルという街に到着しました! 馬車なのは、あの戦闘で車がかなり消えちゃったからね……。


「あい、たぬきのヌンヌンがこの都市の総合受付だよん。ここはハンターも冒険者も関係ない、ただただ鉱山で掘り、ダンジョンモンスターを処理し、地上を跋扈ばっこしているモンスターを排除するだけだよん」


 たぬきかわいい……。しかし化かされてはいけません!


「なるほど。わあつぃのスキルだとどれがいいですかねえ?」


「んー。鉱山でとかじゃなくて、原油を水で掘ってくれるといいだよん。原油は水や水蒸気の圧力で原油を押し出して採掘してるからだよん。」


「おーちょうどすべて持ってます! 都合がよいですね。じゃあ、従事しますー」


「Lv2圧力管理は本当凄いよん。Lv2で出来る人が本当に少ないからいいお金になるよん、頑張るんだよん!」



 というわけで、原油堀レディとして頑張りまーす!




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